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煌天の蒼月 第2部  作者: 天空朱雀
第3章 狙われた乙女
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第1話

「あ~腹減ったメシメシ!」


廊下中に響き渡りそうな大声を張り上げるのはユトナだ。

まだ早朝だというのに朝から元気なものである。


そんなユトナを横目で見やりつつ、彼女の隣を歩くのはソルマ。


「教会で生活している人達は皆、教会内にある食堂を利用しているんだ。王子の護衛の任に就いているとはいえ、あんたにも食事の時は其処を使って貰う。勿論、王子の護衛を優先する際は其方に合わせる形になるだろうが」


「皆で一緒にメシ食うってのもわいわいしてて楽しそうだよなー! つーか何食おうかな~」


お腹を摩りつつ、何を食べようとかとご満悦な様子のユトナ。

そんな上機嫌のユトナとは対照的に、2人の背後をのそのそと重い足取りで歩くシグニスと言えば眠気眼をしきりに擦っている。


「あー…とりあえず大声で喋んねぇでくれ、頭に響く…。つか何で朝からそんなテンション高いんだよ…」


「そういうシグのテンションが低すぎるだけだろ…。大体、夜明けまで飲んでいたのが原因じゃないのか?」


「いいんだよ教会でクソ真面目に騎士やってたら息抜きしたくなるんだから」


「いやいやどの口が真面目とか言うんだよ」


「何を言う、オレより真面目な騎士っていると思うか?」


「……それはツッコミ待ちか?」


「あははっ、オマエら仲良いんだな息ぴったりじゃん」


「いや、仲良くないから」


「うわぁそんな即答しなくても。ソルに嫌われてオレかなしーなー」


「嘘つけ」


ソルマとシグニスの小気味よい掛け合いを眺めて楽しそうにけらけら笑うユトナ。

ユトナの言葉を即座に否定し盛大に溜息を零すソルマであったが、ふと視線を逸らした先に1人の少女の姿が映り込む。

すると向こうもソルマの視線に気づいたのか、目線を彼の方に向ければ何を思ったのか一同の方へととてとてと歩み寄ってきた。


少女は一見すると年齢は10代半ば程で、ユトナより若干年下といった所か。

ふわふわとしたおかっぱが可愛らしく、左右で色の違う──所謂オッドアイというものだが──が特徴的な少女だ。

だが、それよりも目を引くものとは彼女の頭に生えている犬のような耳と尻尾だ。

恐らくこの少女、犬の獣人なのだろう。


ユトナは彼女を珍しそうな眼差しで見遣る一方、シグニスは彼女に見覚えがある様子。

ちなみに犬の獣人の少女はシスターのような格好をしている所から、恐らくは教会で暮らしているシスターの1人と思われる。


少女が此方に近づいてきているのに気づくと、シグニスは軽く手をひらひらさせてから爽やかな笑顔でこう話しかけた。


「お、ルシカちゃんじゃねぇか。どうかしたのか? ってかお姉ちゃんはどうした?」


「あのね、お姉ちゃん…どこにいるのかな?」


「…ん? もしかして姉ちゃん探してんのか?」


「えーっと…ここ、どこ?」


「……、もしかして、迷子か?」


「うーん…そうかも?」


ぽえぽえした独特のペースと世界観を醸し出す少女──ルシカに若干戸惑いを感じつつ、どうやら彼女が迷子になっているらしい事を察するシグニス。

しかし、シグニスにそう指摘されてもきょとんと小首を傾げている辺り、どうやら本人は迷子の自覚がまるで無いらしい。


「ん? じゃあオマエもオレと同じでどっか別の所から此処に来たのか?」


「んーん、違うよ。ずっとここでお姉ちゃんと一緒にいたもん」


「え、マジか? なのに迷子なのかよ? …まぁオレも寄宿舎とか詰め所で若干迷子になる事あるけどなー」


信じられない、と言った様子で最初はぎょっとしていたユトナであるが、自分の行動を振り返って無駄に納得してみせるユトナ。

教会で暮らしているのに迷子になっている辺り、この少女なかなかのツワモノのようである。

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