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姉の代わりに謝罪に行ったら求婚されました

作者: 井上さん
掲載日:2026/08/21

名前を借りました


フィクションです

 また、やらかした姉ファラド。


呼ばれたお茶会で、バッファ侯爵家の令嬢ジュールを侮辱したのだ。


「私のヘンリー様よ!無理矢理婚約したんでしょ!ブスのくせに!返しなさいよ!」


 と言い、階段から突き落とした、らしい。


普通に犯罪である。


 姉が何かやらかすたびに、私が謝罪に行かされる。


いい歳(成人年齢は18歳で姉は19歳)してるんだから、自分の責任は自分で取ってほしい。


 あと、ラジアン侯爵家の子息ヘンリー様は、お姉様のものではありません。

ヘンリー様とジュール様の婚約は、当主同士が決めたもの。ジュール様に文句を言わないでください。






 今回も、妹の私クーロンが代わりに謝罪しに行く事が決定した。


姉が私に「行け」と言えば、両親も私に「行け」と言う。

 幼子ではないのだから、自分で謝罪に行かせれば良いのに…そもそも、お姉様がやらかさなければ良いのでは!?


馬車に乗り、ツラツラ考えていた。




 先触れを出していたバッファ侯爵家の邸に着いた。


 伯爵家の我が邸と違って、広くて豪奢だった。

さすが有力貴族の邸である。我が邸とは大違いである。


 当主ではなく令嬢のお兄様が対応するらしい。お兄様は、妹を大事にしているという噂である。うちの姉とは大違いである。

さぞご立腹だろう。怖いなぁ。


 応接室に案内された。


「君は…!」


 応接室に入ってきた男性が、私の顔を見て固まった。

ジュール様の兄上様だろう。ジュール様も美人だが、兄上様もかなりの美男である。


 私は立ったままだった。

男性に挨拶した。


「オーム家のクーロンと申します。このたびは、姉が、妹君にご無礼を働き暴言を吐き、階段から突き落とし、怪我をさせてしまい申し訳ありません」


 私はお詫びの菓子折りをテーブルに乗せ男性の方へ押しやり、頭を下げた。


「…まずは、座ってくれ。お茶を用意させよう」


 動揺がおさまったのか、男性に促され、ソファに座った。

フカフカなソファだ。我が邸とは…以下略。


「私はジュールの兄のジーメンスだ」


 男性が名乗った。


「このたびは誠に申し訳ありませんでした」


 私は、座りながら、また頭を下げた。


「妹から聞いている。君はいつも妹に、姉の所業を謝罪して、優しくしてくれた、と。ありがとう」


 ジーメンス様が言った。


「いいえ…姉のした事は許される事ではありません」


 私が言うと、ジーメンス様はしばらく考えていたが。


「君は何もしていないのに、姉の代わりに謝罪に来たのか?」


 まぁ、普通はそう思うだろう。

謝罪に行った先でも言われた。


両親と姉だけが気にしていない。どうかしている。


「姉の代わりに謝罪に行けと、姉と両親から言われまして…」


 何で私が謝罪に行かないといけないのか…と、最初の頃は思ったが、もう気にしていない。10日に1回は謝罪に行っている気がするから。


…姉を幽閉するべきでは?

外に出すから問題を起こすのだ。


「本当に悪かったと思っているのか?」


 ジーメンス様が真顔で言った。


「はい」


 私も真顔で頷いた。


「では、責任取って私と結婚しろ」


「え???」


 冗談かと思ったが、ジーメンス様は真剣な顔をしている。


まじか?

まじで?

マジだ。


「本当に悪かったと思っているのだろう?」


「はい」


 私は神妙に頷いた。


「では、責任を取るべきだ」


 相手は身分が上なので、抵抗しない。


「はい。それでお気がすむのでしたら」


 私の返事に、ジーメンス様は、しばらく考えていたが


「…君は、いつも姉の代わりに謝罪に行くのか?」


「はい」


 行かないと殴られて、ご飯抜きです。とは言えない。


 ジーメンス様は、また考えてから


「邸に帰ったら何をされるか分からないから、このままここにいろ」


「え?」


 殴られて、ご飯抜きが聞こえた!?




結局そのまま、私は侯爵家に住む事になった。


なんでだろ〜?なんでだろ〜?




 私が、妹君のジュール様とお茶を飲んでいる隙に、私の実家に行って、父に婚約の書類にサインさせてきたらしい。

ついでに、絶縁状にもサインさせたらしい。


 今後何があろうと、私と実家には関わりが無い。


 それから、侯爵邸に私の部屋と、着替えなども用意してくれた。


仕事のできるお兄様だ。



…ん?婚約?

ジーメンス様が私の婚約者?


