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友輝は顔もいいんだけど性格も百点満点。どんなときでもにこにこしてて、色んなジョークをとばしてみんなを笑わせたりする。スポーツもできて勉強もできる。すごくカンペキな人間だ。こわいくらいに。
友輝と仲良くなるまではそんなことぐらいしか知らなかったけど、今年同じクラスになってつるむようになってから印象は変わった。周りには秘密にしているが、あいつには一風変わった趣味があるのだ。
「佑」
「何?」
友輝の顔が急に真面目になった。声も一転して低い。顔は前を向いているというのに、視線はどこか別世界を見ているように焦点が合わない。
「お前、ちょっと今日元気ない?」
バレた。隠そうとしていたのに隠しきれていなかった。
「殺人事件のことと関係ある?」
ギクリとした。今まで余裕で構えていた身体が、見えない糸でくくられて一気に強張ってしまったみたいだ。心臓はどくどくとアップテンポの拍子を刻み、背中には冷たい汗がひやりと流れた。
「うん、それもあるかも」
苦し紛れに絞り出した。嘘はついてない。
僕は不審がられてはいけないのだ。