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98 動かされた

◇◆◇


世界の変化に気付いたのは良かったのか。


天使達がまた何かを始めたのは分かった。しかし、笑えるくらい見る見るうちに力を落としていくそのさまは笑いすら通り越し、いっそ哀れで、酒の肴にすらならないほど当たり前の光景となっていた。

もうそれ程の力の差が出来ていたのだ。

わざわざ何かを仕込むことをしなくても自滅していくその様子は多少つまらなく感じることがあったくらいだ。


そんな中、天使達がそこに手を染めた。


悪魔になったからといって、天使だった時の記憶が無くなった訳ではない。だから、嗤った。

異世界に助けを求めたのだ。

しかも、地獄に空いた穴を使って。


そして、天使の力は益々落ちていく。こういうのが坂道を転がる様にというのだろう。天使が入ってこれないほど深いこの場所に高笑いが響く。


何処の世界でも科学者は追究をやめない。その方向を誤る者が出るのも納得だ。

ああ、なんて面白い。

たまに小石を放り投げる。それがまた変化をもたらす。

飽きたら消す。吸収して自らを大きくする。


尽きない欲は進化だけでなく怠惰も生んだ。

それは何処から来た?誰がもたらした?

知っているのだろう?隠しきれるはずがない。

国のすべてが加担しているという自覚はあるのか?


気付いても動かない。気付いても動けない。ある者は気付きさえしない。ある者は正当化するだけ。ある者は更に欲する。

高らかに笑うその者の醜さのなんと美しいことか。


足掻きながら落ちていくその姿の暗いきらめき。

立ち上る濁った揺らぎはなんて心を揺さぶるのだろう。





気高き異物。


気付いた時には増えるより減る方が早くなっていた。

地上から地獄へ撤退するものが増える。

それとは別に浄化されてしまっている。


少しずつだが侵した地が取り返されている。

同朋の力が弱くなった。

自分も離れておく方がいいだろう。


ああ、他の者は知らぬが、自分も地獄へ帰ろう。

なに、あの者達が自分の地へ帰ってからまた遊べばいい。


中途半端な愚か者は挑んで負けて消滅させられるのであろう。

それもまた良い。

欲望に忠実であることも地獄を広くするのだから。


地獄から見物していよう。



◇◆◇


神子様が亡くなっていた。突然死だった。

仕えていた者の多くが涙した。


最近は不安定だった。心を閉ざした神子様に声は届かなかった。

明るく優しかった神子様を知る者は新しい神子の召喚に期待と不安を持つ。


国の発展と維持に欠かせないことを国民の誰もが知っている。

近隣諸国で最も力が強いのはこの国だ。

神子様のおかげだという外交に有利を得ている事。

神子様から得た技術と発想。


神子様を違う生き物、そして国の為の消耗品だと思っている上は神子様を蔑む。恩恵を得ておきながら気味が悪い化け物と内心罵る。


仕えるわたし達だって最初はそうだった。だって神子様っていったら、容姿はまあ置いておき、知恵ある方もいればそうでない方もいるが―――傾向性として我が儘であったり見目の良いものを侍らそうとしたりする方が多いと云われてきたから。そして、必ず発狂すると云われていたから。

だからそれを責める事はできない。



天使の声が国に響く。

神とは本当に存在していたのか。


天使に、神に見捨てられる。


召喚ができなくなったと騒いでいたのが届いていたがそれも罰なのだろう。


国の穢れが祓われたと誰かが言った。


神々から制裁を受けたと判断されたこの国に、今まで外交に下手したてに出ていた国々が行方不明者の問い合わせを始め、圧力から解放されたことを感じ取り、強気に出てきた。


各地に使徒を名乗る者が現れたそうだ。


本物の神々の遣いの成したことが他国で書籍化され輸入された。

著者は命を狙われ他国へ脱出するしかなかったらしい。


国は荒れてしまった。

武力を持った戦争こそ起こらなかったが酷いものだ。


そんな中、天使が降臨し浄化したとされる地は心の安寧を求めた人で溢れている。

わたしも訪れたが、そこは神子様の部屋と同じ清廉さと温かさを持っていた。だからわたしは思い出の多い神子様に仕えた地へ、部屋へ戻った。


浄化された地へは近付けない人達もいた。行ったら具合が悪くなる人も居た。

わたしはそれを天使の力だけじゃなくて神子様の力でもあるのではないかと、密かにそう思っている。実際は分からないが、そう思いたいからそれでいいのだ。


神様、本当にいるのでしたら、神子様の魂をお救い下さい。

そして、次もまた神子様のお側に有れますように。


神子様が好きだったオカリナを吹く。

その音が神子様の恩恵の様にこの国を豊かに平和にしてくれますように。



◇◆◇


「ねぇ。ちょっと!急にカンカン鳴り始めたんだけど!!これきっとヤバい奴だよ。ねえ!あ、えっと、どうしよう、皆、私と手を繋いで!早く!!」


ピリッと場が凍るけど気にしていられない。


「早く!」


急いで!気が急く。

リコルがジルの手を握ったのを見て、リコルの手首を掴み、反対の手はマリエルがしっかり握ってきた。

引っ張られる。


その感覚は経験したことが無い感覚であった。


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