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人間記  作者: 中塩屋 治
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ひとつのよるとふたつのあさ、はじまり

 見ては、いない。聞いては、いない。光。音。触れては、いない。温もり。冷たさ。感じては、いない。


 戻ることは、ない。戻ることは、出来ない。光が、ある。音が、ある。触れるものは、感じるもの。満たされた。満たされたことが、分かった。


 戻らせることは、ない。戻ることは、出来ない。光は、常に後から来るもの。音は、常に先に行くもの。触れたものは、無くしたもの。感じたものは、満たされないもの。



 あった。いつものように、あった。太陽が、ある。月が、ある。星が、ある。空が、ある。山が、ある。木が、ある。川が、ある。海が、ある。土が、ある。見ることが、出来る。聞くことが、出来る。触れている。感じている。満たされている。

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