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97 動いた

ああ~、終わった終わった、ヤッホーイ!!

気にしない気にしない、知らない知らない、やらかしたのは気のせい。そう、気のせい。

少々予定外。

でも私、やり遂げた!

大丈夫。しっかり還った感覚もあった。

浄化に手抜かりなし。さすが私。

かいていない汗をぬぐう仕草で、で、で、で、…………で?


その手を下ろすついでに空間を切りジルの腰を掴み、部屋に戻る。見ればジル腕にリコル。反対の私の腕にはマリエルが付いている。

うん、予定通り。本当に予定通りさぁ~。


そして何度目かのこの空気。私はすっかり日本人として培ってきた大事なものを失ってしまったようだ。


「残したい音楽とやらは?」


何の事かしら?知~らない。


「締まらないんだけど」


ですよね。


「度が過ぎますわ」


気ままに奔放に。

時には身勝手に。

そして、ある時は、まさに女神!


「「「カーミー~ユ~~」」」


私はごめんと叫びながら腰を90度に折り曲げた。いやなんかもうさ、そうするしかなかったっていうか、勢いでやり切って逃げるしかなかったっていうか。

悪かったんだろうなぁって微塵も思っていない、そんな面の皮の厚さは持ち合わせていないから。

そういうことを分かってくれている三人は呆れながらも許してくれている。



私の暴走?で予定外の展開になったが、一気に終わらせることが出来たことで、四人共気負いが無くなったのだろう。

安心したんだろうな。

誰からか分からないけど、その場は笑い声に包まれていた。

全く引っ掛かりが無いわけじゃない。失敗だってあったし、反省だってある。

私どうしちゃったんだろうって思うくらい、引っ掻き回したし。反対に踊らされた?あれ?って思うこともあったけど。


肌で感じるのは、私達の手が出せない所でも動きがあり、私の勘で捉えて判断するしかない事があるっていう事。見えない所の事だから、現在どうすることもできない。それに対しては臨機応変に。


そう、だから。


ちょっと休んで次の国へ行こう。

私の適当さの上昇と共に私の力が上がっていくのを感じる。


もしかしたら私の力って、理性が解放を抑えているのかもしれない。私だけじゃなくて皆も。

だったら…理性…いや、自重を辞書から破り取れば、マリエルが最強になるかも?一番有能で強く、自制心も強いのはマリエルだから。


100%から遠い今でもかなり強いんだけどね。


◇◆◇


私たちに連絡も声掛けも無かった。


最後を見せてもらうことが出来なかった。


出来上がった新しい楽器が残されている。




遠い地の上空が虹色になっていた。

あれが心結さん達の仕業であることを近くで見てきた私たちは疑わない。

あちらが最後の方向だというのは分かっていた。

当然、私たちも連れて行ってもらえるものだと思っていた。


いいや。足手まといでしかない私たちが置いて行かれるのは当然の事。


「そう落ち込むな」

「うん」


理解してくれるのは父さんだけ。

でも、恋心も持ち合わせてしまった私とそうでは無い父さんでは受ける衝撃は違う。


「戻ってくるかな」


来ないだろう。分かっている。

言われたわけじゃないけどそんな気がする。外れていないだろう。


《全てが終わったわけではない》

《これからはお前達が担うのだ》


守護様の声だ。

今まで何をしていたのだろう。

聞いた真理のせいで守護様を信じる事が出来ない。

尊敬する気も起きなければ、彼等から慈愛も感じない。

これが彼等との格の差ということか。


彼等より下であっても私よりは上なのは間違いないはずなのに心が拒否する。

父さんも眉を寄せ不快感を隠さない。


『ちょっとそれはないんじゃない?』


急に届いた心結さんの声。


『口出ししないつもりだったけど、ちょっと酷いんじゃない?』

《何をおっしゃっているのですか》

仁応にんおう智胡利ちこりについている守護サマ居る?』


やや間があり。


《お呼びですか》

『うん。この二人もお願い。色々無駄にしたくないから。五家ほどの能力はまだ無いけど育てて。スパルタで』


え。


《承知》

『それと、あの辺とあの辺とあの辺にそれらしい子居たから様子見て大丈夫そうだったら霊道開いてそっちも育てて。あと、この二人が記録残しているから上手く使って』


ええっ?

