卒業式
今日はあなたの通った高校の卒業式
本当はあなたは今日高校生じゃなくなるはずだった
あなたはその日に選ぶ道を見つけられずに
遠いところに行ってしまった
それにしても
高校からは何の連絡もない
3年前に5キロ離れた高校に通っていた
三年生の秋に逝った子は
あなたと同じ死を選んだのに
卒業証書貰ったんだよ
もちろん
その卒業証書が意味のないもの
本当の意味では番号の入らないものだって知っているけど
その子のお母さん卒業証書を貰って嬉しかったって言ってた
なんで
あなたの高校からは何の連絡もないんだろうね
お母さん本当は
あなたの同級生達が卒業する前に
高校に行って言いたかったことがあったよ
どんなつもりで
あなたやあなたの友達
まじめでサボれない子
一人に掃除を押しつけて帰れるのか
聞きたかった
40人分の机をたった一人で運んだあなたや他の子の気持ちを考えたことはあるのか
聞きたかった
ただ
それをしたら
関係のない子も
動揺して
受験に失敗してしまうかもしれない
きっと
動揺するのは
そんなつもりのなかった子
優しい子だけ
気付けなくて
ごめんねと泣いてくれた子だけ
お葬式で
あなたの亡骸を珍しいものを見るように
のぞき込んでいた子
本当に人を傷つけた子は
きっと動揺なんてしないから
だって一人で掃除した子は他にもいるけど
死んだのはあなた一人
かんけーねえだろうって
別にあなただけをターゲットにした訳じゃない
用事があっただけだと
自分だけだと思っていたと
俺の
私の
所為じゃないとしか思わないだろうから
でもね
本当は言いたかった
卒業式に押し入って
あなたを返せって
ここにあなたを連れてきてって
でも
あなたが誰よりも大好きだったEちゃんと部活の仲間
クラスの友達
お葬式で泣いてくれた
病院に来て
管だらけのあなたを怖がらずに
呼び続けてくれた
彼女たちの大切な卒業式
台無しにはできないから
それよりなにより
一番悪いのは
あなたがそこまで
人生に絶望していたことに
一番近くにいて気付けなかった
お母さんが一番悪いって
知っているから
ただ
黙って泣きながら
ここにいる