9 反省会
昨夜はやっぱりマリエルの体調は悪かったのだろう。私の方が先に目が覚めた。
まだ眠っているマリエルの顔を見ると気持ち良さそうである。さすが、チートな部屋。もうすっかり具合は良いのであろう。当然、私も快調だ。
スヤスヤと眠っているマリエルの腕がしっかり私に絡み付いている、なんて事はないが、抱き締めていた名残で体の上に腕が乗っかっている。
腕をどけたら起きてしまうかもと思うと、どけるのも躊躇われた………のは最初だけ。
向かい合って、その眠る顔を見ていると、イタズラ心が湧いてくる。それがとても疼く。
そっと手を動かし、裸の胸を触ってみる。筋肉なのか、張りのある手触りがとてもいい。
そっと触れるのを何度も繰り返していると隆起してきた。ちょっと身じろいだが、顔を見るとまだ平気そうである。
調子に乗って指先で摘んでみる。んんっと声がして眉間にシワが寄った。
…まだ大丈夫。
更に調子乗って、指の腹で転がしてみる。ああっっという声と熱い息に手が止まる。
起きてないよね、とドキドキしながら息を潜めて様子を窺う。10秒…20秒……。
…まだイケる。
ソロソロと体を動かす。頭一つ分下がると唇でパクッと食む。体がビクッとしたが、それだけだ。
そのまま、舌先でチロチロっとすると、色っぽい声と共にガシッと抱き締められ、身動きできなくなった。
「誘ってきたのは、あなたです」
はい、自業自得です。惚れっぽいとか安い女とか言わないで下さい。
好きな人の裸体が目の前に在ったら、おイタいたくなりますよねっ?
結局、ちゃんと起きたのはお昼で、半日は無駄にしてしまった。…というのをうっかり念話で送ってしまい。
「そうですか。俺との時間は無駄な時間ですか」
と静かに話すマリエルに、
「いえいえ、とんでもゴザイマセン。天にも昇るいい時間でした!」
と慌てて答える。
久し振りでっていうか、やっぱりこの体では初めてで痛かったけど、遠の昔に別れた元カレと比べるなんて事しちゃいけないほど(マリエル、神!って思うほど。恥ずかしくて絶対聞かせられない)大変気持ちよう御座いました!!…っていうのも、しかも心の声の中の心の声までしっかりと、うっかり念話で送っていたが気付かなかった。
マリエルの機嫌が良くなっていたので安心しきっていたのだが、
「そうそう。俺は全然構わないのですが、念話の調節が上手くできていないみたいで、ちょくちょく聴こえていますよ」
「えっ」
この後も暫く調節が上手くいかなくて、ちょくちょく声を届けてしまう日が続くのであった。
―どうりで、いいトコを上手く攻めてくると思った。
という事で、朝から十分楽しんだ私達であるが、本題である。
「支度が出来次第、昨日の所を見に行ってみましょう。それから、この国で破壊の必要がある物でしょうが、カミーユが召喚された時に使われて施設を探しましょう」
「うん、そうだね。昨日のお屋敷でさ、何か剥げる感覚があったんだよ。マリエル何か見なかった?
私だけがヤバく感じたって事は、もしかしたら…浄化の能力か神子のどちらか…。うーん、神子に関わる何かがあそこにあったんじゃないかと思うんだよね。強い浄化力の波動とかに反応したとかだったら、マリエルも感じると思うんだ」
中途半端に情報を入れたせいか、『神子』の事を考えると気分が下降する。
「気になっているんだけど、見た目は心結からカミーユに変わったけど、融合って事はどちらも損なってないって事で、根本は一緒なわけじゃない?
私まだ『神子』なのかなぁ。多分っていうか、自信あるんだけど、私に予言の力、無いわ。能力が解かれた時に…今なら分かるけど、浄化されて補正が掛かった気がする。
そんな力があったら気が狂いそうだから無くて万々歳だけどね」
「本当に碌でもない国ですよね。なんにしても、まだまだ情報が足りなさ過ぎなのは確かです。もう暫くこの世界に慣れるまでは地道に夜浄化して回って、動き易くしましょう。
―――それとも、どっかん…してしまいますか?」
「そうだねぇ。その方が早いか。
考えておくよ」
自分でも酷いと思うが、知り合いが居ないのもあって、この国の人達の目先の安全とかよりも任務を果たす事で得られる安全と平和に重きを置いてしまうのである。
ここまで悪霊塗れでも、真っ当な考えを持つ者による叛乱・反乱など革命が起こって、国の自浄があってもよさそうなものであるが。それすらない事に気味が悪いと思ってしまう。
「話を戻すけどさ、昨日、何があったの?」
昨日の事を本人は失態と思っているのか、余程忌々しい事でもあったのか、苦虫を潰した様な顔をしている。
しかもプイッと横を向いた!
話したくないのかもしれないけど、私が促すと仕方なさそうに話し始めた。
「地下には案外簡単に辿り着けました。人が居ませんでしたから。
ただ、地下に入ると、奥の方で何かしている男達が居たのです。話し合いなのか言い争いなのか、何か言ってる風でしたので話をよく聞こうとマスクを外したら…血腥い、あまりにも酷い匂いが篭っていて…。吐瀉物を撒き散らすわけにもいかず部屋に戻り。あまりの気持ち悪さに、情けないのですが撤収してしまいました」
それを聞いて思案する。自分の中で仮定をしてみる。
「気になるなぁ。マリエルだったら、わざわざマスクを外さなくても『聴覚強化』使えば聞こえるよね?」
「うっ、その通りでしたね」
がっくりしているが、そうじゃない。
「その判断ができなくなる程に思考が阻害されるって、一体どれだけの邪気や欲望、嘆きとかが篭っていたの?
着いて直ぐに1度聖水飲んでるんだよ」
「!」
「しかも『治癒』かけてからも聖水飲んだのに完全回復してなかったよね?」
「はい」
「そこまでって事は、やっぱり、男の中に悪魔がいた…かもしれない」
証拠がないから仮定でしかない。
「そして、召喚に生贄が、人の命が使われるという事を踏まえると、血腥いっていうのも生贄であった可能性があるわけで。
床、赤く見えたんでしょう?よって、あそこは悪魔の施設である…かもしれない。拷問部屋や監禁部屋の可能性もあるけど」
憶測からの可能性でしかない。
「…ソレだけに絞って捜査するのは、まだ狭め過ぎですが、カミーユの逃げられたと剥がせた感触を含めれば、ハズレでもないと思います」
これはこれで、あまりにもお粗末な会議と報告会であるが、とりあえずの方針として、結局は色々な方面からの情報を集める、召喚施設を探す、お屋敷については今日見てから考える。昨日みたいな各個撃破…あそこまで大量に聖水を撒いたら応急処置ではなく、あの場所だけは浄化の措置をとったという結果なってしまったのだが…するかどうかは保留という、決めた意味があるのかという物になった。




