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63 礼梦(らいむ)

もう諦めたかと思っていたエリカさんを仲間全員で丁寧に心を込めてお願いし、私達からどうしてもと希望出した地を追加させた。もとい、追加して貰った。

その中には結界の中継地点との繋ぎをする地点もあるので完全にこちらの都合である。

集客人数を考えると微妙だけど、狭い会場ならではの「近い」という特典があるから演出は小さく纏まっちゃうけど人気会場になると私たちは判断した。


いよいよ、この国でのとりあえずの締めの国内ツアーが始まる。







五家の最後の一人が来た。けど。だけど。……………どうしよう。こういう人に免疫がない。

一人高揚しているけど、君以外の私達、守護サマ含めて泣きそうだよ。

私達にコイツの守護サマがものすご~く申し訳なさそうにひたすら、ただただ、そりゃもう必死に。こっちが悪者かってくらいに謝ってくる。


「女神よ!」


私は握られた手を振り払う。キモっ。


「あうっ」


誰がその世界の扉を開けたのよ。

リコルがげしげしと足で踏みつける。汚物を見るかのようだ。


「はぁっ、アンっ」


ぞぞぞぞぞぞぞ。ヒィッ!

ジルが私の背に隠れる。私も隠れたい。


「最も麗しき我が女神!」


恐ろしいほど素早く立ち上がりマリエルの前に跪いて手を奪い、そっと口付けた。

ぴきりと何かが軋む音がした。軋んだだけじゃない。割れた。


私達四人の目だけに映る。

マリエルが腕を強化した。私の目には見えないスピードで振り下ろされる。それが一発だけでないのは分かった。ソレが色々な方向へ体の向きを強制的に変えられていたから。……生きているよね?

………見事?…ぼ、ぼろ雑巾の出来上がり。…ミンチにならなくて良かった。お肉食べられなくなっちゃうよ。ふう。

ワタシタチワルクナイ。ウン。

ということで気を取り直す。聞かずにはいられない。


「どうしてこうなった?今ならお姉さんが聞いてあげるよ、仁応にんおうと守護サマ?」


仁応が目を合わせようとしない。お・ま・え・かぁ~!


「仁応?今なら、い・ま・な・ら!!許してあげるよ?最初で最後だよ?ん?…言え」


私の話だから他の三人はどうだか知らないけど、と心の中で付け加えておく。

仁応が青い顔を上げた。


「えっと。こっちへ向かう途中で礼梦らいむに会って。そしたら礼梦らいむがムカつく奴で、腹が立って。喧嘩売られて、浄化対決したら僕が圧勝で」

「で?」


言いにくそうにしているけど話してもらうから。


「だ~か~ら~、それで?それからどうしたの?」


ほら、マリエルとジルとリコルも聞いてるんだからね。早く言いなさい。


「そしたら、礼梦らいむは自分が一番だと思っていたらしくて、でも実は五家の中で最弱だってオ、僕に教えられて…そしたらぽっきり折れちゃったっぽくて」

「で?」


早く話せと顎で促す。


「オレをじゃなくて、僕を師匠と仰ごうとするから」

「から?」

「僕を助けてくれた皆さんのことを知っている事を洗い浚い話しました!青雲の志の凄さも含めて!!」

「で?」

「え?」


え?じゃないわよ。それだけなわけないでしょ。

仁応、目を逸らすな!


「本当の神子様っていうのはこういう人たちの事だって言いました。偉業と御業の素晴らしさといったら。僕を助けて導いてくれた皆さんはまるで神様のようだって」


なんで赤くなってもじもじしているのかな?


「僕の皆さんに対する尊敬と感謝の表れです」

「あ、そう。え~と、うん、まあ、それはありがとう」


私が予定していた事態とは別物になったけど、これはこれでいっか。

すっかり変態と化した礼家の礼梦らいむは、私は触らない。一番被害を受ける事になりそうなマリエルに任せよう。

マリエルが一番美人である事については認めるけど、身長や骨格で男性だってわかりそうだけどね。


「…女神…マリエル様……なんという仕打ち…」


あ、気を失った。知~らない。

話した私も悪いけど、口が軽い守護サマもやっぱり信用ならないわ。ったく。


◇◆◇


この愚か者が!愚か者が!!愚か者が!!!いや、最も愚かなのは我か。

礼梦らいむの正義と自信は独り善がりで心配の種になっていた。

育て方を間違ったことは否定できない。

仁家と義家に負けたくなかった。

成果を出して格を上げたかった。

礼梦の傲慢な所は自身の姿の現身であったのだろう。

結局のところ、だからこそ次代として選んだのだろう。


基本は疎かであったが、でもその力は発揮出来ていた。と思っていた。

格下の我を見下していた仁家の守護が接触をはかってきた時は好都合だと思った。

性格は些か難があるが、能力は引き出せているのだから。

仁家の話を遮り、我々のいい様に運ぶ。

今思えば、仁家が諦めて従ったのは言っても聞かないから仕方ない実力の差を、ということだったのだろう。


そして、聞かされたのは異世界からの応援、特務課の天使達のこと。

礼梦らいむは興奮し浮かれているが我々守護は凍り付く。

任務を蔑ろにしていた自覚もあった。

それほどの事態に陥っていたのだと知る。


格上の仁家は我々が知らされていない事も知っていた。


あの世の中でも異世界あの世には隠していた事もマリエル様には申告したそうだ。

事が知れ渡る。

地上での対処は異世界特務課のすることに口出ししない事と全面協力で納得して貰った。

マリエル様の温情なのか。…なのか?

異世界を繋ぐ地獄の穴を閉じ次第、再び不干渉に戻すことになった。


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