表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実  作者: あいうえお
召喚編
1/21

分かったぞ。あれはコスプレだ

 構成は一応考えていますが、見切り発車に近いので変更する可能性がかなり高いです。

 冬休みのある日の事だった。


 本がまるで、重力とか斥力とかいろいろな物理法則を無視したかのように宙に漂っている。

 本だけじゃない、ゲーム機も、勉強机も、本棚も、ベッドも、部屋に置いてあった物が、全部宙に漂っている。

 しかも、電気をつけてないのに部屋の中が異様に眩しい、目を開けていられないくらい。輝いていると言っていい程に。


 そして、こんなファンタジーになっている部屋の中でもひときわ存在感が強く、自己主張の強い大きな模様が床の中心にある。まるで、漫画やアニメや小説に出て来きそうな感じの魔法陣みたいなものが床の中心に大きくある。


「うわっ!」


 突然、魔法陣みたいなのが発光しだした。

 ただでさえ目も開けていられない程に眩しかったのに、さらに眩しくなる。

 同時に、部屋の真ん中を中心に旋風が巻き起こり、宙に漂っていた物が、風に流され回転するように動きだした。

 当たった。かなり痛い。けど、夢じゃないことが分かる。


 これ、もしかすると、もしかするんじゃ……

 口元の筋肉が緩み、笑みが漏れる。


「これ、異世界行けるんじゃね……」


 そう呟いた。



――――――――――



 僕の部屋に魔法陣みたいなのが現れてから、三日が経った。

 

 まだ魔法陣には入っていない。

 

 魔法陣はいまだに、僕の部屋で強い存在感を放っている。使命をはたせなくて、心なしか寂しげに見える。

 ちなみに、今のところ入るつもりはない。


 もしも、僕の行動を見ている人がいたら、「なんで入っていないんだよ!」と思わずツッコミを入れたくなるぐらい理解の出来ない行動だろう。

 と、思っている。


 だが、しかし考えてみてくれ。

 

「魔法陣って怖くね」


 もちろん、僕も軽い中二病を患っていることもあり、初めは、まだ見ぬ地を求め魔法陣に飛び込もうとした。

 しかし、あと一歩の所で立ち止まった。

 あとちょっとで入れるというところで、不確定要素が強すぎると思ったのだ。


 そもそも、魔法陣だという証拠がない。

 仮に、魔法陣だとしても、どこにつながっているかが、分からない。


 もしも、海だったら。

 もしも、空だったら。

 もしも、紛争地帯だったら。

 

 そう考えたら、怖くなった。

 海だった場合、近くに陸地がないと死ぬ。

 空だった場合、高さと場所によるが結構な確率で落ちて死ぬ。

 紛争地帯だったら、巻き込まれて死ぬだろう。

 それ以外にも、転移による、さまざまな死ぬ可能性が考えられる。


 もちろん、僕はそんな理由で生涯を終えたくない。


 仮に、うまく転移が出来ても、言語が通じるのか。

 それも、心配だ。

 転移した瞬間に、言語が理解出来て、なおかつ伝えたいことが伝えられる便利なスキルでもあればいいのだが、そこまで都合の良いスキルは、二次元に出て来る主人公でも無い限り無理だろう。


 せっかくの異世界なのに、いきなり言語の勉強は嫌だ。夢が無い。

 現実的すぎる。


 それに、僕は中学校に入ったあの日から、もう三年も外国語の勉強をしているのに、全く出来ない。

 素質とやる気が無いんだ。


 そんな僕が異世界の言語の勉強をしたところで、五年で日常会話が出来るくらいが関の山だろう。

 ただ、100%中98%のかなりの高確率で挫折する自信がある。


 このように、異世界に行くのは、不確定要素が多すぎて怖いのだ。出来れば、入りたくない。

 でも、せっかくの魔法陣だ、活用しないのはもったいない。

 ジレンマに苛まれていた。


 だから、僕は三日間考えた。

 そして、湯船で日本経済の行方を心配して僕達が定年を迎えた時に年金がどれだけ貰えるか心配している時、遂に閃いた。

 


――――――――――


  

「やっと分かったよ! 今、僕の部屋にあるあの迷惑な陣の活用法!」

「本当に?」

「ああ」

 

