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72 眠りの終わり

だる~ん。

ああ、もう。何だか面倒臭~い。


部屋で半解凍の謎物体エックス、温まって形が崩れたプリン。

今の私を例えるならそんな感じだ。


意気込んだはいいものの、どうしたものかと頭を抱えていたのは少し前迄で、今はそれをぽいっと放り投げ、絶賛ダラケ中である。


「もう嫌~~~」

「ですね」

「何でパパっとやっちゃダメなのよ~~」

「カミーユの精神が持たないからです」

「うっ」

「でも」

「無駄な殺生嫌いでしょう?」

「うん」

「どうすればいいのよ~~~!!」

「急がず」

「でも」

「騒がず」

「騒いでないっ!」


…いや、今騒いだけど。

どこかで何かが変わった。時間的猶予が出来た。

波があったが早くこの国へという私の胸を騒がせた勘。それが収まったのだ。

私達が手を出す前に変化があったようだ。

それが偶然の流れなのか、誰かの手によるものなのかは全く分からない。

この国にも五家の様な存在があるのかもしれない。

存在するならもっと仕事に励めと言いたい。


「何でなんだろうね」


私の質問に答えが返ってこない。そりゃそうか。こんな曖昧な事言われたってね。


「楽、なのでしょう」


答えが返ってきた。


「楽?」

「ええ」


楽、か。

それは否定できない。

答えとヒントがある物を追うだけ。無い所から閃きを得るよりも楽なのだろう。

自分の意思で自らの中から力を湧き上がらせるというのはちょっとした決意程度でできるものではない。時には苦しみを伴う事も少なくない。


ここでも多くの守護霊がぼんやりとしている。眠ったまま仕事を出来ていない。

そしてまるで存在していないかの様な神。

神様仏様もなければ、人を神の様に崇める事もない。


けど、「神子」という言葉がリオイシャ国にも存在するという事は、過去には神の存在を肯定していたはずなのだ。


「ところで、何で豊穣の神子なの?」

「…今…ですか?」


…もっと早くに受けるべき質問だと思っていたのね。または問わずとも答えを知っている事であると。少しあった間に入るのは更か頃かしら。恥ずかしいわ。


「だってしょうがないじゃない、知らないんだもの。私の時は予言の巫女だったし。でもそれだって資料で調べた事だから身をもって経験したわけじゃないからまるっきり他人事ひとごとだし」


そんな経験したいなんて微塵も思いません。


「これも正直、完全な正解ではないのですが話しますね」

「うん」

「今回の神子の話とこれまでの神子の話が混ざっているのですが。豊穣の神子は人々の願いを聞き届け国に伝えるのだそうです。勿論、その全てを届けることもその全てを叶えることなんて出来ませんが間違いなく届くのだそうです。後はそれを叶える為の方法や助言が与えられるとか。ただ、神子の任期は短い方が多いと言われています。

その為、国では神子を丁重に扱いもてなし、神子の望みもなるべく叶えるという事だそうです」


え~、それって。簡単に想像できるよね。


「任期が短い理由って…」

「考えている通りでしょう」


でも気になるのが「多い」って事。逆に言えば、少しは長い人が居るって事よね?長い理由って何なのかしら?


「ね~え、マリエル」

「何でしょう?」


私は改めて提案する。


「もう一度全て調べなおしましょう」

「全てですか?」

「うん」


そう、全て。


「正直言ってどこから攻めたらいいのか分からない。とっかかりが見つけられない。…それに多過ぎる、と思う」


多くが呼ばれ過ぎた。多くの地球の魂がまた消えてしまうかもしれない。この世界の魂の救済ではなく、地球の魂を元の輪廻へ戻したい。本当に助けたいのは地球の魂。


「薄情だって思うかもしれないけど言うね。私、今、聖国でしてきた事はおせっかいだったという風に認識を改めた。無駄な殺生って何だろう?地球の魂がこんなところで朽ちる事こそが無駄な殺生だと思うのよ。やっぱりこの世界の事はこの世界のあの世で納めるべき事。

でも任務だから、そして地球の魂を守る為ににも悪魔関係は破壊する。

どうにかしてこの世界に残された魂を地球に還す。

私は決めたよ」

「でも」

「うん、リーヤ課長の言う通りこの世界で生きることを楽しむ事も放棄しないよ。それやったら、いくら私でも沈んで堕ちちゃうかもしれないもの」

「そこを捨てないでくれて良かったです」

「ふふ、一緒に幸せ生活送るんだよ?せっかくマリエルと長く地上で過ごせるんだもの。無駄になんかしないって」

「強くなりましたね」

「そうかな?そうでもないよ。本当に強かったら忘れなかったし思い出せているはずだもの」

「遠からず思い出せますよ」

「だといいな」


私自身が思い出したいっていうよりマリエルが思い出してあげてと願っているような気がするから。

私の弱さと…悪いタイミングとか諸々重なったんだろうなぁと推測。


「という事で、リアル乙女ゲームとやらをしようとしている神子について調べましょうか」

「ああ、その調べについてはちょっと当てがあるので任せて下さい」

「神子が病んじゃう前にどうにかできるといいんだけど」

「今の神子は任期が長いそうですけど」

「いつまで持つかわからないからね」

「ですね」


ああ、そうそう。


「私さ、やっぱり歌好きなの。でもね」

「他にもしたいことがあると」

「うんっ!」

「今度はね…」




◇◆◇


同士が集う。

ここはなんて豊かだろう。

散らされた力が戻ってくる。

自分より力が弱いモノは取り込んでいく。

ああ、なんてイイ声なのだろう。

ああ、キモチイイ。魂が震える。

モットモットモットモット。

堕ちた魂の色。

絶望の悲鳴。

欲望に従順な美しさ。

力を得るほど得る、天使達とは色違いの同等の美しさ。

同調する悲しみ憎しみ怒り、満たされる事のない欲望、尽きない不満。

望むは怠惰。

欲しい美貌はたるんで暑苦しい肉襦袢とは反対のもの。

嫌悪する姿、羨む容姿。

ああ、なんと愚かであろうか。

同じ人を平気で生贄として捧げ続けるなど。

そんな小さな、罪とも言えぬ瑣末事を罪と言い生贄を生産するなど。

愚か過ぎて。

…なんて美味い酒の肴になるのだろう。

神の存在を忘れたリオイシャ。

せいぜい我らを楽しませてくれ。



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