ダンディズム
目が覚めると肌触りのよいタオルケットに包まれていた。こんなところまで金持ち仕様か。あるところにはあるんだなと思うと腹立たしい。これまた高価そうなソファーから起き上がるとタバコを探す。一口吸って吐き出すと脳が動き出した気分になれる。ローテーブルの灰皿の横にはメモがあった。冷蔵庫の中のものは勝手にしていいそうな。鍵はオートロックだそうな。頭を左右に振ってみる。久しぶりに大泣きしたせいでぼんやりしている。よく泣いてる同期の世話はしているが自分が泣くとなると勝手が違う。ちなみに同期がよく泣くのは心理学科のえぐさゆえ仕方がないことである。目が腫れているし、メイクもぼろぼろだろう。ただでさえ、細い目だというのに。立ち上がってキッチンらしきところへ向かう。
「わー…すっごい…」
金持ちの台所はうちの台所とは次元が違う模様だ。まあ、いい。冷蔵庫からミネラルウォーターを出して飲む。コップだけざっと洗い食器洗い機らしきところへ放り込む。リビングに戻り、荷物をまとめた。
「帰りますか」
ここで朝御飯を作って起きてくるのを待ってるような女じゃない。私はダンディズムを貫こう。
センセも分かってるから鍵はオートロックだって書いてるんだろう。
次に会ったら、何事もなかったような顔をしよう。
外に出ると、朝陽が眩しい。
今日も暑くなりそうだ。