 あの魔法陣は本当に迷惑だった。

 まず、朝も夜も関係無く発光しつづけることで、目に悪いという話になり、家に居る間はグラサンを一日中かけるはめになった。

 そして、魔法陣の出現により、僕の部屋が使えなくなったせいで、物が錯乱している弟の部屋にお世話になるはめになった。

 最後に、僕の部屋にあった物の旋回音が日に日に大きくなっているのだ。このままいったら、あと三年ぐらいで近所迷惑になるだろう。  


 まあ、一番目の問題は、部屋のドアを閉めることにより解消され、二番目の問題は弟の部屋を掃除する良い機会になったからまだ良い。

 本当の問題は、三番目の騒音だ。それだけはどうすればいいか分からなかった。

 あと三番目の問題に比べれば良い方だが、ガチ目の中二病を患っている弟が魔法陣に飛び込もうとする問題もあった。

 時間関係無く飛び込もうとするので家族は弟も含めて、寝不足だった。

 


「それで、どうすんのさ」

「ネットとかで広めていろんな人に知ってもらって、来てもらって、見物料を取るんだよ」


 弟が聞いて来て、僕は、自分の閃いたことを伝えた。


「それ、上手く行くの?」

「たぶん、そんなに上手くいかないと思う」

「それに、面倒そうじゃない?」

「確かに!」


 弟、僕の順で話し合った結果、即却下となった。

 自分的には良いと思っていたが弟の力説を聞いているうちに、納得してしまった。

 


「よっし、勝った」

「またか、全然勝てない。お前ゲーム強いな」

「じゃ、お兄ちゃん床ね」

「またか! 僕もベッドで寝たいな」

「無理」



――――――――――



 そうこうしているうちに、また一週間が経った。

 相変わらず魔法陣は健在だった。むしろ、あの時よりも動きが多少活発になった。前に騒音でクレームが来たくらいにだ。


 そんな魔法陣だったが、何かを吸い込んだら音が多少落ち着くという事が分かったから、石とか適当な物を定期的に投げ込んでいる。

 魔法陣は石とかを投げ込むと「しゅん」となる。その動作が可愛く家では、魔法陣がペットみたいな扱いになった。「マホたん」という愛称もある。


 そんなマホたんにテストの解答用紙を投げ込んでいる時に、同じく二学期の通知表を投げ込んでいる弟が不意に言った。


「明日からまた学校かー、面倒だなー」


 う、う、うわぁー!!

 よし! 異世界行こう!


 僕はそう決心し、現実逃避に走った。

 そして、マホたんに飛び込んだ。

 背後から「ちょ、お兄ちゃん!? あんなに現実的な事を言っていたのに!」という悲痛な叫びが聞こえたが構わず飛び込んだ。



――――――――――


 

 いてて、何か尻がめっちゃ痛い。

 というか、ここはどこだ?

 暗くて何も見えない。

 まさか本当に、転移したのか? 


 ギィィ――


 何か重い物が動くような音がした。

 光が入って来たのか、明るくなってきた気がする。

 というか、あれ扉だよな。

 

 あっ、何か変な見た目の奴が入って来た。

 蜥蜴みたいな顔をしていて、とても人間には見えないのが入って来た。

 二足方向をしていて人間らしさが感じられるけど、蜥蜴みたいな両生類にしか見えない。


 ……分かったぞ。あれはコスプレだ。

 二足歩行する人間サイズの蜥蜴なんておかしいし、絶対に人間だろう。……ってかキモッ。

 何だよあれ、ド〇キでも見た事が無いコスプレだぞ。

 あんなコスプレするなんて絶対中身、きちがいか電波だろ。


 うわぁ! 目が合った!

 やっぱり変な見た目だ。

 何か目を見開いて、口を半開きにしているよ!

 

 こいつ、もしかして蜥蜴に成りきっているのか。

 だとしたら絶対危ない奴だよ。関わらない方が良い奴だよ。

 

 ……いやでも、ここが何処かも分からないし、情報収集しないと駄目だよな。

 普段だったら、絶対に関わらない部類の人間だけど、ここは我慢してこの電波に何処かだけでも聞こう。

 

「あの、ここは何処です――」

「魔王様! やっと来ましたよ! 勇者様が! 何かグラサンしてます!」 

  

 ん? 魔王……だと…………

 そんな事を言うという事は…………こいつ絶対に電波だ。

 もう無理だ! 電波過ぎて鳥肌がやばい!

 逃げよう。



   

※前書きは微妙に見栄を張っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