24 想い
帰ってきた私達は思いの外すんなりと許してもらえた。二人も私達に日時がある事は理解していたし、調子に乗り易い質である事も十分自覚している為、外出する事で余計なトラブルを招くかもしれないとちゃんと分かっているからだ。
今夜は二人の歓迎会をすると言ったら、それだけで上機嫌になってくれた。
歓迎会の準備は四人で行い、会もこれまでのこちらの状況を語る報告会の様なものになっていた。
実際、私以外の三人は仕事で来たのだから当然の流れなのかもしれない。
「それはそうと。俺が転移した後、何かトラブルでもあったのですか?君達が来るまでに時間が掛かりましたけど」
ジルとリコルは不思議そうな顔をして私を見る。
「そうなの?」
リコルがコテンと首を傾けた。―という事はさほど時間を、日を置かずに来てくれたという事なのだろうか。
「えっと、そうだね。マリエルが来てから、もう3ヶ月位経っているかな?」
「そうなのですの?」
「ええ。俺が着いたのが、カミーユが召喚された翌日?でしたか」
「うん、多分そんな頃かな」
時間の流れ方が違うというよりも、転移する事で時間軸がずれるのではないか。という事は、この星に居る私の他の地球人は様々な時代の人が入り交じっているという事なのだろうか。
いや、国によって召喚する人の時代に偏りがあるのかもしれない。
聖国ショイホーチ…旧オーカム王国の神子達は、あの容姿や施設の名前の付け方の厨二具合を考えると、ここ150年位?の人が連れて来られていたのかな。まぁ、この辺は私の憶測であり可能性の話として、頭の片隅にでも置いておこう。もっと細かい事をマリエルが知っているだろうし。
「君達は、こちらで使用可能な能力って何がありますか?」
あ。大事だね、それ。うん、しっかり聞こう。
「わたしは、肉体・身体的な超・能力でしょうか」
「僕も同じだね。対自分に対するもののみだね」
二人の言葉にマリエルが頷く。
「分かりました。ということは基本、大規模な浄化はカミーユ頼みですね。俺も現在はカミーユの5%程度ですし」
「あれ?マリエル、前に2割くらいって言っていなかった?」
「ああ。あの時よりカミーユの能力が浄化に特化してですが、おそろしく上昇しています。自覚ありませんか?」
そうなの?全然そんな感覚ありませんでした。
「カミーユ比5%ですが、あの世の自分比20%ってとこです。俺個人の浄化力じゃ大して役に立ちませんね、非常に残念ですが」
いやいや、そんな事よりも。
「私、分からないんですけどっ!」
「「「?」」」
だから、いやいや。ちょっと待って。まるで私がアホの子みたいなその反応…いたたまれない。
耐え切れず自室へ飛び込む。あー、寝室に入ればよかった。布団を被りたい。
ああっ、もうっ、恥ずかしいったらない。
布団がないので、クッションを抱えてソファに丸まった。
◇◆◇
「わたし達やりすぎてしまった…かしら?」
「だね」
「ですね」
「「「…」」」
俺も悪かったんだろう。俺はあの説明でも理解できた。ジルとリコルはからかうつもりだったのか、俺達へのささやかな仕返しのつもりだったのだろう。
会えて嬉しくなり過ぎて、少し加減を間違えてしまった…そんな感じなんだろうな。
「ワザと分かり難いように言ったのに。どうしてマリエルは分かったのかしら?」
ジト目で見てくるが、そんなに不愉快だったのか?だとしたら酷い言い掛かりである。
「出発点が同じなのですよ。理解するのはた易いことです」
「ほんのちょっとイジワルして笑ってやろうと思っただけだったのにな」
しょぼんとしている二人をつい可愛いと思ってしまう。
大人の姿とはいえ、俺より低い彼らの肩を抱く。
「カミーユ怒ったかな」
「許してくれるかしら」
