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11 回顧

中止を中止しました。


今日からまた続きをちまちま更新していきます。

さとうにしてはの、やや増量です。


引き続きよろしくお願いします。



*ファンタジーから恋愛に変更しました。

聖国の街へやってきたのだけど。

前に来たときより人が多いせいもあるが、ちょっと人目が気になる。


「カミーユのスカートが短いからです」

「マリエルがかっこ良過ぎるからだよ」

「「…はぁっ」」


二人で手を繋いで歩いているが、チラチラ見られるのである。

ちょっと恥ずかしそうに見てくる目や品定めする様な目など感じが悪い。そんな視線に晒され、そろそろ嫌気が差してきた。

自分たちと街の人達とを比べるけど、理由がさっぱり分からない。


「ねぇ、マリエルー。もう帰る?」

「このまま帰ると、次回も同じ失敗をすると思いますよ」

「何で見られているんだろうね。私達何がだめなの?観光客が珍しいだけ?もうーなんかやー!」


ちょうどすれ違ったおばさんが私の声を聞き取ってくれた様で足を止めてくれた。


「ちょいとお嬢さん」

「はい、何でしょうか?」


初めて声をかけてもらえた。うわっ、結構嬉しい。


「お嬢さん、そんな短いスカートはいているけど、春を売っているわけじゃないんだよね?」

「違いますよ。彼女は俺の恋人です。旅行中でして、観光中なのですが。…何故かご存知ですか?」


私の代わりにマリエルが受け答えする。おばさんは苦笑しておしえてくれた。


「この国では、そんなに足を出すのは春を売って食べててるだけなんだよ。商売を始めていいのは、夜7時からだから、その時間までは彼女達も足は出さないしね。だから、こんな時間から売ったり買ったりしてるっていう風に見られているんだよ。好奇の的さ」


知らないって怖い。教えてもらえて感謝である。それにしても、私、春なんて売ってません!

うわぁ、そういう目で見られていたんだ。

お金には困ってますけど、売るほど緊急は要してませんから。


「ご婦人ありがとうございます」

「ああ、それと。異国じゃ普通らしいけど、その、手を繋ぐのもハレンチって思う人もいるんだよ。

昔より減ったし、若い子達は喜んで受け入れているけどね。

それと、お兄さん。こんな街中歩いているから多分違うだろうけど、そんな良い格好しているのは旧貴族かお偉いさん位だよ。とにかく悪目立ちするから、他に服があるなら急いで着替えに戻ったほうがいい。

アタシ個人としちゃ、お嬢さんとお兄さんみたいな美男美女がその格好で手を繋いで堂々とあるくその姿良いと思うけどね。じゃ、気をつけて帰りな。あ、お嬢さん、膝が隠れるくらいなら問題ないよ」

「ありがとうございました。気をつけます」

「ありがとう、おばさん!」


親切なおばさんのお蔭で理由が分かった私達は急ぎ足で細い路地へ入って行く。人目がないのを確認して、そのまま部屋へ戻った。




外でしてきた作業がアレだったので、二人ともシャワーを浴びる。

こういう事もあると思っていたので、浴室とは別にシャワー室を複数作った。マリエルの部屋に1つ、寝室に1つ、浴室の隣に1つである。

すっきりさっぱりした所で、今度こそ本気で会議をすることにする。

前日は会議する資料すら無かったんだから、満足のいく内容だったわけがない。ものすごく適当だったっていう自覚もある。

この世界で生きていかなければならないのに、その覚悟がまだ無かった。だから、知ることを簡単に放棄して。でも、ちゃんとやっているっていう体を欲して、任をこなそうとして動いた。

本当にこれじゃいけない。知りたいこと、ごまかしていた事を知っていこう。

だから、マリエルと向き合う。カミーユと心結と向き合う。受け止めきれないかもしれないけど、一人じゃない。

強く心に決めて、席に着いたマリエルを見つめた。


◇◆◇


シャワーを浴びながら思い返す。


今回はカミーユに特任が下りたため一緒に生まれることができなかった。カミーユが任地に赴いたら俺も向かうためだ。カミーユの他に『特務課』から他に九人、そして『異世界支援チーム』から500人がカミーユと同じ年に地球に下りた。

カミーユに任が下された頃、俺は丁度『死神課』の応援に借り出されていて、カミーユとは別々の仕事をしていた。


応援の任期が終わる頃に大きな災害があり、延長されて、カミーユの見送りに間に合わなかった。

本来ならそれまでに特務課に戻り異世界支援チームや特務課他の人同様、相棒と魂を同調させ、魂にしっかりと目印を施し、使える能力の打ち合わせもして、転移の際は相棒も同時に転移される様になっているはずであった。だが俺達は事前に準備をすることができなかった。人手がまったく足りないわけじゃないので、本来ならそこまで準備ができていなければ任を取り消していいはずであった。

…が、拝命したカミーユが異世界に行けそうな気がすると感じてしまったのである。

そう感じたのであれば、9割9分異世界に引き寄せられてしまうだろう。その位、カミーユの勘はいいのである。

リーヤ課長と大慌てで準備をした。カミーユが胎児のうちに、できるだけのことをした。

カミーユの勘に信頼を置く俺達は、向こうで少しでも安全に任務をこなせるように、俺の次に同調させやすいジル・リコル・ユリウス・エンジュ・リーヤ課長も異世界に行けるようにしようとした。

