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41 想い-マリエル

アルバムのレコーディングを無事に終えた。

コンサートで歌った曲を全て入れた。販売用の曲珠作製は専門業者にお願いする。

エリカさんと相談したが今回は割引券は付けない。アルバムの発売日を商工会から発表はしてもらっている。

とりあえずこれで1つ終わった。


そして、期間は短いが次に備えることにする。

発売と新しいコンサートの名前はまだまだ未定だが、それに備えての選曲と練習も始めることになった。もう、この辺の流れと準備はマリエルとエリカさんに丸投げだ。それでも、マリエルは私の気持ちを汲んでくれるので仕事に関して気持ちがささくれる事はないんだろう。

貴族街でのライヴは翌日の予定があり逼迫しているため、終わり次第、慰労、歓待も断り直ぐに教会へ向けて移動になる。



◇◆◇


「いよいよですわ。漸くキラ様がわたくしのものになりますわ。この美しさに並べるのはキラ様だけですわ。ニコ様だってあと数年もすればキラ様に劣らないようになりますわ」


煌びやかなドレスを纏いうっとりとしている。


「お前がその二人の心を掴んでしまうなら、その後傷心のミュウ嬢とウララ嬢はわたしが貰い受けよう」

「まぁ!なんて素敵なんでしょう。捨て置かないで拾って情をかけてさしあげるのね。さすがですわ」

「貴族なら当然だ」




「だってさ。全然大丈夫じゃないじゃん。僕、エリカさんの人を見る能力疑っちゃうね」


今回、会場が貴族街の一般宅のパーティホールである。準備があるので早めに到着だ。

…貴族街の一般宅、それは私達から見れば立派な屋敷なわけで。大層なお出迎えをしていただき、準備の為に失礼なほど早くそこを離れ…。

控え室に使ってよいとされた部屋も辞退し、そのままホールに案内してもらったのだ。

そこの子息達も私達に挨拶をしたがったが、関係者以外立ち入り禁止にした。

まぁ特に悪い勘も働かなかったけど、有名税といえばいいのかお近づきになりたいという下心を隠さないで寄って来る人も多いのである。


大きな所で行うわけではないので四人で設置、搬入ができるように用意したので、全ての器材の支度を終え、リコルがこそっと偵察に出かけて耳にした言葉が先ほどのものであった。


「確かにこの国の美形率って高いけど、キラに並んで遜色ないって思える神経の太さに驚きですわ」


うんうん。

私だって結構立派な入れ物だけど、「キラ」と並んで遜色ないかって問われると考えちゃう。


「あら、ミュウもキラに負けず劣らずキラキラですわよ。カミーユの時は可愛らしさもあるけど、ミュウの時は神々しいっていうのかしら。自信と楽しさの表れなのかもしれませんわね」


へぇ、そうなんだ。こいうことでジルが嘘やおべっかを使うことに意味は無いし、その言葉をそのまま受け入れよう。

マリエルの気持ちを疑う事なんて無い。でも、それと愛されている自信や並び立ち続ける権利の行使への不安は別で。


「カミーユがそんなに揺れる理由がわかりませんわ」

「そう?僕はなんとなくわかるけど」

「なんだかムカつきますわ」

「まぁまぁ。雰囲気悪くしないで、ね?楽しく過ごしましょう」


リコルは課長とマリエルとユリウスと比較されてきたもんね。ジルは外への見せ方は私とエンジュの妹分で格下という立場でいいっていう考えで割り切っていたからかもしれないね。



◇◆◇


旧王国の浄化が出来ている。誰が行ったのだろう。

俺達が起こした災害であの時亡くなった分の魂は確かに浄化した。だが、その後に亡くなった分はしなかった。怪我が治ることなく亡くなった者、衰弱が激しく回復へ向かわなかった者、病気を患ってしまった者などその後も多くの命が消えた。そういった魂は未練もたらたらで悪感情が残っている事が多くなかなか成仏できずに不成仏霊となることが多い。そして、悪感情で固まったものが地縛霊や悪霊に変わっていってしまうのである。