心の中でふふっと笑う。そんな心配するくらいなら最初からイジワルなんかしなければいいのに。
助け舟を出してあげましょうか。
「恥ずかしくて思わず飛び出しただけでしょう。さぁ、呼びに行きましょう」
肩の手をポンポンとする。
少々生意気なところもあるが、俺達を兄や姉のように慕ってくれる信頼できる仲間。
彼らのこの気安い態度は親愛故だろう。
心底腹が立つこともあるが可愛い弟分と妹分だ。
「気まずいわ」
「反省してる」
まぁ、この件はすぐに片付くからいいとして。
それよりもカミーユは今度は何を選ぶだろう。
俺はカミーユが進む未来を想像して頬を緩ませた。
◇◆◇
少しだけ緊張する。…コンコン。…応答が無い。再びノックする。…コンコン…。
「……入ってます」
何だか微妙な間のあと、カミーユがドアを開けてくれた。
「ちょっと、どっち?トイレじゃないんだから3回叩きなさいよっ」
変な笑顔?で迎えてくれた。怒ってる?僕とジルはカミーユの前に並ぶ。
「先ほどはごめんなさい」
「ゴメン。イジワルだった」
カミーユは「何の事?」と瞬きしている。
本当だ。マリエルの言うように怒ってなんかいなかった。
その彼女がはたと我に返る。
「あー、もうっ。恥ずかしかった~!せっかくの歓迎会なのに飛び出してゴメンね。三人共怒ってる?」
上目遣いでもじもじと心配そうに僕達の様子を窺っている。返事をしない僕達に、
「ごめんねっ。あのねっ、私だけ言われている事の意味が理解できなくて恥ずかしかったの。
ごめんね。…ねぇってば!」
「謝るのはわたし達です。わざと解りにくく申しましたの」
「えっ、そうなの?なぁ~んだ。特別私の理解力が乏しいわけじゃないんだね。安心したよ」
「そうそう。マリエルが異常なんだよ」
マリエルにジロリと睨まれる。うっ、鳥肌が。
「そういう事ですので戻って続きをしましょう」
カミーユはマリエルが差し出した手に照れることなく自分の手を伸ばしている。
いつでも変わらない二人にケッという思いと安心感を覚える。
「じゃっ、ちゃんと説明するから早く行こうぜ」
僕は三人を急かして、自らも軽い足取りで後ろに続いた。
◇◆◇
あの時、わたし達はよくもまぁ言葉を発することが出来たと思う。褒めてあげたい。
わたし達二人共笑顔で対応したけど、その時、わたしジルとリコルは緊急事態に備えて一時的に念話のパイプの強度と感度をあげてもらってあり、身体が別々の場所へ跳ばされない様にしっかり結ばれ、お互いの心は自分の心の中を見るのと同じで…。
『冗談だろ、マジで?ヤッてる最中じゃんっ』
『いや~~~!っ!!裸っ、裸っ、早く隠して~~~!!!』
『ボクどうしたらいいんだよっ』
『わたしだって判んないわっ』
お互い気が動転して、心の中では「うわ」だの「ぎゃ」だのなんとも言えない言葉と気持ちが交錯しまくりである。
『ゲッ。一瞬だけどマリエルのアレが見えた。げ~』
『アレとか言わないでっっ。ああっ、カミーユっ、膝っ、早く寝かせて!』
『オワッ、エッ、あ、ジルがそんなこと言うからカミーユの見ちゃったじゃんっ』
カミーユがわたし達の間をすり抜けてマリエルの元へ移動してくれる。
『助かったわ』
『ボク、なんか色々混乱中』
とりあえず子供の姿から大人の姿に変化しておく。わたしを見てリコルも姿を変える。
それと同時に念話が切れた。通常モードに戻ったようだ。
目印が安定している状態で転移するはずだろうから予想では部屋で眠っているところにでも飛び込むことになると思っていたら、まさか情事の最中とか、ないでしょ。
衝撃であり笑劇であった為、悲しいことに脳裏にしっかり焼きついてしまった気がする。
『ああ、わたしもう休みたいわ』
『僕だって』
カミーユとマリエルに気付かれないようにこっそり溜息をついた。




