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25 青雲の志

歓迎会はミーティングという名に変わり、それは深夜になっても続いていた。


「ということで、まとめに入ります」


マリエルが仕切ってくれている。私達は新たな事柄を交えて今後の動きを決めていた。


「まず、忘れてはいけないのが俺達四人には守護する者が居ないということです。持っている能力とお互いの存在がその役目も果たしているということを覚えておいて下さい」


これは地球あの世が異世界へ干渉できないのだから当然であろう。


「カミーユの勘は良好ですので、ピンときたらどんな状況でも必ず伝えて下さい」

「うん、念話も有るし任せて」


私、重要じゃないですか。


「次にですが。守護する者の多くがあまりにも眠ったまま過ぎます。異常な事です。

地球でいうところの寺社、仏閣等の宗教施設を探すなどして守護する者─地球でメジャーだった言い方に変えましょうか─守護霊を起こす努力をしましょう。

最悪、『神様の御遣い』を演じ、何か興さなければならないかもしれません」

「それって、あれ?」

「そうです。あれです」

「もしすることになったら…今度は四人でしますよ。しないで済めばいいですね。ね?カミーユ」


コスプレイヤーとしては魅力的な衣装なんだけどさぁ…そうなんだよね、バレるかもしれないからしないで済ませたいなぁ。


「同業者を探すのと同時進行で。俺達ならできますよね?」


マリエルが探しても見つけられなかったって、本当に居るのか心配になってきた。でも、マリエルは出来ないとは言わせてくれないのね。出来るか出来ないかじゃなくて、やるしかないってことなんだよね。


「ジルとリコルですが。外に出る時は基本的には人型の大人でいるということでいいですね?」

「ええ。子供姿だとトラブルに巻き込まれそうですもの。美幼児を見たら構わずにはいられないはずですもの。美しく可憐で可愛い…ああ、存在自体が罪かもしれないわ」

「前半はその通りだよねー。それに、子供だと嘗められそうだしね。それが必要な時もあるけどさ」

「瞳の色は左右揃えますのでご心配なく」

「偵察する時はネコになっちゃうよー」


二人は私達と違って変身能力が残っている。でもかなり制限されているそうで、大人と子供とネコにしかなれないそうだ。

部屋の中でもたまにネコになってほしい。美しいネコになるのだから膝に乗せたり撫でさせて欲しいけど、させてくれるかな。


「カミーユ、聞いていますか?」

「はい、聞いているよ。ただ、ネコになったらちょっと触らせてほしいなぁ、なんて考えていただけだよ」


ジルがニコニコと頭を差し出してきたとおもったら───頭だけネコに変えた。こわっ、怖すぎる!サイズもネコだし、首との繋ぎ目どうなっているのさっ。


「はい、どうぞ。宜しいですわよ」


ネコの頭が喋る。ネコが笑っている。でも、目は笑っていない。


「イエ、ケッコウデス」


嫌なんですね。不気味です。ホラーです。ほら、マリエルとリコルも引いてるから。嫌ならそう言って下さい。ごめんなさい。お願いですから早く元に戻して。


「…ということになりますが、何か質問はありますか?」


質問はないんだけど、いいかな。


「あのっ」


視線が集まる。


「せっかく集まっているので、お話させて下さい」


やりたいことやっていいんだよね?ね?マリエル?彼の顔をちらりと見遣るときゅっとしていた唇が緩み本の少しだけだけど弧を形作った。大きく息を吸って吐く。


「私、アニメ歌手になります。みんな、協力お願いします!!」


静かだ。聞こえなかったのかな。何の反応もない。あれ?おかしいな。反応が予想と違う。マリエルまでがぽか~んとしている。


「歌手、ですよね?」


こういう時いち早く戻るのはやっぱりマリエルだ。


「うん。だけど、アニメ歌手」

「そこ限定ですか。何故かとお聞きしても?」


マリエルは地球の私を見ていたんだよね。この質問は、ジルとリコルの為なのかな。そうに違いない。さすがマリエルだ。


「マリエルは知っていると思うけど、私、アニメが好きなの。特に、伝説のロボットアニメとか昔懐かしいのとか。番組名やヒーローの名前がサビに出てくるやつとか、その番組のためだけに作られた曲なんかもう最高!しつこく勇気や正義をうたう曲の数々。余計なお世話ってくらい夢や希望をうたい、やたらと頑張れ立ち上がれ諦めるなと精神を追い詰めるかのような曲の数々。そうかと思えば、これ本当に子供が聞いてもいいのってくらい暗く悲しい寂しい曲だったり、どれもこれも歌っていると気持ちいいじゃない。加えて裏方っていうところが更によし。だって、どんなに酔いしれて歌っても表に顔を出さないから恥ずかしくないし、迷惑かける人も少なくて済むもの。ねっ!」

