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36 行方

控え室に戻る途中に感じた異変。


「ボクチャン暴走しちゃった?」

「笑えませんわ」

「ですよねー」

「誰も見ていないんですから瞬間移動しますよ」


忘れてた。マリエルに言われて控え室に戻ったわけだが…。

負のエネルギーが渦巻いている。結界のお蔭で外から負のエネルギーが追加される事はないけど。


「わお」

「水でも掛けたら目を覚ましますわ」

「やっておしまいカミーユ」

「リコル、ふざけるのも程ほどになさい。カミーユお願いします」


力を使うところを見られるのは都合が悪いので死角から滝のようにぶっかけ続ける。


「…先ほど女神と呼ばれた女性が鬼に見えますわ」

「ボクチャン、溺れ死なないといいね」

「カミーユ、適当なところで切り上げてください」


あ、息苦しそうだね。うん、ごめん。

今のは気のせいだよ~。ばれないように乾かす事も忘れませんよ。

でも、私は出来ないのでそれはマリエルよろしくっ!



若いせいもあるだろう。早くに両親を失ったせいもあるだろう。頼りになる縁者や友人が側に居なかったせいもあるだろう。受け継いだ能力が高かったせいもあるだろう。

仁応くんは凄く不安定だ。

私達がここを離れる前には、一見、落ち着きを取り戻したように見えていた。

彼が「師匠」と呼んでいたモノ、あれが仁応くんを悪意を隠した真綿で優しく包み、力を利用していた。ただ愛に飢えていた少年にとって「利用された」というのは「裏切り」に映ったのだろう。

もし。もし、なんていうのは言っても無駄なことであるが師匠が本当にただの人だったら…。人が同じ様に悪意とまでは言わずとも利用目的で近づいていたなら、精神が持たなかったかもしれない。人ではないものであったからこそ立ち直れる、のかもしれない。

逆に本当の善人だったなら?それはそれで、打たれ弱くて師匠にべったり寄りかかる、師匠が絶対という危険人物になっていたかもしれない。能力もきちんと制御できるようになるかも怪しい。

そう考えると、彼にとっては心に傷が残っただろうが、「師匠」が人ではなかったのは「良」だったのではないかと思う。

うん、きっとよかったんだよ。




「仁応くん、おまたせ」

「まるで狐につままれたような顔してどうしたのさ」

「…仁応、大丈夫ですの?」

「もう少し横になっていたらどうですか?」


まだ少々息が乱れているが、落ち着きは取り戻せている。うん、よし。


「ああ。これは現実?溺れそうになっていたはず、え?」


盛大に混乱中であるようだ。少しだけ悪いなとは思うけど、正気に戻っているならこちらの都合もあるので進めよう。


「仁応くん、私達に守護様とお話させてくれるかな?」

「はい、ミュウさん」


話の続きをしよう。


《皆様、ありがとうございました》

「ううん、そんなの全然かまわないよ。っていうか、きっとこれから私達だってお世話になるからお互い様だよ」

「そうです。お気になさらず」

《そうですか。そう言って頂けるのでしたらお言葉に甘えましょう。そう、「何故か」。そこからでしたね。まだ完全ではありませんでしたが光の道は開き始めていました。それは力を中途半端に開放という現象を起こしてしまいました。

仁応、これは珍しいことなのです。本来ならば完全に開かれた時にしか開放されないのです。そういう意味では本当に悪い偶然が幾つも重なってしまい可哀想に思っています。

だから、わたしも無理矢理介入しました。悪霊を魂に取り込まないように、何とか保護しました。それでも外側にべったり付いた分や仁応が師匠と呼んでいたモノが自らに取り込んだ悪霊の残滓までどうにかすることはできず…》


とすると、アレは仁応くんから直接感じたものではないというのは確定。師匠…あんな程度が私を酷くざわめかせるはずがない。今にして思えば、そう、そうだ!あの時に感じた気配に近い。

ああ、今頃思い出すなんて。


『失敗したかも』

『何をですか?』

『あ、ごめん。念話使ってたね。後で話すよ』


今、こうして仁応くんが悪霊に憑かれてもまともな意識を持っていられるのは守護様のお蔭であった。詳しくきいたら心臓などの臓器と脳だけはなんとか聖気で守っていたそうだ。そうじゃなきゃ、あんなに集める体質だもん。とり憑かれ飲み込まれて悪魔になっていたという未来もあっただろう。


さて、仁応くんだけどどうしたものか。

意外とすんなりこの状況を受け入れているけど、彼から質問はないのかな?