 お姉様が荒れ狂う姿が見えた。

高位貴族で美男が好きなお姉様。

ヘンリー様も、そうだった。



 お姉様、これは不可抗力です。お姉様の代わりに謝罪に来たら、いつの間にか婚約する羽目になったのです。

私のせいではありません。



 私は、考えるのを放棄した。






 ジーメンス様の予想通りというか、期待を裏切らない頭の悪い幼稚なお姉様というか、私達の婚約披露パーティーで、招待されていないお姉様がやって来た。



…誰だ邸に入れたやつ。お姉様と両親は出入り禁止だぞ。



 見ると、男爵令嬢と一緒にいた。

伯爵家の立場を利用して脅したのね。


 お姉様は、身分が下の貴族には強く出るのよね。

身分が上の筈のジュール様の事は、年下だからか侮っていて、下に見ているけど。


 身分は上なんですよお姉様。


「妹じゃなくて私と婚約してください!」


 お姉様は、ジーメンス様に迫った。


「お前は私の大切な妹を侮辱した挙句、階段から突き落とした。それなのに自分で謝罪せず妹に謝罪をさせた。

お前には処罰が必要だ」


 ジーメンス様が冷たく言った。


「どうして?ブスの妹と婚約するより、美人の私と婚約した方が良いに決まってるでしょ!」


 その前に謝りなよ。


「性格がブスだな。顔に、性格の悪さが出ているぞ。美人なのを自慢して、周りを見下し、我儘放題。勉強もせず中身も空っぽで、誰が嫁にほしいと思う?

よく鏡を見てから来い」


 おぉ!そこまでハッキリと言う人は初めてだ。


「妹に私の悪口を言われたんですか!?」


 言わなくても本性がバレていた件。

バレてないと思っていたのねお姉様。よく見れば、誰にでも分かると思う。


「お前は、成人しているのに自分がした事の責任も取れない。まずはジュールとクーロンに謝罪しろ」


 ジーメンス様の言葉に反発するお姉様。


「嫌です!」


 嫌ですじゃないんだよお姉様。


「お姉様、我が家は伯爵家、こちらは侯爵家ですよ」


 私が言うと


「妹のくせに!!」


 お姉様が私に殴りかかってきた。


「私の大切な婚約者に手を出したな!」


 ジーメンス様がお姉様の腕を掴んだ。

駆け寄ってきた騎士に


「こいつを牢へ入れておけ」


 と命令した。


「私は姉です!」


 藻掻きながらお姉様が言ったが


「もう絶縁しているから、赤の他人だ」


 冷たくジーメンス様が言った。 


「何ですって?」


 お姉様は驚いていたが、騎士に引き摺られながら


「ジーメンス様は私のものよ!」


 と叫んだ。


「お姉様、ヘンリー様もジーメンス様も、お姉様のものではありません。いい加減、現実を見てください。お二方共、婚約者がいますし、お姉様は眼中にありません」


 私は言い聞かせるように言った。


「妹のくせに生意気なのよ!」


「言っても理解できないのなら仕方ないですね。さようなら、ファラド様」


 血の繋がりはあるが、もう、戸籍上はお姉様ではないし。


何か叫びながら、騎士に連れて行かれた元お姉様。


「皆の者、騒がせて悪かったな」


 侯爵様が仕切り直した。


お姉様を連れてきた男爵令嬢は、脅されたとはいえ出禁のファラドお姉様を連れてきたので、退出させられた。


 ちなみに門番に、お姉様を通して良いと言ったのはジーメンス様だった。


 この場で断罪するつもりだったのだという。




 私は、ジーメンス様の婚約者として紹介され、沢山の人から祝福された。




 お姉様は、バッファ侯爵家に無礼を働いたので、修道院へ押し込まれた。

とても厳格な修道院で、監視も厳しく、生涯出られない。

 反省もしていないのだから、罰も厳しくなるというもの。


 両親は、お姉様の我儘や他家へ無礼を働くのを放置していたのと、私に謝罪させていたので、バッファ侯爵家に睨まれた。

 侯爵家に睨まれたら、他の貴族からも距離を置かれる。苦しい状況になったが、自業自得だ。






「これで、何の心配もいらなくなったな」


 何故か、花盛りの庭でジーメンス様と二人きりでお茶をしている。


色気割り増しのジーメンス様が微笑んだ。


…顔が良い。

自分が顔が良いのが分かってやっているな。


「謝罪の為に求婚した訳では無いからな」


 ジーメンス様が言った。


何やて、く…以下略。


「君はいつも妹に、姉の所業を謝罪して、優しくしてくれた、と妹から聞いていて、会ってみたいと思っていたのだ。実際に会ってみたら、誠実で可愛らしい。だから、謝罪にかこつけて求婚したのだ」


 何ですと〜!?


「今まで苦労した分、幸せになれ」


 満面の笑みで言うジーメンス様。

後ろに薔薇が舞っているな。幻覚かな。


 でも、美男は見慣れたらどうにかなる。


「ありがとうございます」


 私はジーメンス様に笑顔で言った。



読んでいただきありがとうございます

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