父さんもポッカぁ~んだ。


『二人共ありがとう。あと、ごめんね。あ、そうそう。あの楽器叩けば音が出るから上手く使ってみてね。それじゃ頑張って。バイバイ!』


心結さんはそう言い逃げて行った。

これからとても大変な日々が始まることが決まった事とこの地を離れ別れを告げられたのだけは理解できた。


姿を見て触れたかった。

お別れはあっけなくそっけないものだった。


彼女の中での自分の存在が一人の男ではなく、この地を護る者の一人でしかない存在。ただそれだけ。


「頑張れと言われたな」

「うん」


会えなくても期待に添えるようやってみよう。


「なぁ、カミーユ様基準のスパルタってどんなもんなんだろうなぁ」


あ。


「きっとレイ様が指揮執っていたと思わないか?吐くのは弱音と愚痴と食い物だけで済むといいなぁ。血反吐は吐きたくないわぁ」


心の中で思う。私たちはもしかして可哀そうなのではないか?もの凄く嫌われていた?いや、期待されているんだ。そうに違いない。

先を想い、心の中で必死に鼓舞の言葉を並べた。


◇◆◇


「っていうか、カミーユ!後始末が半端ですわ!」


わたしが怒るのには、ほんの少し同情があるから。カミーユと通った先に居た彼に、少しだけ同情するから。ブラッドリーだったかしら?


「それと、完全放置は駄目ですわ」

「ええ~、いいじゃん別に。僕もう休みたい」


まったくもう。


「リコルまでカミーユみたいな事言うんですの?」

「私みたいって。泣いちゃうよ。ぐすん」


ぺしっ。その手はマリエル。

マリエルからの突っ込みが入るなんて驚き。マリエルの顔がうっすら笑顔で怖いのですけど。


「まず、付き合わせてきた二人を放置したんですからカミーユが一声掛けておきなさい。楽器だって作らせっぱなしなのでしょう?」


代金は渡してあるのでしょうね。


「わたし達がいなくなったあと大きな顔して守護サマが引っ掻き回さない様に牽制するとか必要なのではなくて?」

「ですね。俺達が還る頃にはもう元に戻っていたなんて事になったら、どうでもいいとは言っても腹が立ちますね」


カミーユが後ろ髪ひかれたら困るじゃない。おかしな縁は切っておかなくては。


「そこは五家の守護サマにでも頼んでおけばいいんじゃないの?」

「リコル、良いと思いますわ」


担当地域が違うとか言ったら半消滅くらいしてしまおうかしら。やったことないけど、挑戦すれば出来そうな気もする。


「ということで、カミーユは早く行って来てくださいませ」

「はぁい」


私たちはカミーユを見送る。


「さて。悪魔が逃げたようだとカミーユは言っていましたが」

「カミーユが言うならそうなんじゃない?」

「でもそろそろ一体くらい滅してしまいたいですわ」

「だよねー」


そこでマリエルが紙束を取り出した。


「それは何ですの?」


って聞いてみたけどもしかして。


「予想通りですよ。悪魔の資料の一部です」


でもその後の言葉に驚かされる。


「非常に苦しい思いをして持ち出したのですが、そのままこれごと浴槽に、気を失うように落ちた結果、聖水で見事に浄化されただの紙になりました」


それって。


「浄化も完璧、汚れも完璧に落ちて、本当にただの紙です」


沈黙。


「言い訳、聞いてあげるよ~」


にたぁっと、悪い顔をしてリコルがマリエルの顔を覗き込む。

わたしはそんな事はしない。そんなことしたらいざっていう時に使えないから。だからわたしの分は潰さない。そもそも言い訳の必要なんてないでしょ。マリエルがするわけないじゃない。


「ねぇねぇ、どうしちゃったのぉ~?」


リコルって意外と馬鹿ね。


「まだ力が足りませんでした。失敗しました」

「マリエルでも失敗するんだね」


本当にバカなんだから。


「マリエルで無理だったなら仕方ないですわ。カミーユが好奇心で動かない様に黙っておきますわ」

「ありがとうございます。それはそうと。では、リコル」


ほら。


「俺ではまだまだ未熟で駄目なようですので、次はリコルが悪霊と瘴気にまみれながら解読をお願いしますね。未熟でひ弱な俺と違って優秀ですから。ねえ、ジル」

「ええ。頼もしいですわ。さすがリコルですわ」


さて、次は何処へ行くことになるのかしら。




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