6/10
6
もう僕は安全圏にはいないのだ。「もう」ではなくはじめから僕は安全ではなかった。昨日、悟った。
でももしも昨日あのことに気づいていなかったら?
とんとん、と肩を叩かれた。
佑おはよう、と声をかけてきたのはクラスメートの新井友輝だ。背が僕より数十センチ高く、ひょろっとしている。日焼けでチョコレートみたいな色をした肌に、真っ白な歯がにこっと笑う。
「なんかまた黒くなった気がする」
そう言うと、友輝は自己破産をしたサラリーマンのように絶望的な表情を見せた。
「ええーちょっと、マジで?」
しかも大げさに頭まで抱え込んでいる。
「もしかして昨日も試合とか?」
「そのもしかしてだよ。ああ、また焼けちゃった」
友輝は日焼けすることをすごく嫌がる。
僕が女々しいなと茶化したら、今ドキの色白草食系イケメンになりたいのだと答えてくれた。
そんなことを言う友輝だが、顔は割りと整っている。鈍感で気づいていないのか、友輝は自分がモテていることを知らない。