ピエロ
「うっ、うわ、があああああ――――」
周囲に煙が現れ何も見えなくなった。
何も見えない状態で蹲っているといつの間にか痛みが引いた。
そして、煙が晴れた。
「おお、とりあえずモンスター化は成功したらしいな、で、肝心の自我は……大丈夫か?」
「駄目みたい」
「おお、大丈夫かよかったな」
この野郎いつか絶対報復してやる。
というか、モンスター化に成功したのか。
僕は一体どんなモンスターになったんだ。
目線の高さは変わらないな。
手は? ……形は変わらないが、服装が変わってるな。
右手は赤で、左手は紫という驚異のセンスになっている。
服装が壊滅的なまでにやばい。
手だけじゃなかった。全身全て驚異のセンスになっていた。
胸から腹までが黒で、下半身は白色という素晴らしいセンスだ。
しかもタキシードみたいだ。
顔は! 顔はどうなってるんだ!
両手で顔をペタペタと触ってみる。
固い! なんだこれどうなっているんだ!
「魔王! 僕の顔どうなっている!?」
「何か仮面が付いているな。右上、右下、左下、左上に分かれていて順番に白、黒、白、黒になっている。それで目の部分が十字になっているな」
目の辺りを触ってみる。
ギザギザした十字みたいなのが左右両方にあった。
「なあ、魔王……これ何のモンスターに見える?」
「道化師だな」
「やっぱりか……てか、道化師ってモンスターなのか」
「ああ、かなりのレアモンスターだ。なかなか遭遇しないしな。ちなみに、とにかくうざいだけでそんなに強くない」
「マジか……」
これまた微妙なモンスターになったな。
普通の勇者としてのステータスも微妙らしいし、何か憂鬱だわ。
ピエロってどうやって戦うんだよ。
「と、とりあえずステータス確認してみたら」
「そうだな」
憂鬱になっている場合じゃないな。
もしかしたら、使えるかもしれないし。
えっと、ステータスっと。
――――――――――
称号 とにかく微妙なピエロになった残念な勇者 New
加護 ――――
モンスター名 道化師
Lv;1
Hp;100/100
Mp;200/200
体力;70
筋力;50
物耐;50
敏捷;100
魔力;100
魔耐;100
スキル;翻訳 モンスター化解除 逃げ足 回避 爆破耐性 思考誘導
プレゼントボックス サプライズボックス ワープボックス
びっくり箱 収納箱 爆発物創造
――――――――――
……お、おー!
称号が相変わらず悪口なのはむかつくが、今は別にそんなに気にならない。
スキルが何かかなりある。
効果はよく分からないが数的にはかなり良い方なんじゃないか。
「どうした? 良い感じだったのか?」
顔に出ていたのかもしれない。
いや、仮面付けてるから分からないか。
ステータスプレートを興奮気味に長時間見つめていたからばれたのかもしれない。
普段だったら人に気持ちがバレるのは気に食わないが今はそんなに気にならない。
「これ結構良い方なんじゃないか」
僕はそう言ってステータスプレートを魔王に差し出した。
魔王は僕がこんなに興奮しているのが気持ち悪いのか遠慮気味に受けとった。
そしてまじまじとステータスを見る。
「おお、相変わらず称号が悪口なのはドンマイとしか言えないが、ステータス結構いいな。レベルが一桁なのに三桁行ってるのが五つもあるじゃん、あとスキルが結構いっぱいあるな。聞いた事も無いスキルばっかりだけど、まあピエロっていうモンスター自体がナオが初めてだからしょうがないけど。試してみたら?」
「お――おお遂に、遂に良い結果がでたのか。そうか、いい方なのか――フフン。でも、試すってどうやって試すんだ?」
「発動系スキルだったら、そのスキル名を言えばだいたい使える」
「おっけ、ありがとう」
「お、おう」
魔王が若干引き気味だがスルーだ。
えっと、確か発動系っぽいスキル名はプレゼントボックスとサプライズボックスとワープボックスとびっくり箱と収納箱だったな。
プレゼントボックスから順に試していくか。
「プレゼントボックス――おおっ!」
目の前にカラフルな箱が出て来た。
落ちる前に慌ててキャッチした。
多少重さを感じられる。
振ってみたらごそごそと音がした。
「開けないのか?」
「開けるよ、ただちょっと嬉しくて……開けてみるか」
やべー、あまりにも嬉しくて思わず素で答えちまった。
くそ、何か恥ずかしいんだよな。
まあ、いいか開けてみるか。
パカッ。
フタを開けたら、小気味良い音がした。
中には何が入っているのだろうか。
中を覗いてみたらグラサンが入っていた。
おお、グラサンだ! 魔王に捕まった時に無くしていたから嬉しい。
「何が入っていたんだ?」
「グラサン」
「何故に……まあいいか、次を試してみろよ」
「そうだな」
グラサンを懐にしまって次のスキルを試す。
「えっと、サプライズボックス」
また目の前にカラフルな箱が出て来た。
落ちる前にキャッチする。
あ、掴み損ねた。
チュドーン!!
思いっきり爆発した。かなり近くで爆発したから結構吹っ飛んだ。
地面でちゃんと受け身を取ったつもりだったが体が傷ついていて上手く受け身が取れずゴロゴロ地面を転がった。
え、何故!