「マリエル、なんか違う」

「そうですわ。あの世で聞いていた事と似ている様で別物ですわ」

「ごめん。俺ですら騙された気がしているところです」


わかったのは、予想していたものと私の希望が微妙に、そう、微妙に違っていたということですね。


「えっと、駄目でしょうか?」


ちゃんとちまたは見ましたよ。楽器、音響設備、再生する道具、レコーディング施設その他ありましたよ。歌手が何故か『吟遊詩人』なんていう全く別の職業の名前で存在していて、勘違い厨二に吹き出してしまいましたけど。販売しているのがCDやレコードじゃなくてきれいなたまだったところなんて異世界だなぁとか思いましたよ。ラジオっぽいものもあるし、テレビっぽいものもありましたよ。今回はちゃんと調べましたから!

今度はいけます。同じ失敗はしません。


「ねぇ、カミーユ。誰も聞けないでいるから僕がきくけど。あのね、ここに『アニメーション』って存在するのかなぁ?」

「いやいや、だってアニメだよ。世界を虜にしたアニメだよ。存在しないなんてありえないよ、ね?」

「さぁ、わたしは来たてほやほやですからその辺り存じません」


私がそちらへ顔を向けるのと同時にマリエルが目を反らしたっ!!


「知っているのマリエルだけだよ。僕達ホント知らないんだからね」

「……せん」

「えっ、何?」

「ですから、……せんでした」

「往生際悪いですわよ」

「漫画もアニメもありません」


あ!本屋に漫画無かったんだった。アニメがなくても納得だ。そっか。残念。でも。


「うん、それならそれでいいの。じゃあ、歌手やる!好きな曲たくさんあるんだぁ。アニメの曲だったら独り占めして全部私が歌うつもりでいたんだけど、四人いるんだもの。曲にあった声が選べるから素敵な歌をたくさん、幅広く広められるね!皆の歌聞けるのも楽しみ!デュエット曲もバンドも何でも来いだね。すっごい夢広がる…!ん~~~~、超楽しみ、テンション上がるわ!!!!」


声が若いうちに歌える曲バンバンじゃんじゃん歌うぞ~!


「マリエル、これは予定通りのできごとなのかしら?」

「僕はやってみていいよ。ってかむしろ、張り切ってやっちゃうよ」

「俺も歌に限らず自信ありますので問題ありません。アニメ曲に限定されなくてよかったです」

「わたしだって、歌姫と呼ばれていたことだってあるんです。自信も実力もあります」


聴こえいるよ。全く心配ないじゃん。ふふ、ホント楽しみだなぁ。


「事務所やマネージャーがないからセルフプロデュースになるんだよね。こういう事はマリエルのプロデュースで行こう!」

「承知しました。俺は厳しいですよ、イロイロと」


やりたいことの為ならば厳しさなんて何のその。心に響く音を!楽しさを伝えよう!夢はでっかく、そして。


こころざし高くあれ!そうだ、グループの名前考えなくちゃ。えっと」

「志高く、ですか」

「横文字にしようよ。その方がなんかカッコイイじゃん」

「わたしはエレガントなのがいいです。清雅…ピュアエレガンスなんてどうですか?」

「え~、どこに清らかな人が居る?ですわを付けたって上品になるわけじゃないんだよ?」

「それならリコル何か出しなさいな」

「え~、それだったら、あ、さっきの志高くから、ハイアンビシャスとかどうよ?」


私以上に燃えてますね。主にジルとリコルが。


「では、そのハイアンビシャスから、『青雲の志』でどうでしょう?」

「マリエル、渋っ。オッサンくさ」

「厨二臭いのが結構あるようですし、なんといっても『ギルド』が存在する世界なんですよ」

「私はお任せします」


すいませんが名前をつけるセンスを持ち合わせておりませんので。


「カミーユが引いちゃうんだ。はぁ。ここどーせ英語通じないんでしょ。ってかどうせ翻訳されちゃうんだし。マリエルのそれでいいよ」

「四人のときは『青雲の志』でいいですわ。カミーユ、二人で歌うときは『清雅』にしましょうね」


グループ内ユニット名まで決まっちゃいました。何であれ、私が決めるよりマシでしょう。


「あ、そうそう。歌手の時はカミーユじゃなくて『心結みゆう』と名乗りますのでよろしく!」


この日、このとき、私達の『青雲の志』が結成された。



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