第1章《箱庭戦争》(8)
「幻想核のスキルは、以上かな」
登録用紙には、水無月晶、と名前が書かれ、その下の各欄にも、駒の管理に必要な事柄が書かれていた。それは、晶の持つスキルも同様で。
「やっぱりスキルの引きが良いわね」
アルテリリスが感想を述べると、ルナシアと朝倉も同意を示す。
現状の晶のスキルは、竜骨精製、腐食毒精製、捕食、そして竜化。
朝倉は紙を器用にしまうと、晶に言う。
「ニーズヘッグのスキルでは、竜化と捕食は希少だね。有用性もとても高い。特に捕食の方は、無限に強くなれる可能性がある」
捕食。
あの熊の幻想核を取り込んだスキルである。
「捕食はスキルを増やすスキルだからねぇ。幻想核のスキルは、余程じゃない限り、増えたり減ったりしないのよ?」
「幻想核は、神の契約書であり、力の断片だからね。当然ながら、駒に与えられる力の総量は神ごとに決まっていて、それは契約時点で分配量が固定されるんだ」
「つまり、捕食でスキルを増やすほど、幻想核自体が強化され、ニーズヘッグも力を増すという訳なのよ」
本来なら、捕食を獲得した時点で、他のスキルが無くてもおかしく無いくらいのレアかつ容量の大きなスキルらしい。
誰もが捕食スキルを持っていて、スキルを増やしていけるのかと思ったのだが、それは大きく違っていたようだ。
有用性はそこだけではなく、ニーズヘッグの駒では獲得できないスキル、例えばバロールの死の魔眼なども、補食であれば似たようなスキルが獲得できるらしい。
死ななければ、誰よりも強くなる可能性を秘めたスキル。それが、晶の引き当てた補食というスキルだった。
「それだけに、新兵狩りにあって、早々に殺される事も多いので、早めに晶さんを見つけられて良かったです」
「まぁ、有用とはいえ、捕食自体は戦闘スキルじゃないし、自分が殺した相手しか捕食できない上、スキルも完全に再現できないモノもあるから、万能という訳じゃない」
まぁ、死ななければかなり強いのは確かだよ、と朝倉が締めくくり、ルナシアが竜化の説明をしてくれる。
「ちなみに、竜化の方は聞いての通り、竜に化けるスキルですね。尻尾と角が生えたり、大幅な身体能力強化や各種耐性アップだったりがメイン効果です」
竜化の方は、様々な強化スキルの中でもトップクラスの性能らしい。どちらかというと、汎用性が高いレアスキルのようだ。これに関しては、ニーズヘッグに限らず、竜の属性を持つもの、例えばファフニールなどの竜はもちろん、クラーケンなど竜種となった魔獣・幻獣、アスタロトなどの一部の魔神にも発現するスキルなので、アドバンテージはあくまでそれなりだそうだ。