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人間記  作者: 中塩屋 治
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第三夜

 忘れては、いけない。思い出しては、いけない。無くすこと、を知っている。


 温かさというものがあるならば、これは、冷たさ。冷たさというものがあるならば、これは、温かさ。


 光は、無いが、聞こえる。光は、有るが、聞こえない。音は、無いが、見える。音は、有るが、見えない。


 開くならば、閉じることは、なかった。閉じるならば、開くことは、なかった。開くときも、閉じるときも、どちらも、満たされることを分かっていた。


 開くならば、閉じることは、ない。閉じるならば、開くことは、ない。どちらも、満たすことを知っている。

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