姉の代わりに謝罪に行ったら求婚されました
名前を借りました
フィクションです
また、やらかした姉ファラド。
呼ばれたお茶会で、バッファ侯爵家の令嬢ジュールを侮辱したのだ。
「私のヘンリー様よ!無理矢理婚約したんでしょ!ブスのくせに!返しなさいよ!」
と言い、階段から突き落とした、らしい。
普通に犯罪である。
姉が何かやらかすたびに、私が謝罪に行かされる。
いい歳(成人年齢は18歳で姉は19歳)してるんだから、自分の責任は自分で取ってほしい。
あと、ラジアン侯爵家の子息ヘンリー様は、お姉様のものではありません。
ヘンリー様とジュール様の婚約は、当主同士が決めたもの。ジュール様に文句を言わないでください。
今回も、妹の私クーロンが代わりに謝罪しに行く事が決定した。
姉が私に「行け」と言えば、両親も私に「行け」と言う。
幼子ではないのだから、自分で謝罪に行かせれば良いのに…そもそも、お姉様がやらかさなければ良いのでは!?
馬車に乗り、ツラツラ考えていた。
先触れを出していたバッファ侯爵家の邸に着いた。
伯爵家の我が邸と違って、広くて豪奢だった。
さすが有力貴族の邸である。我が邸とは大違いである。
当主ではなく令嬢のお兄様が対応するらしい。お兄様は、妹を大事にしているという噂である。うちの姉とは大違いである。
さぞご立腹だろう。怖いなぁ。
応接室に案内された。
「君は…!」
応接室に入ってきた男性が、私の顔を見て固まった。
ジュール様の兄上様だろう。ジュール様も美人だが、兄上様もかなりの美男である。
私は立ったままだった。
男性に挨拶した。
「オーム家のクーロンと申します。このたびは、姉が、妹君にご無礼を働き暴言を吐き、階段から突き落とし、怪我をさせてしまい申し訳ありません」
私はお詫びの菓子折りをテーブルに乗せ男性の方へ押しやり、頭を下げた。
「…まずは、座ってくれ。お茶を用意させよう」
動揺がおさまったのか、男性に促され、ソファに座った。
フカフカなソファだ。我が邸とは…以下略。
「私はジュールの兄のジーメンスだ」
男性が名乗った。
「このたびは誠に申し訳ありませんでした」
私は、座りながら、また頭を下げた。
「妹から聞いている。君はいつも妹に、姉の所業を謝罪して、優しくしてくれた、と。ありがとう」
ジーメンス様が言った。
「いいえ…姉のした事は許される事ではありません」
私が言うと、ジーメンス様はしばらく考えていたが。
「君は何もしていないのに、姉の代わりに謝罪に来たのか?」
まぁ、普通はそう思うだろう。
謝罪に行った先でも言われた。
両親と姉だけが気にしていない。どうかしている。
「姉の代わりに謝罪に行けと、姉と両親から言われまして…」
何で私が謝罪に行かないといけないのか…と、最初の頃は思ったが、もう気にしていない。10日に1回は謝罪に行っている気がするから。
…姉を幽閉するべきでは?
外に出すから問題を起こすのだ。
「本当に悪かったと思っているのか?」
ジーメンス様が真顔で言った。
「はい」
私も真顔で頷いた。
「では、責任取って私と結婚しろ」
「え???」
冗談かと思ったが、ジーメンス様は真剣な顔をしている。
まじか?
まじで?
マジだ。
「本当に悪かったと思っているのだろう?」
「はい」
私は神妙に頷いた。
「では、責任を取るべきだ」
相手は身分が上なので、抵抗しない。
「はい。それでお気がすむのでしたら」
私の返事に、ジーメンス様は、しばらく考えていたが
「…君は、いつも姉の代わりに謝罪に行くのか?」
「はい」
行かないと殴られて、ご飯抜きです。とは言えない。
ジーメンス様は、また考えてから
「邸に帰ったら何をされるか分からないから、このままここにいろ」
「え?」
殴られて、ご飯抜きが聞こえた!?
結局そのまま、私は侯爵家に住む事になった。
なんでだろ〜?なんでだろ〜?
私が、妹君のジュール様とお茶を飲んでいる隙に、私の実家に行って、父に婚約の書類にサインさせてきたらしい。
ついでに、絶縁状にもサインさせたらしい。
今後何があろうと、私と実家には関わりが無い。
それから、侯爵邸に私の部屋と、着替えなども用意してくれた。
仕事のできるお兄様だ。
…ん?婚約?
ジーメンス様が私の婚約者?
