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68 背中

ミュ~ウ~~!キ~ラ~~!!あんた達やってくれたわね。

髪が抜けるという世にも恐ろしい神子の呪いに罹るかもっていう不安に襲われちゃっている位なんだから!!!


…本当に、本当に…んんん、もうっ!ちょっとこれは話が違うんじゃないかしら?


「救護室満室です!」

「じゃあ、病院に搬送!」

「気が付いた人は帰してちょうだい」


頭が痛いわ!


「あの~、目が覚めたらここに居たんですけどコンサートは?」

「終了いたしました」

「え~~~~!嘘っ、いやぁ~~~~!!ニコ様~~~~」


どうしてくれようか。追加報酬はぼったくりって言われるほどぶんどってやるんだから!


「早くMD販売所に行かなくちゃ!まだあるわよね?」

「買占め等行われていなければあるはずですが」

「おい商工会!俺達の女神様はどこに行ったんだ!」

「生憎存じ上げません」


もうっ、恨むんだからぁ!


◇◆◇


ワナワナ震える手。あたし、目も耳も悪くなったのかしら。見間違い聞き違いであって欲しいわ。


「どういうことよ」

「聞いたような聞いていないような?」


ハァ?

任された記憶はあるわよ。でもこれはどういうことよ!!


「ばっかじゃないの!」


商工会から渡された書類の数々。


智胡利ちこりさん、ご愁傷様」


ご愁傷様なんて言葉で済まさないでよね。他人事ひとごとじゃないから笑えないじゃない。




信じられない、信じられない!信じられない!!

あたしはてっきり、実権は青雲の志が持ったままの「名ばかり」の代表その他だと思っていたのよ。なのに何なのよ!泣きそうだけど、泣いてらんないじゃない。

五人の中であたしが最も管理・運営・代表のどれにも向いているって理解できるわ。

でも、あの人達のMDと漫画以外の収入と資産が全部あたしになったってどうなのよ。


全ての代表、代表取締役社長の欄に記されているのはあたし。あとは他の四人が適材適所にきちんと振り分けられている。

補佐は外部依頼で商工会のエリカ・ヘイデンさん。実働があったときのみ賃金が発生する事になっている、今や本当に名ばかりの顧問に青雲の志の名が記されている。


「まぁ弟子の務めってやつよ。諦めなさい」

「分かっています。言いたいだけっていうか、文句の百や二百くらい言わなきゃやってらんないっつーの!」

「気持ちはわかるわ」


う~ん、信心しんしん智胡利ちこりに任せると聞いた気がしたんだけど。あ。


「あら、気付いた?」

「ええ」


責任者・統括はあたしだけど、講師と制作なんかの芸術関係の実働とさり気なく加えられている薬師の育成は信心しんしんになっているし、エリカさんには分からない様に記されているけど五家の活動の実働も仁応にんおう礼梦らいむ盛義もりよしに割り振られている。三人に至っては、一般に自身の簡単な浄化の体操を広めたり、心を真っ直ぐ保つための教えを自らの経験を元に書き起こし読み物の原文を求められている。…誰が推敲や清書するのかしら?気にしないでおきましょう。

その他に今迄の活動もするんだ。へぇ。彼等も弟子を育てる事をしなくてはならない。鬼ね。

つまり、あたし達五人共まだ半人前なのにも拘らず、学びながら育て運営と活動をしながら教育もしなくちゃならない。


ん?続きがあるわね。


「商工会ギルドの何人かはとっても頼りになるし力もあるし青雲の志から手が離れて才能を持て余しているから手に余る様なら権利を売っちゃってもいいわよ?…だそうです」

「その続きはあるのかしら?」


美人の顔が引きつっています。メガネが傾きましたよ。


「もうあげちゃったものは好きにしてかまわないからね。そう、例えばエリカさんとかエリカさんとかエリカさんとか…だそうです」

「考えさせて」


言葉が出ない。はぁ。

あたし達を少しでも甘やかすつもりはないのね。

守護様から聞かされたあたし達に守護様が付けられている意味。それを考えれば指針も資金も人材も伝手もお膳立てして貰ったのだから弱音を吐いてなんかいられない。


「いざとなったら強いのは女性で、現実的なのも女性なのだそうよ」

「それ、なんか分かります」

「でも、青雲の志に言われたらお終いって気がするのは何故かしら?」

「四人共現実的でありながらロマンチックでしたからね」

「あの存在感…」

「あたし達だけで大丈夫なのかな」


思わずこぼれた不安。

やっぱり頼り切っていたんだな。追い続けることになる後姿。きっと追いつけない。最初からこんな弱気で任されて…。


「自信ないよ」


服の裾を掴む。しわが出来る事が気になるけど離せない。


「安心しろ、俺もない!」

「僕、一生自信なんて持てないかも」


いつの間にか五家が集まっていた。

そっか。あたし一人で負う必要なんてなかったんだ。


「あのキラ様とやりあっていたエリカさんが居るんだぜ。平気だって、な?」


苦笑しているエリカさんが頷く。でも、そこは苦笑じゃなくて自信満々の笑顔が良かったよ。


「あ、そう言えばあなた達って青雲の志としての彼等としてしか付き合いなかったの?」


どういう意味?


「あの子達、仕事以外では芸名じゃなくて本名で呼び合っているじゃない。だからキラ様って何って思ったんだけど」

「「「「え」」」」


エリカさんとは対等。でもあたし達は弟子。やっぱり頼りないよね。だからお目付け役にエリカさんなのか。


「知ってますよ。カミーユ様、マリエル様、リコル様、ジル様でしょう?でも、本名に様を付けられると気持ち悪いって。だから師匠の件で助けて貰って、尊敬と敬愛?で様付けたくて。みんなは違うの?」


仁応にんおうは誰よりも早く会っていたんだったわね。

あの人達ならただ単に知っていると思っていたとかそんな些細な理由で名乗っていないだけなんだろうな。


「あたし達の師匠の背中は遠いわね」

「届かないけど見える所までは引き上げて貰ったんじゃないか?なぁ、仁応にんおう盛義もりよし

「僕は~?」

「あ?ああ、信心しんしんも」


そうね。やれるって判断したから任せて旅立ったのよね。

戻ってきた時に驚かせてやるんだから!



◇◆◇


職業斡旋所に来た時はあんなに髪結いに拘っていたじゃないの。美男美女だったわよ。でも、レイさんなんてカミュさんしか見ていなくて。

あんな才能があってあんなに有名になるんだったらもっと個人的に親しくしておくんだった!

あ~もうがっかりよ。残念。



観光客だったあの子達がこんなに人気者になるなんてね。

娼婦のようだったミニスカートも今ではそんな事なくなって、同性でおばちゃんのアタシだって眼福だって思いながら…はかせてもらってるからね。見た目はまだまだイケてるからいいんだよ。

ああ動きやすい。

髪も作業する時は結った方が楽だね。



短い間だったけど偶に利用させてもらったカミーユちゃん。あれ以来浴衣も手に入らないけど作りは仕立て屋に頼めば大丈夫って言ってたけど。

あの髪型もあの衣装も個性的だったけど。

一番個性的だったのはカミーユちゃんね。


楽しそうで溌剌。その姿は魅力的。

お客様からも青雲の志の話を何度聞かされたか。

髪結いを辞めてから会って話す事は無かったけど、あの頃を知っているのはちょっとした自慢。

ふふ、目が合ったり手を振って貰ったり。知人特権ね。

また戻って、素敵な歌を聞かせてね。



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