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92 聖なる炎

まぁ、こうなるよね。このくらいで済んでスゴイじゃない?ちょっと見直しちゃったよ。


「おじさんにブラッドリー括り付けていいかな?っていうか付けちゃうけど」


そうしないとマリエルの手が空けられないんだよね。頑張ったけど意識が浮かんだり沈んだりしているし。だからってここに放って置いたら後味悪そうだし。


「ではでは、まずは…できるかな?初めてだけどやってみる!」

「失敗しても問題ありませんわ」

「挑戦は大事です」


ということでやってみちゃうよ、初・聖火。火は…イメージして…水が出せるなら火だって出せるはず。本物の火は出せないけど聖なる火なら私は出せるはず。浄化に関しては絶対的にありえないほどの力を持っているんだから。神気が出せる程なんだもん。出る出る出る出る…。


「火のイメージは青。炎は低く這うように、焼き尽くすは邪気瘴気、そして未練、加えて器」


よし!出たっ。


「燃え上れ炎…ああ、やっぱり竜っぽい形が浮かんじゃう。うん、これでいいや……はぁっ!!」


私の手から青い燃える竜が建物の…にはもう見えないけど、その中をぐるぐる回る。燃えているはずなのに熱が無いその炎は燃やしていく。

さすがにまだ手から放して制御ができず集中力が要る。


「レイ様、こっちは大丈夫だから援護を」


おじさんの言葉を受けてマリエルが来てくれた。放つ力の反動が予想より大きい。


「ジル!カミーユを支えて下さい」


マリエルとジルが交代する。


「リコル!俺と一緒に結界を張ります」

「僕出来ないって」

「では、聖気で俺も一緒に守ってください」

「無理!」


ああ、もうっ。


『マリエル、難しくてもここから張って!二つ張れるでしょ?聖気は私が何とか送るから』

『しかし』

『もう、うるさい早く!疲れるのよっ』


本当に気遣うんだったら言う事聞けっていうのよ。

ここに在る縛られた魂だけ浄化したいのに、外からも成仏したいと願う魂がすごい勢いでやってくる。結界で守ってもらってそこだけを焼いていく。

そして、私達の元に行けばあの世へ還れる知った魂…おそらく近隣諸国から来ているのだろう…は、マリエルに守ってもらう。


「あんた達も後で還してあげるから今は邪魔すんじゃないわよっ」


私、今、この世で一番の使い手なんじゃないの?元々能力高いのに急成長!でもイマイチ完全に把握制御出来ていない所が玉に瑕?なんてね。な~んてやっている間に燃え尽きたっぽい。


『終わり!』


あ~疲れた。やりなれない事はするもんじゃない。でも埋めるのも大変だし、それだけじゃどうにもならなそうだし、生きている間くらいの後顧の憂いを絶つくらいいいよね。その位の間はこの国に係わらなくたっていいでしょう。






さすがに疲れたのでしばらく休む。

あ。

さり気なさを装い、おじさんとブラッドリーにも聖気をあてた。

まだ顔色は青い気がするが、浅かった呼吸は落ち着く。肺に深く空気を取り込むことを思い出した様だ。良かったよかった。ああ、良かった。

忘れていたけど、もう、大丈夫。

多少白けた空気だけど、誰も触れないでいてくれている。


温度のない炎は焼いても焦げ臭さも肉が焼ける匂いも出さないで済んだ。落ち着いた私を見て、マリエルが跡に近づき軽く手を振る。小さな渦巻が粉を巻き上げ外に出した。

私も近づく。


「うん」


私は聖水出す。マリエルが陣があった場所を聖水で流す。その水は渦巻同様外へ出された。


「残ってないね」

「完全に浄化できましたね」

「うん」


さて。腰を抜かしている二人は分かっているだろうか。

私達四人はずっと姿を消している。結界で。彼等にだけは見える様にして貰ったけど、マリエルに。

二人を覆っているのも結界であるが、聖結界である。いや、で、あった。

二人から離れたマリエルの聖結界は消えた。今もそのままだ。

そして、私達は何かあった時にはこの二人を矢面にというつもりで動いてきた。覚えられたくないもの。


今更であるが、逃げる事をせず隠れて見ている人達が何人もいる。その人達にこの様子はどの様に見えただろう。

信じられない事が起きた!で終わったであろうか。夢だと思ったであろうか。

何か起こったその後に居たのは男性二人。老人ばかりの中で中年と青年はさぞ目立ち異質に見える事だろう。


そんな状況ではこんな風に思うではないのだろうか。


例えば…。

この人達がしたのか?

