即戦力
「まずは数を集めなきゃ話になるめぇよ」
俺たちはいま、人生の先輩方から有り難いお言葉を頂戴しているところである。
「いいかゾルタン。ひとまず、アウルスボット山脈は放置だ。たかが3人じゃあまともに仕事もできねぇ。ごろつき共を集めながら、街道沿いに東へ進んで紛争地帯の近くまで行くんだな」
ごもっともだな。10人でも厳しかったのに、3人で山脈の見張りと襲撃をするのは無茶すぎる。
じいさんの後に、ゼノバさんが続ける。
「紛争地帯に行けば、傭兵共がわんさかいるだろう。それなりに金を積んでやれば、中には戦争するより、楽に稼ぎたいってやつもいるはずだぜ」
しかし、ニルさんの意見はこうだ。
「ある程度金が貯まれば、戦奴隷を買った方がいいだろう。血の誓約をすれば裏切られる心配をしないでいい分、傭兵より信用できる」
たしかに、そのとおりだ。親父の代からの信用できる仲間はもう、ゼスとコリンしかいない。この状況で下手にごろつきや傭兵を増やしすぎれば、分け前を増やしたくなるやつがでてくるはずだ。それならいくらかまとまった金で奴隷を買ったほうが裏切られる危険は無くせるのか。
「ん? 戦奴隷って……」
部屋の隅で気配を殺していた二人を見る。
最初に反応したのはカルスだった。
「ふざけるな! 俺はルイド家に生を得たのだぞ! 奴隷に身を落としたとしても、山賊に与するなど有り得ん!」
おうおう、威勢がいい。だから、ルイド家ってどこの弱小貴族だよって感じだが。
「ペルンって方はどうなんだ。俺達のところで戦奴隷になりゃあ、少なくともそいつと別のところに売られるってことはねぇぞ」
顔を腫れさせているペルンに訊ねる。
「私はカルス様に忠誠を誓っているのだ。カルス様と離れる訳には……」
こいつの顔、蜂の巣みたいだな。綺麗な顔よりかその方が賊らしいっちゃらしいんだが。
「よし。今日からお前らは戦奴隷で、俺の子分だ。血の誓約は紛争地帯に着き次第だな」
カルスは怒りのこもった視線を向けてきたが、なにか喚くことはなかった。
勝手に決めちまったが、ゼスとコリンは納得してくれるだろうか。
「コリン、この二人は弟分ということになる。怪我の治療をしてやるんだ」
「おーけー、ボス。従うよ」
コリンはペルンには手酷く斬り付けられていたが、お返しに顔を蜂の巣にしたんだから、それでチャラのつもりなんだろう。よくも悪くもさっぱりとした性格だ。
「ゼスもそれでいいな?」
「俺はそいつらに思うところは無いからな、問題ない」
よし。これで話はまとまった。生粋の山賊が3人に、剣の腕の立つ奴隷が2人。
正直、全然足りていないのは変わらない。それでも村を襲うのは無理だが、旅人や小規模な行商人程度ならやれるはずだ。