お姉様が荒れ狂う姿が見えた。
高位貴族で美男が好きなお姉様。
ヘンリー様も、そうだった。
お姉様、これは不可抗力です。お姉様の代わりに謝罪に来たら、いつの間にか婚約する羽目になったのです。
私のせいではありません。
私は、考えるのを放棄した。
ジーメンス様の予想通りというか、期待を裏切らない頭の悪い幼稚なお姉様というか、私達の婚約披露パーティーで、招待されていないお姉様がやって来た。
…誰だ邸に入れたやつ。お姉様と両親は出入り禁止だぞ。
見ると、男爵令嬢と一緒にいた。
伯爵家の立場を利用して脅したのね。
お姉様は、身分が下の貴族には強く出るのよね。
身分が上の筈のジュール様の事は、年下だからか侮っていて、下に見ているけど。
身分は上なんですよお姉様。
「妹じゃなくて私と婚約してください!」
お姉様は、ジーメンス様に迫った。
「お前は私の大切な妹を侮辱した挙句、階段から突き落とした。それなのに自分で謝罪せず妹に謝罪をさせた。
お前には処罰が必要だ」
ジーメンス様が冷たく言った。
「どうして?ブスの妹と婚約するより、美人の私と婚約した方が良いに決まってるでしょ!」
その前に謝りなよ。
「性格がブスだな。顔に、性格の悪さが出ているぞ。美人なのを自慢して、周りを見下し、我儘放題。勉強もせず中身も空っぽで、誰が嫁にほしいと思う?
よく鏡を見てから来い」
おぉ!そこまでハッキリと言う人は初めてだ。
「妹に私の悪口を言われたんですか!?」
言わなくても本性がバレていた件。
バレてないと思っていたのねお姉様。よく見れば、誰にでも分かると思う。
「お前は、成人しているのに自分がした事の責任も取れない。まずはジュールとクーロンに謝罪しろ」
ジーメンス様の言葉に反発するお姉様。
「嫌です!」
嫌ですじゃないんだよお姉様。
「お姉様、我が家は伯爵家、こちらは侯爵家ですよ」
私が言うと
「妹のくせに!!」
お姉様が私に殴りかかってきた。
「私の大切な婚約者に手を出したな!」
ジーメンス様がお姉様の腕を掴んだ。
駆け寄ってきた騎士に
「こいつを牢へ入れておけ」
と命令した。
「私は姉です!」
藻掻きながらお姉様が言ったが
「もう絶縁しているから、赤の他人だ」
冷たくジーメンス様が言った。
「何ですって?」
お姉様は驚いていたが、騎士に引き摺られながら
「ジーメンス様は私のものよ!」
と叫んだ。
「お姉様、ヘンリー様もジーメンス様も、お姉様のものではありません。いい加減、現実を見てください。お二方共、婚約者がいますし、お姉様は眼中にありません」
私は言い聞かせるように言った。
「妹のくせに生意気なのよ!」
「言っても理解できないのなら仕方ないですね。さようなら、ファラド様」
血の繋がりはあるが、もう、戸籍上はお姉様ではないし。
何か叫びながら、騎士に連れて行かれた元お姉様。
「皆の者、騒がせて悪かったな」
侯爵様が仕切り直した。
お姉様を連れてきた男爵令嬢は、脅されたとはいえ出禁のファラドお姉様を連れてきたので、退出させられた。
ちなみに門番に、お姉様を通して良いと言ったのはジーメンス様だった。
この場で断罪するつもりだったのだという。
私は、ジーメンス様の婚約者として紹介され、沢山の人から祝福された。
お姉様は、バッファ侯爵家に無礼を働いたので、修道院へ押し込まれた。
とても厳格な修道院で、監視も厳しく、生涯出られない。
反省もしていないのだから、罰も厳しくなるというもの。
両親は、お姉様の我儘や他家へ無礼を働くのを放置していたのと、私に謝罪させていたので、バッファ侯爵家に睨まれた。
侯爵家に睨まれたら、他の貴族からも距離を置かれる。苦しい状況になったが、自業自得だ。
「これで、何の心配もいらなくなったな」
何故か、花盛りの庭でジーメンス様と二人きりでお茶をしている。
色気割り増しのジーメンス様が微笑んだ。
…顔が良い。
自分が顔が良いのが分かってやっているな。
「謝罪の為に求婚した訳では無いからな」
ジーメンス様が言った。
何やて、く…以下略。
「君はいつも妹に、姉の所業を謝罪して、優しくしてくれた、と妹から聞いていて、会ってみたいと思っていたのだ。実際に会ってみたら、誠実で可愛らしい。だから、謝罪にかこつけて求婚したのだ」
何ですと〜!?
「今まで苦労した分、幸せになれ」
満面の笑みで言うジーメンス様。
後ろに薔薇が舞っているな。幻覚かな。
でも、美男は見慣れたらどうにかなる。
「ありがとうございます」
私はジーメンス様に笑顔で言った。
読んでいただきありがとうございます