聖国へ避難したが亡くなった者の不成仏分は仁応が集めて、成り掛けの悪魔に渡していた。少しは彼のお蔭で俺達の仕事が減ったと思ったから、彼が悪側に傾くのを阻止した。あのまま守護様に任せていたら堕天していただろう。そうなれば浄化して滅するだけであっただけである。少しは使える様に鍛えてほしいものだ。


リコルにあちらは任せて俺は教会周辺を含め下見に来ている。もっと早くに来てみれば良かったのだろうが、カミーユの勘に引っ掛かることもなかったし忙しくてそこまで手が回らなかったというのもある。

俺達三人はどうしても心結みゆうに同情する気持ちを完全に拭う事が出来ずにいる。

異世界へ連れ去られる…それが前提に在ったが為に心結の両親の守護霊が働きかけああいう風に育てた事を知っている。それもあって、我々三人はカミーユから自由も希望も夢も奪いたくは無い。

やりたいことを成し、且つやらなければならないことをするという事を望んでいるのだ。


意外だったのは、ここへ来てリコルが自らを抑える事を止め、ジルへと積極的になったことだ。理由は不明だが側に居たいのに恋愛関係は避けるという傾向があったリコルが自らが持つ愛情を認め、惜しむ事なく伝え与えている。直接リコルに言う事はないかもしれないが認め進んだ事は良い事だと思う。


俺自身もカミーユへの飢えが満たされ、心身共に落ち着きを取り戻した。あの不安定さは我ながら情けないと思うが、あの時はどうしてみようもなかった。ああして手を出す事ができず、遠くから見守るだけのもどかしい時間。やっと手に入ったと思ったら心が通じないやりきれなさ。もう、なにがあっても絶対、必ず一緒に生まれ変わってやる。

そして、秘密を抱えるが故に心を完全に許せるのが同郷の我々四人だけ。カミーユには伝えていないがカミーユの命と我々三人は一蓮托生の命だ。カミーユの命が終わる時、俺、ジル、リコルも共に地球あの世へ還る。その逆はない。知ったら悲しむかもしれないが、四人同士では子を成せない。異世界人とだったら異界の神子と生せるのと同様の結果がおとずれる。四人同士では異世界あの世と魂の縁が築かれていないからだ。魂が入らないために流産してしまうのである。それはカミーユの体に負担が掛かる為、俺がそうならないようにしている。

いずれ彼女に伝えばければならないが、今は夢に向かって進んで欲しい。


「さて、と。弱いながらも一応結界が張られているのですね。霊能力者が関係者の中にいるということですか。天使教ね。とりあえず問題はなさそうという判断でよいということにしましょう。

俺達に気付いて取り込もうなどと考えなければよいのですが。目の当たりにするとどう考えが変わるか分かりませんね。

ミュウの圧倒的な聖気と神気を利用されないように気をつけましょう。バレなければいいんでしょうけど。ミュウはうっかりやっちゃいそうですからねぇ」


彼女を神と崇められる存在には絶対させない。

これ以上、この世界が原因の犠牲者を増やすことは許さない。

カミーユに無理もさせない。

今在る方陣は全て壊す。悪魔も還す。

カミーユは反対するかもしれないけど、この世界を全てどっかんしてでも必ず、任務をやり遂げ異世界あの世と地球あの世を不干渉に戻してみせる。


俺の密かな決意。

誰にも言えないけど、俺の大切な人達を護ってみせる。

この世界の奴らをこき使ってやる。尻拭いは今世こんぜ限りだ。


「リーヤ、ユリウス、エンジュ。こっちは俺達でやり遂げるから、そっちは頼みますよ」


遠すぎて言葉は届かないが、この想いは届いていて欲しい。

心から、そう願う。


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