そうか、サプライズって驚かすとか驚きって意味だったな。
で、その箱だから驚かす箱か。
危険すぎる! もしかしたら、びっくり箱とかも危ないものかもしれない。
出来れば開けたくないぞ、そうだ! 魔王に開けて貰おう。丈夫そうだし。
そう言えば魔王何処行った。
いつの間にかさっきまでいた場所からいなくなっていた。
「大丈夫か? ナオ?」
「うわ、ビビったお前何処いってた?」
「ナオの手から滑った箱が地面に落ちた瞬間、箱が爆発し出したから当たる前に後ろに下がって、爆発が終わったから寄って来たって感じかな」
「……お前凄いな」
「そりゃ、どうも。それより、ナオのスキル危ないから試すのはいいが先に確認してからにしようぜ」
「えっ確認できるの?」
「やっぱり知らなかったか。ほら、ステータスあるだろあれに書いてあるスキルをタッチしたら説明が出て来るんだ」
「へー、そんな事が出来たのか。便利だな、やってみるわ」
そんな事出来るのか。
もしかしたら他にも出来る事ありそうだな。
聞くのは癪に障るから今度いろいろ試してみるか。
ステータスっと。
ちなみに、ステータスプレートは十秒ぐらい何の反応もしていなかったら勝手に消えた。
――――――――――
称号 ステータスの使い方も知らないカスw New
加護 ――――
モンスター名 道化師
Lv;1
Hp;59/100
Mp;180/200
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スキル 翻訳 モンスター化解除 逃げ足 回避 爆破耐性 思考誘導
プレゼントボックス サプライズボックス ワープボックス
びっくり箱 収納箱 爆発物創造
――――――――――
相変わらず称号は悪口だった。しかも「w」までついた。最悪だ。
まあ、それよりもHp減ってる! 41ダメージだからあと二回受けたら死ぬのか。
爆破耐性がついてこれだから無かったら二回で死ぬんだろうな。
Hpってどうやったら回復するのかな。まあ、そのうち分かるか。
魔王が言ってた事試してみるか。
試しに翻訳をタッチしてみる。
――――――――――
翻訳
・全ての伝わってくる言語を保有者の理解出来る言語に置き換える。
・保有者の使っている言語をどの生物にも伝えられるように置き換える。
・常時発動。
――――――――――
凄い! 悪口じゃないぞこれ。凄い嬉しい。
そして、翻訳凄いな。かなり便利だ。
つまるところこれがあったら生物だったら何とでも喋れるということだろ。
全部見てみるか。
――――――――――
モンスター化解除
・モンスター化を解除できる
・消費Mp0
・発動系
逃げ足……逃げやすくなる
常時発動系
回避
・回避しやすくなる
・常時発動系
爆破耐性
・爆発のダメージを30%減らす
・常時発動系
思考誘導
・相手の思考を誘導する事が出来る
・一分ごとに消費Mp20
・発動系
プレゼントボックス
・欲しい物の中からランダムで一つ出す箱が出る
・一日に一度しか使えない
・消費Mp10
・発動系
サプライズボックス
・開けるか衝撃を与えると一番近くにいる生物が必ず驚く物が出て来る箱が出る
・消費Mp10
・発動系
ワープボックス
・開けるか衝撃を与えると一番近くにいる生物をワープさせる箱が出る
・消費Mp20
・発動系
びっくり箱
・開けると人形が出て来る箱が出る
・出て来る人形にはレアリティが存在する D~Sまである A以上には自我がある
・レアリティが高ければ高いほど強く出て来づらい
・人形は開けた人の命令を聞く
・一日に一度しか使えない
・消費Mp50
・発動系
収納箱
・何でも入る箱が出て来る
・開けると入れる事が出来て、閉めると消える
・消費Mp0
・発動系
爆発物創造
・爆発物を作る事が出来る
・材料が無くても作る事が出来るが材料があった方が強い物が出来る
・消費Mp0
・発動系
――――――――――
……おお、凄いな。
かなり有用なものからいつ使うのか分からないものがそろってる。
それにしても……箱が多いな。何故こんなに箱があるんだろうか。
ピエロが関係あるのか? ありそうな感じがする。
全体的に人を楽しませる箱が多いし、きっとそうだろ。
ランダムで効果を発揮するものが多いな試してみたいな。
このスキル構成だったら、メインウエポンは爆発物創造だよな。
で、困った時にワープボックスやサプライズボックスを使うって感じか。
プレゼントボックスとびっくり箱は毎日使うようにしよう。
使わないともったいないし。
てか、ピエロ強い気がする。
僕ずっとピエロでいようかな。
一回モンスター倒してみたいな。
どのくらい出来るか試してみたいし。
「魔王! ちょっとモンスター倒して来たいんだけど」
「なんだ? そんなに良いスキル構成だったのか?」
「ああ、試してみたい事がたくさんあるんだ。だから、外行きたいんだけど」
「まあ、確かに俺の城の周りにはモンスターがかなりいるが、魔王の城の周りだから、強い敵ばっかりなんだよな」
「マジか、死んだら困るな」
「そうだよな……うーん」
そっか、確かにそうだよな。
忘れていたがここは魔王城なんだよな。
魔王城の周りにいるモンスターが弱い分けが無いよな。
困ったなどうしようか……
「ああ、そうだ! ダンジョンだ! ダンジョン行けばいいんじゃね。あそこだったら初めからモンスターが強いなんてことはないしな」
次回からダンジョン行きます。初戦闘です。