表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賊長がアップを始めたようです。  作者: ぽよぽよ
第1章 賊も歩けば山から落ちる
5/11

主従2

 地面にうずくまる、小さな背中。

「ぐっ、ぐうぅ」

 その脇腹にもう一度蹴りを入れてひっくり返す。


「カルス様から離れろ悪党め!」


 後ろから聞こえる声に振り向くと、コリンが喉元に剣を突きつけられていた。足下にはマチェーテと、彼の父親の形見であるダガーが落ちている。


「コリン、そんなガキに負けやがったのか」


「わりぃ、ゾルタン。助けてくれるよな……?」


「心配すんな。そのガキの大事なカルス様とやらはこっちに転がってるんだ」


「貴様ら‼」

 ペルンとやらが怒鳴る。

「カルス様に触れれば、貴様らを八つ裂きにしてやる!」


「へえ、そいつぁ怖いね。……ゼス‼」

 少し前から視界の端に映っていた巨体に呼び掛けると、木々の間を縫って樽が飛んで行く。


 あぁ、塩漬け肉が――。


 

 ペルンは年の割りによく動けていた。が、結果は腹に手をやって倒れるガキが2人になっただけだった。



 ゼスは離れた位置から拳大の石やら腕ほどの太さの枝を投げつけ、コリンはダガーを片手に砂で目潰しをしようともした。

 その上ここは足場の悪い山で、隠れる木々もたくさんある。剣の腕で勝てなくても、やりようなどいくらでもあった。


「ゼス、こいつら縛っといてくれ」


「おう。なんつーか、悪かった」

 

「気にすんな、屁くらい誰だってするさ」


 ガキはゼスに任せて、コリンの方に歩く。

 コリンはペルンに切られた腕の傷に、治癒草を張りつけて顔をしかめている。



 治癒草は刃物で付いた傷くらいなら、ある程度は治してしまう。腕が半分も繋がっていれば間違いなく治る。葉を揉んで、ねっとりとしてきたら傷口に張りつけておくだけでいい。

 この山のどこにでも生えている雑草みたいなもので、残念ながらこれは商売にはならない。



「いってぇ。ゾルタン、ペルンってガキの方だけでも、殺しちまわねぇか?」

 

 コリンはかなり頭にきているらしいが、俺はそんなつもりはない。

 

「何言ってんだ、あほか」

 このガキどもがどれだけ剣の腕が立っても、山と森の中では俺達山賊の圧倒的有利は覆らない。

「おめぇが油断してやられただけだろうがよ」


 それにだ、

「こいつらどう見たって貴族なんだぞ」

 売り払えば金になる。殺すなんて勿体無い。



 コリンの馬鹿は放っておいて問題ない。あとはガキどもの家次第で、身代金を取るか奴隷に落とすか決めるだけだ。


「で、お前らどこの貴族のボンボンだよ」

 とりあえずアホっぽいカルスの方に聞く。


「山賊に教える名などないっ」


 こちらも最初から素直に話すなどとは思っていない。

「おう、そうかよ。コリン、そっちのガキを痛め付けていいぞ」


「よっしゃ。しばらく止めないでくれよなっ」

 先ほどペルンにやられたコリンは恨みを晴らすべく、嬉しそうな顔で縄に巻かれたガキを何度も蹴りつける。


「やめろ、ペルンを離せ!」


「ペルンってガキが死ぬ前に、答えたらどうだ」

 当のペルンは蹴られ続けて顔がひどいことになっていたが、恐怖を抱いた目をしてうめくものの、弱音は吐かない。

 やはり口を割らせるならカルスの方だな。



「俺はカルス。カルス・ルイドだ!さあ、ペルンを離せっ」



 まさか、ルイド家とは思わなかった。

 商売柄、敵に回したくない貴族や商家もあるので、この辺りのお偉いさんにはかなり詳しいのだが。

 

 …………まるで聞いたことがなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