この二人が何か知っているのではないか。

等々。


この国の人達はこの悪魔の施設を何だかんだで歓迎している。であるならば、彼等が受けるのは賞讃ではなく非難なのだろう。


『さすがにちょっと可哀想かな』

『そうかしら?』

『したい様にしていいですよ。証人は多い方が便利ですから』

『ちょっとの手間で僕たちの長い平穏を手に入れてもいいんじゃない?』


そうだね。皆の悪意が吹き出して溜まり場になったらまた悪魔が生まれるかもしれないもんね。うん、よし。


『カミーユの演出プラン!』

『ぱちぱち』


リコルもぱちぱちって。ここは拍手でしょ。いいけど。


『四人で声を重ねましょう』


で、あーしてこーして、セリフはこうで。姿は今回も天使だよ!でも天使役は子供姿のジルとリコルでよろしく。大人と子供の体格差なら見間違いとかないでしょ。

あ、必要に迫られたら次の建物の在る所でも天使コスよろしくね。


時間かけると動揺に付け込むことができないから、早速やってしまおう。

まずは四人で高く上がる。


「二人共準備はいいかな?」

「羽根つけるとか、何か恥ずかしいんだけど」

「あら、どうせわたし達だとはわかりませんわ」

「似合っていますよ。歴史に残しても全く恥ずかしいとは思いませんが」

「あ、そう。マリエルがそういうんだったら、いいか。でも僕、マリエルが笑っているの忘れないから」


細かいなぁ。もっとノリノリで行こうよ。


「じゃあ、姿出す準備して。3、2、1、ハイ!」


背景の神々しさはマリエルが出す。私は神気を出す準備と拡声の合図をマリエルに出す。


「「「「人の魂を悪魔に売った愚かな民よ」」」」


響く声にざわめきが混じる。


「「「「魂を悪魔に捧げ利益を得るそのおぞましさ」」」」


ざわめきの中おそらく言い訳を始めたのだろう声が混じる。


「「「「全てを浄化し、やり直す機会を与える」」」」


声はこの辺だけでなく町にも届いているはずだ。


「「「「省みよ。改められなければ次は機会ではなく、罰があると覚悟せよ」」」」


罰に怯えるだけじゃなく、ちゃんと考えて。


「「「「大地が揺れ、稲妻が地に刺さる。不毛の大地になるかもしれぬし、荒ぶる雨風が全てを流し去るかもしれぬ。神は見ている」」」」


天災に抗える?

手も口も出さないけど、神様は本当に見ているからね!…この世界のあの世、頼んだよ。

えっと、さらに派手に行こうか。

まずは、神気でパパ~っときれいにして。

私の両手からジルとリコルが放っている様に見せながら放出していく。

先に放ってからにすれば、もう少し皆、素直に聴いてくれたかな。ちょっと失敗。

ほ~らほ~らきれいでしょ?

頭がスッキリしたでしょう?

押し込めていた疑問が浮かび上がってきたでしょう?

目を逸らしていた罪悪感が湧き上がったでしょう?


ああ…なんてこと。運よくなのか悪くなのか、長生きした地球人もいたのね。

片手ほどの人数だけど、還ったのがわかる。良かった。けど、亡くなるまでどうやって過ごしたか考えると…。


さてさて。もうひと仕事。言ってないけどやっちゃうよ。

聖火の応用!さっきより簡単にできるはず。

今度は竜っぽくじゃなくて竜を。炎を青白く。


「はぁっ!!」


天空を駆けさせる。大きく旋回。


「マリエル、竜に飛行機雲みたいにキラキラ付けて!」

「はい」


ほら、更に凄くなったでしょう?語り継ぎやすくなったでしょう?


「上昇させて消すよ。皆、姿隠す用意してね。カウント5から。5、4、3、2、1、消えて」


こうして天使と竜は消え、視線が天に集中している間に二人も回収し、その場から消えた。





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