第3話【復讐】
鴻上の幻の完全試合から3ヶ月。日本中のプロ野球ファンがその話題を口にしなくなり出したある日のことである。新宿サラマンダ―ズの一塁手・佐々木の5歳になるひとり娘の絞殺死体が発見された。
葬儀の際、号泣をする佐々木。しかし、それからわずか1ヵ月後、ひとり娘に続いて佐々木の奥さんまでもが絞殺死体で発見されるのであった。
葬儀の際、涙を一滴も流すことなく、抜け殻のような状態になっていた佐々木。そんな彼をすぐそばから流し目で見守る男がいた。
━━鴻上である。いうまでもなく、佐々木の妻と娘を絞殺したのは彼であり、男は濃厚な悲しみに包まれる葬儀中、心の中で抜け殻状態の佐々木を嘲笑い続けていた。
へっへっへ、ざまあみろ、へぼ一塁手の佐々木め。このオレの完全試合を台無しにしやがって。おまえの奥さんと娘の死はその報いだ。ケケケケケケ……。
それから1週間後、佐々木は自宅の自室で服毒自殺を遂げた。鴻上はみずからの手で佐々木も殺害するつもりだったので悔しさに襲われた。
かくして鴻上の復讐は幕を閉じることになる。たとえ警察に逮捕され、死刑を宣告されたとしても悔いはなかった。
オレは野球に人生のすべてをかけてきた人間だ。そんなオレの気持ちなど、ほかの奴らには一生わかるまい━━鴻上は佐々木一家に激しく同情する世間に唾を吐くのであった。
が、それから数週間後、鴻上は衝撃の事実を知ることになるのであった……。