だが、あの世に帰ってきたばかりのユリウス・エンジュ・リーヤ課長は仕事が溜まっており、ジルとリコルだけをなんとか繋いだ。

異世界に行く可能性が高いカミーユの相棒である俺はいつでも対応できるようにカミーユを見守っていた。

カミーユが成長し花開く姿を常に見守っていた。常に見ているからこそ、その花と並べない今の自分を寂しく物足りなく悲しく悔しく待ち通しく思っていた。異世界に行けば、またカミーユと並べる。

俺はその時を、本当に本当に心待ちにしていた。

そんな想いもリーヤ課長の能力の前では筒抜けであったはずだが、課長は後手に回ったことで払拭できない、能力の不足部分を補うために上役に掛け合い力を借りて、いざという時は部屋を使えるようにしたり尽力していた。頭が下がる。


「マリエル、覚えておいてほしい。記憶は全部戻すわけじゃない。

カミーユであるということ、サポートメンバーや特務課など任務に絡むこと、その程度だ。

人間が許容できる量なんてたかが知れているからな。

だから、カミーユだと思うより、心結という人格を尊重してやる方がいいだろう。

ただ、身体は能力を使用する都合上カミーユの方が望ましいので、形はカミーユになる。身体能力は心結のままだが、おそらく問題ないだろう?」

「ええ。でも面白いんですよ、課長。心結の回りはハイスペックが多過ぎて、心結が普通に見えてしまうんですよ。

だから、本人に自分もハイスペックだっていう自覚がないんですよ」


俺が持つ下界を映す映像を見て、リーヤ課長が顔を引きつらせている。

心結の友達は笑顔だが、クラスメイトの顔は酷いものだ。心結本人は周りに頓着していない。


「心結どうだった?」

「1つ位1番になりたかったー」

「どれどれ?」

「100m走が14秒52、走り幅跳びが4m10cm、100mハードルが16秒79、斜め懸垂60回…。

うわぁ、確かにまだまだだね」

「うーっ」

「ほら見てみっ。あたしは100m走が女子唯一の12秒代で1番!」

「わたしは走り幅跳びが4m88cm!あと2cm跳びたかったわ」

「まだ測定してないやつ頑張りな!心結の高跳び168cmってひっくー(低い)、超笑える~」

「だって~、ベリーロールも背面とびも怖くて、挟み跳びしかできないんだもーん」

「斜め懸垂は100回位できなきゃ!」

「女の子の細腕にそこまで望む人はあんまりいないはずだよっ」


きゃいきゃいとやっている少女達をみる。リーヤ課長はまだ釘付けのままだ。心結が減りそうなので呼び戻す。


「どうですか?面白いでしょう?文化部に置いておくのが勿体ない身体能力です。

友人は超人ですよ」

「だよな。中3女子のスペックじゃないだろう」


手先も器用で縫い物や編み物は得意なようだ。音楽も大好きで歌ったり楽器を演奏したりしている。友達と踊って激しく体を動かしたかと思えば、翌週にはイラストや漫画を描いている。そうかと思えば、友人とお菓子を作ったりもする。

好奇心と趣味の広さに、彼女の将来が楽しみで仕方ない。

この先、どんな女性に成長していくのだろう。

彼女の幸せを祈りつつ、彼女の幸せと平和が壊される『異世界召喚』のその日を待っていた。

俺自身にやれる事は少なかったが、常に万全で待機していた。



《『異世界支援チーム』より連絡。召喚反応有り。至急集合せよ》



心結が歩く姿を見ながらチームに合流する。

相棒が下界に居る誰もが、各々映像を見ている。

チームの誰かが運良く召喚される可能性は凄く低い。心結と同期の510人だけじゃなく、その後、5年おきに510人ずつ下りている。

誰か当たるかもしれないが、任務外の誰かの方が圧倒的な確率で引く確率が高い。

多くの目が見守る中、カミーユを知る何人かは、心結が当たると信じ、俺の周りで一緒に見守る。


『きたっ』


映像から心結が消えた。

俺は取り残された。


「心結っっ!!」


その声に、視線が一斉に集まる。


「何故転移しないのですっ。心結っ!心結っ!!」


わめく俺の声に周囲は事態を知る。

失望と怒りにのまれている俺をジルとリコルがなだめる。焦る気持ちは治まらない。

リーヤ課長達が総出でチェックしていく。はやる心は、まだかまだかと周りを急かす。


「マリエルの回路を優先してチェックしろっ」

「カミーユの安全を最優先しろ!緊急時の部屋の使用許可は出ている。

マリエル達を送れるかどうか分からないのだから、こちらが優先だ」


リーヤ課長の言葉に固まる。嘘だと言ってくれ。


「俺は行けないかもしれないんですか?」


知らない間に握り締めていた手と噛み締めていた唇から血が滴っている。


パァン…パァンパンパン


『えっ?』


頭がグラグラする。目の前には、何時来たのかユリウスとエンジュとリーヤ課長が立っている。


「マリエル、終わったぞ。今度こそ行けるぞ、準備しろ」

「こんなでカミーユ任せて大丈夫なのかしら?」


…1発目がユリウスで、2・3・4発目はエンジュの様だ。

手荒い。有難くて涙が出そうだ。


「マリエルの後にジルとリコルも送る。頼むぞ」


リーヤ課長が俺の肩に手を置いた。その手は力強く、食い込んで痛かったが、熱い気持ちは届いた。


「マリエルさんっ、マーカー感知しました。同調開始して下さい」

「マーカー弱まってますっ。急いで!カウント5から!5・4・3・2・1…」




目の前には、スヤスヤ眠るカミーユが居た。

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