「あの、ミュウさんとキラさんは結婚しているんですか?」


えっ?あの、全く以って予想外です。


「ええ、そうですよ」

「ああ、やっぱり!まだ、あのぼろアパートに住んでいるんですか?実は以前あそこに住んでいて。二人を見掛けたことがあるんです!」

「今は?」

「師匠と一緒に住んでいたんですが。もう、住めませんね。仕事どうしよう。師匠はもう…」

「ええ。侵食されつくされていました。人には戻せませんでした」

「ですよね。守護様が僕に理解できる分だけの真理を送り込んでくれたから、ある程度解っています。悪いヤツだったって知ってしまったけど、やっぱり悲しい、かな。皆さんに助けて貰ったけど、悲しんで…泣いて…いいですか?」


そう言いながら、言い終わる前に涙を流していた。

泣くという行為は誰でも簡単に出来る浄化の一つだ。だから、存分に気が済むまで泣けばいいと思う。

抱きしめて胸の中で泣かせてあげたいと思うが…無理なのでやめておこう。

ジルも一歩踏み出そうとしたが、ビクッと固まったのが見えた。

ふ~ん。リコルって愛情深いヤツ、じゃなくて、嫉妬深いヤツだったのね。


『カミーユ、今の内に先ほどの話を聞かせてください』

『三人とも、ごめん。せっかくのチャンスを逃したっぽい。もっと早く気がつくべきだった』

『悪魔、の関与でしたか』

『うん。師匠の裏に居たと思う』

『その根拠はあるのですか?』

『師匠と対峙してあの感覚はなかった。でも、仁応くんと遭遇した時にはあった。なのに、仁応くんからは感じなかった。けど、思い出したの。あの感覚、方陣を見たお屋敷。あそこで感じたものに似ていた』

『そうだとしたらあの時始末したと思った悪魔は…』

『浄化は失敗かな。向こうも、切り離して弱体化してでも逃げる事を優先したんだと思う』

『そうですか。だとしても、どっかんした時に消滅できたと思っていたのですが甘かったですね。かなり手ごわい悪魔がいるということですね』

『うん。あの時でさえ、まだ切り離して逃げられるほどの力が有ったんだと思う』

『うわ~、ここの悪魔ってそんなにヤバイ感じなの。最悪サタンクラスってことかぁ?』

『地球でさえ未だにサタンを浄化出来ていないのに。300年やそこらじゃ無理ですわ』

『せっかく弱らせたけど、師匠と仁応くんを使っていくらかは回復したと思う。それに』

『悪魔を弱らせる力を持っている者が居る、という事を知ったでしょうね。その悪魔も警戒してくるでしょう』

『ていうかさぁ、それならもう他国へ逃げちゃったかもね』

『どうでしょうか。潜伏が上手い相手ですよ。君達でさえ発見できなかったでしょう?』


そうなんだよね。だからって感度上げちゃうと引っ掛かりすぎて困った事になっちゃう。結局、今までと同じでいくしかないかな。

すっかり念話に夢中だったが、仁応くんが泣き止んだようだ。


「お、仁応。すっきりしちゃって。いい顔になったじゃん」

「根暗はもてませんのよ」

「はい」


うん、空元気であろうが元気になったのならよいのです。


「さて、仁応。俺達をあなたの住まいだった場所及び活動範囲を案内してもらいましょうか」

「はい」

「はい?」

「は?」

「何のために?」


えっと。今日はもう疲れたかな、なんて。まだ、後片付けもあるし、エリカさんに怒られちゃうよ。


「二手に別れましょう。俺と…ミュウは仁応と一緒に。ニコとウララは会場の方を頼みます」

「分かったわよ、キラサマ」

「え~。けどまぁしょうがないか。了解」


私は、そういえばと、思い出したことを仁応くんに言っておく。


「仁応くん、私とキラは夫婦同然ではあるけれど、まだ夫婦じゃないよ」

「それ、今、必要?」

「そんな訂正どうでもいいですわ」

「同然であるならば言わなくてもよいでしょう?」


マリエル?目が怖いです。その、目力…殺人光線出そうですよ?ヒィ~ッ!穴が開くっ!!!



◇◆◇


「見ていない見ていない見ていない見ていない………」

《目を逸らしてはいけません》

「気のせい気のせい気のせい」

《現実を見るのです》

「まぼろし。そう、あれは幻。幻覚」

《出合った現実から目を逸らしてはいけません。あなたでは千年経ってもあのお方には敵わないでしょう。あの方々との出会いは…ああ、これ以上は言えません》

「えー?運命の一つで味方なんでしょう?」

《あなたならまず無いでしょうが、間違っても横恋慕なんてしないで下さいね》

「命が惜しいもん!するわけないでしょ!」


思わず大声を上げてしまい、我に返る。


「ええ、いい心掛けです」


守護様!師匠よりこの人の方が怖いです。

霊より生身の人間の方が危険みたいですよ?


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