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現実  作者: あいうえお
しばしの魔王城編
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成れの果て

「……ん? もう朝か」


 カーテンごしから伝わって来る日差し。

 耳に入って来る不快な人外生物の鳴き声。

 最早原型を留めていないベッドのシーツ。

 遥か彼方へふっとんだ、掛布団。


 もう何千回も体験しているいつもと変わらない朝がまたやって来た。


「また今日も学校かぁ、現実逃避さぜに頑張らなきゃなぁ」


 ……現実逃避と言えば奇妙な夢を見た気がする。

 確か僕は、その夢は魔王に召喚されたという設定で、モンスターに含まれるのか疑問に思う、ピエロというモンスターになったり、ダンジョン潜ったり、ムカついて魔王殺そうをしたり、かなりうざい糞餓鬼を殺そうとしたり、魔王の貴重な髪の毛を抜いたり、ラーメン食ったり、女湯に侵入したり、魔王を殺そうとして逆に殺されたりetc…………。


 ……やっている事のほとんどが犯罪じゃ無いか。

 ラーメンの仲間はずれ感が際立つし。

 そんな夢を見るとか相当疲れていたんだろうな。


「さて、変な夢は全て忘れて今日も学校頑張――」

「――お前、独り言多いな」

「……!?」


 声のした方を見ると僕の事を召喚したという設定の魔王がいた。

 若干白い目で見て来るのが微妙にムカつく。


「あれは夢じゃ無かったのか!?」

「は、何言ってんだお前? 死んだときにおかしくなったのか?」


 ……あぁ、やっぱり夢じゃ無かったのか。

 だって考えてみたら、僕の部屋ベットじゃ無かったもんな。


「いや何て言うか、打ち切り作品によくあるあれをやってみたくて。ほらあの、大冒険したけどあれは全部夢だったのかぁ、ってなった時に何かを思い出して泣くやつ」

「あぁ、そういう系ね。そういや俺もこの世界に来たばっかりの時はよくやってたなぁ」

 

 きっと今の僕達を見ている人がいたら、心の中で『違うんかい!』とツッコミを入れているだろう。

 僕が見る方の人だったらツッコミを入れるか、騙したなと怒るかのどちらかの反応をすると思う。

 多分。

 

「そう言えばお前、女湯に侵入したらしいな。ヒマリが言ってたぞ」 


 他にどんな反応があるか考えていると、魔王が女湯に侵入した事を問い詰めて来た。

 ……というか、ヒマリさん普通にばらしているやん。

 それって僕の異世界ライフに王手掛けられていないか?


「……終わった。僕の中の何もかもが音を立てながら崩壊したよ」

「冗談だ。ヒマリはそんなに酷い人間じゃ無いからな」

「……復活した。僕の中の何もかもが逆再生されていくよ……ん? ちょっと待てよ。そしたら何でお前知っているんだ」

「フッフッフッフ……聞いて驚くなよ。実は俺がヒマリでした!」


 こいつは何を言っている?

 まず性別が違うだろ。


 それにヒマリちゃんは僕の中で向日葵のような存在だ。

 女の子との出会いが少なかった中、僕に関わってくれた人なんだ。

 それを侮辱するなら、僕は、お前を今度こそ殺すぞ。


「その顔は、全く信じてないっていう顔だな。まぁ、それもそうか。丁度良い機会だ! 俺の普段は使わないスキルの一つを見せてやろう! ……『変身!』」


 魔王は、煙みたいなものに包まれて見えなくなった。


 お前は戦隊モノのヒーローかよ。

 ここがいくら異世界だと言っても、そんなに都合の良いスキルなんぞ…………ふぁっ!? 

 

 煙が晴れた後、脱衣所で僕と戯れた人物が現れた。

 何処からどう見ても、あの時見たヒマリと寸分も違わない人物が現れた。


「お、おぅ……確かにヒマリに似ているな」 

「だから俺がそのヒマリなんだって」


 声帯すら変わったのか、声もヒマリと酷似している。

 もう嫌な予感しかしない。


「それは無い……はずだと信じたいね。……逆に何か証拠でもあるのか?」


 僕は寒気を感じながらも、声を絞り出した。


 人間には果て無き探求心があるらしいが、それと同時に世の中には知らない方が幸せな事もあるらしい。

 もしかしたら今僕が聞いた事も、知らない方が良い事なのかもしれない。

 だけど、探求心が勝ってしまった。


 聞いた分際で変だとは思うが、返答によっては、僕は狂う自信がある。


「うーん、そうだなぁ……お前の血はとても美味しかったぜ!」


 僕は窓に向かって走りながら「ハハハ、魔王は演技まで魔王級だな!!」と意味不明な事を言った。

 そして、地面にダイブした。



――――――――――

―――――

―――



 あれから五年の月日が流れた。


 魔王城から飛び出したあの日、僕はとにかく何も考えずに走った。

 森林を走ったり、砂漠を走ったり、海の上を走ったりと、とにかく走った。

 そして、何処かの国の前でぶっ倒れた。


 初めは不審者扱いされ、殺されそうになったりと修羅場そのものだった。

 しかし、地道にクエストを行ったり、国を襲撃しに来たモンスターを返り討ちにしたり、国の内政を見直して正すなどの貢献を繰り返していたら、いつしか勇者だと認められ、可愛いお姫様を嫁に迎える事も出来た。

 

 そして今、やっと五年前のあの日にけりをつけた。


「…………魔王、討ち取ったりいぃぃいいい!」


 やっと僕は、五年前から殺す事をずっと考えていた宿敵、魔王を討ち取る事が出来た。


 考えてみれば、初めから色々おかしかったのだ。

 勇者なのに、魔王に召喚された。

 勇者なのに、ハーレムを作れない。

 おまけに、魔王が糞過ぎる。


 ……でも、今なら分かる。

 それが現実なのだ。

 異世界だからといって、思い通りに行くわけが無い。

 僕はそれを受け入れる事が出来なかったのだ。


 何もかも捨てて逃げ出したの期に理解していった。

 僕は結局この世界に来ても現実逃避をしていたんだ。


 それに気づいたら、全てを受け入れる事が出来るようになった。

 そして、全ての元凶を消す事も出来た。

 あとの人生は、楽しく過ごそうと思う。


「……帰るか」


 僕を死体に踵を返し、歩き出す。


「五年ぶりなのにもう帰るのか?」 

「……あれ、確かに殺したはずなのに。まだ生きていたのか?」

「いや普通に殺されたが? まぁ、生き返ったが」

 

 …………そういや、殺す・殺さないの前に魔王不死身じゃねぇかあぁぁあああ!? 





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