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あなたへ...2016年3月

卒業式

作者: あずま

今日はあなたの通った高校の卒業式

本当はあなたは今日高校生じゃなくなるはずだった


あなたはその日に選ぶ道を見つけられずに

遠いところに行ってしまった


それにしても

高校からは何の連絡もない


3年前に5キロ離れた高校に通っていた

三年生の秋に逝った子は

あなたと同じ死を選んだのに

卒業証書貰ったんだよ


もちろん

その卒業証書が意味のないもの

本当の意味では番号の入らないものだって知っているけど


その子のお母さん卒業証書を貰って嬉しかったって言ってた


なんで

あなたの高校からは何の連絡もないんだろうね


お母さん本当は

あなたの同級生達が卒業する前に

高校に行って言いたかったことがあったよ


どんなつもりで

あなたやあなたの友達

まじめでサボれない子

一人に掃除を押しつけて帰れるのか

聞きたかった


40人分の机をたった一人で運んだあなたや他の子の気持ちを考えたことはあるのか

聞きたかった


ただ

それをしたら

関係のない子も

動揺して

受験に失敗してしまうかもしれない

きっと

動揺するのは

そんなつもりのなかった子

優しい子だけ


気付けなくて

ごめんねと泣いてくれた子だけ


お葬式で

あなたの亡骸を珍しいものを見るように

のぞき込んでいた子

本当に人を傷つけた子は

きっと動揺なんてしないから

だって一人で掃除した子は他にもいるけど

死んだのはあなた一人

かんけーねえだろうって

別にあなただけをターゲットにした訳じゃない

用事があっただけだと

自分だけだと思っていたと

俺の

私の

所為じゃないとしか思わないだろうから


でもね

本当は言いたかった

卒業式に押し入って

あなたを返せって

ここにあなたを連れてきてって


でも

あなたが誰よりも大好きだったEちゃんと部活の仲間

クラスの友達

お葬式で泣いてくれた

病院に来て

管だらけのあなたを怖がらずに

呼び続けてくれた

彼女たちの大切な卒業式

台無しにはできないから


それよりなにより

一番悪いのは

あなたがそこまで

人生に絶望していたことに

一番近くにいて気付けなかった

お母さんが一番悪いって

知っているから


ただ

黙って泣きながら

ここにいる




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