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賊長がアップを始めたようです。  作者: ぽよぽよ
第1章 賊も歩けば山から落ちる
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パルゴの村

 カルスの言葉で、こいつらが貴族とその護衛ということは分かった。肝心の家名は聞いたことがなかったが、それはとてつもない弱小貴族か、王国の反対側にでも領地があるのかってとこだろう。

 つまりこいつらの家は身代金を要求しても払えない可能性が高く、そもそも要求に行くのが嫌になるほど遠い土地に家を構えているのでは、ということだ。


 まあ、それでもこいつらを金に換える方法はある。

「奴隷だな。剣の腕はあるみてぇだし、闘技場のある街まで行けばそれなりの値で売れるか。コリン、そのくらいで止めとけ。剣闘奴隷にしてぇからよ」


「おっ。そりゃいいな。デビューしたら、おめぇらに賭けてやるよ」


 コリンもゼスも、山賊の類に漏れず、賭け事や荒事を好む男だ。

 ゼスは気に入らない奴がいれば自分から殴り合いで白黒付けようとするのに対し、コリンはゼスが殴りあいを始めるとみるや、ゼスの勝ちに賭けて野次馬から小銭を巻き上げる。



「ゾルタン。剣闘奴隷もいいが、まずは村に向かわないか? 今日もここで寝るのは嫌だぞ」

 ゼスの言うことももっとだ。こちらも、ゼスの屁の音を聞くのは飽きてきた。


 もともと今日中にパルゴの村へ行く予定だったのだから。

「おし、さっさと村まで行って今日は休むとしようか」


 

 カルスとペルンが来た方向へ進んでいく。先頭はコリンで、簡単に邪魔な枝を払う。その後にペルン、カルスの順で、俺はいつでもカルスの首を飛ばせる位置で進む。最後に食料を背負ったゼスが付いてくる。

 ガキ二人が通って来た道はそれなりに枝も払われていて他の道を拓くより楽だったので、そのままこいつらの来た道を戻っているわけだ。


「こいつらの来た道はどこに続いてると思うよ?」

 歩き始めてしばらくして後ろのゼスに聞いてみる。


「この方向はパルゴの村だと思うがな。貴族さまの行くようなとこでも無いとは思うが」


 そうなんだよな。方向的には間違いなくパルゴの村なんだよな。近くには他に村はないし。

 かといって貴族さまが近寄る場所でもない。カルスに聞いても、旅の途中で賊に襲われて山に逃げる内に迷い込んだというばかりだった。



 山を下りてみればやはり、パルゴの村の近くであった。そのまま進むと、村とザンドラの町を繋ぐ唯一の道らしきものに当たった。となると、この辺りでこいつらを襲った賊というのは、村の人間だったのかもしれないな。




 パルゴの村に来たのは10年振りくらいだろうか。村の様子はそんなに変わっていないように思う。活気のない村、他人に興味を示さない村人。たくましい腕で農具を振るう若い男と、たくましい大地。


 村に入る前に念を押しておく。

「おめぇらを助けようなんて奴は、この村にはいねぇからよ。おとなしくしてな。ゼス、コリン、揉め事を起こすなよ」


 俺が先頭に立ち、ゼスが一歩後ろを歩く。

 若い男に近づくと、村の外側の畑にいたそいつの鍬を握る手に力が入ったのが分かった。こちらを気にしていない風を装っているが、丸分かりだ。


 揉め事を起こすつもりは無い。と、片手を上げて話しかける。

「よお。アーベルのじいさんに用があってきたんだ。どこにいるか知ってるかい?」


 青年はふぅと息をはいて、鍬を握った手を緩めた。じいさんのことは知っていたらしい。

「アーベルさんなら、さっき狩りから戻ったところだよ。ここ数日、機嫌が悪いから気を付けるんだね」

 近づいてよく見れば、青年は農民にしては体格が良かった。というよりも兵士といって通用するくらいには鍛えられている。

「あっちの一番汚い畑のとこだよ」

 たくましい腕を持ち上げて、教えてくれた。


 やっぱり、この村だけは敵に回したくねぇな。どいつもこいつも、剣を持たせたらそれなりに使えそうだ。


「ありがとよ」

 礼を言って教えられた家へ歩いていく。



「なんだこりゃあ? これが畑かよ?」

 じいさんの家はすぐに分かった。コリンの呆れるのももっともで、教えられた家の畑らしきものは見事に背の高い雑草まみれであったし、木材が放置されていたりとひどいもので、何かを育てている様子ではない。


「まあ、畑仕事するような人でもないだろ。おい! じいさん! 俺だ!」

 コリンに適当な返事を返しつつ、古ぼけたドアを叩く。



 物音はしたから、家の中にいるのは間違いないのだがなかなか出てこない。 



 しばらくたって古びたドアが不快な音をたてながら開く。

 

 目の前にはマチェーテをこちらに向ける、見知らぬじじいがいた。

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