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スライム領の領主になって敵対種族をボコボコにする  作者: 新北部


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75 ゴーレム


 すたっ。


 と、地面に綺麗に着地する。


 アームガードによる空中制御も、初めの頃を思えばだいぶ上達したものだ。


 少し遅れて、ぺちぺちぺちと、船に乗っていたスライムたちも地面に落ちてくる。


 後ろには、地上で待機していた多くのスライムたち。


 さきほどの人型ゴーレムの勇姿に当てられ、興が乗ってきたのか、今ではやる気十分といった感じだ。


 小細工――というにはパワフル過ぎるが、上空からの丸太落としみたいな、ハックして勝つような手はこいつらには通用しないらしい。


 ならば、俺らの全力。


 この体で打ち倒すのみ。


 俺が人間だと勘違いしていた人型ゴーレムは、天に向けていた拳をゆっくりと下ろし、その無機質な瞳でこちらをじっと見る。


 俺らの間を風が通り抜ける。


 スライム領対ゴーレム2匹。


 数の差はあるが、油断はしない。


 新たな強敵との戦いに、緊張感が高まっていく。

 


 ――ゴンッ。

 


 そんな時、ここまで聞こえてきた重く鈍い音。


 それは戦いのゴングではない。


 人型ゴーレムの後ろをのしのしと歩いていた巨大玉子型ゴーレムが、おもむろにその細長い腕を振り上げ、目の前の人型の頭に振り下ろした。


 ――えぐぅ。


 ゴーレムといえど痛覚はあるのか、人型ゴーレムは両手で後頭部を押さえてぴょんぴょんと跳ね回る。


 ゴーレム同士のやり合いだからまだ見ていられるが、あの振り下ろされた腕の対象が俺だったら、水風船のように弾けて潰れていただろう。


 それほどの威力を感じさせる一撃だった。


「な、なに?」


 突然の仲間割れに、事態を理解できずにいる。


 すると、人型を殴った玉子型ゴーレムがてくてくと、よくその巨体を支えられるなと心配になる細長い足を動かしてこちらに歩いてきた。


 そのまま、なんともいえないむずむずとする時間が流れ、俺の10メートルくらい先まで近づいてきたところで、そいつは口を開いた。


「ココが、スライム領か」


 ――お前が喋るのかよ。


 と、思わず心の中で突っ込んでしまう。


 今までの魔族のパターンとは逆だ。


 といっても俺らを含め3つしか知らないが、鳥人間率いるトトトル領も、熊男率いるコヨトル領も、俺らスライム領も、みんな人間もしくは半人半魔のような奴らが長をやっていた。


 いや、まだこいつが長と決まったわけではないか。


「……ああ、そうだ」


 当然まだ警戒は解かないが、質問に答えてやらないほどまで敵視しているわけでもない。


 俺らの闘争は、あくまで生存のための手段だからな。


 俺の返事を聞くと、そいつはドシンと地面に座り、細い足を器用に曲げて胡座をかいた。


 ずずっと、大地が振動したのが足から伝わってくる。


「オイ、持ってこい」


 と、そいつは後ろを振り向いて、いまだに頭を抱えている人型ゴーレムを呼びつけた。


 ……なんか、長っぽいことしてる。


 人型ゴーレムもそれを聞いて、てくてくとこちらまで歩いてくる。


 やっぱり長かも……なんて思っていると、そいつは背中に背負っていた革の袋からひとつの木製の模型を取り出した。


「あっ」


 意外なものとの再会に思わず声を上げる。


 それは、まだ他領と交易を始める前、お互いの領で出せる物品を見せ合う時に半ばヤケクソで籠に入れた、俺が植物魔法で作った人の模型だった。


 ゴーレム領は交易でなめした革とこの模型を欲しがってたんだよな。代わりに俺らは岩塩と、たまに食用のサボテンも送ってもらっている。


 岩塩はもちろん、サボテンもうちの食卓を彩る食材のひとつとして活躍してくれている。とくにサボテンの実は水分が多く爽やかな甘みがあり、日差しのきついこの土地では最高のデザートだ。


 そんな経緯があってゴーレム領に渡った模型だが、それがどうしたというのだろう。


 ――さてはクレームか? うちは返品対応してないぞ。


 なんて身構えていると、人型から大切そうに模型を受け取った玉子型は、こう尋ねてきた。


「コレを創造したのはオマエか」


 これって、その模型のことだよな。


 そいつの手の中にある模型は、人の形……というか、俺を模した模型だった。


 あの時は時間もなかったし、なんとか俺の魔法を物品に変えられないかと苦肉の策で渡したものだった。そんなにこだわりもなかったので俺とかスライムとか、手近なものを参考にして作ったのだ。


 普段ゴーレム領に送るのはスライムとかその日見た魔物とか植物ばかりなので、その俺を模した模型は、交易を始めるにあたって俺が作った物で間違いなかった。


「そうだけど……なにか?」


 そいつの顔を訝しげに見つめる。


 ――ここで下手に出たらやられる!


 クレームの臭いを嗅ぎつけた俺は、毅然とした態度でそいつに立ち向かう。


 模型を玉子型に渡した人型ゴーレムは、仕事は終わったと言わんばかりに玉子の隣にちょこんと座った。


 そんな微笑ましい光景の隣で、玉子型は大きくのけぞり、ゴロゴロとしわがれた声を荒げる。


「オオ! この芸術を創造せし神はアナタ様でしたか!」


「……え〜」


 ――なんかだるそう……。


 招かれざる来訪者。


 それはやはり、面倒事を運んでくる者だった。



 ◆◆◆



 長くなりそうなので、腰を据えて話を聞くために果樹からフルーツを少しと、湧水をコップに注ぎ、俺とそいつ分持ってきてお出しした。


 お茶でもあればいいのだが、残念ながらうちにはそんなものはないし、なんだったらそこら辺のおちゃよりうちの天然地下水湧水のほうがうまい。……と思う。


 まぁ別に歓迎してるわけでもないしいいだろう。


 こんな奴拠点に入れたくもないので、少し離れた荒野に2人して地べたに座って話をしている。


 スライムたちは高まっていたボルテージを発散する場がなくなってへにょんとしていたが、同じように暇を持て余していた人型ゴーレムと、惹かれ合うようにして戦いを始めてしまった。


 『やりすぎるなよ!』と、お互いに釘を刺しはしたが、その忠告の意味はあったのかなかったのか、俺たちから離れたところで戦ってるそいつらからは、到底じゃれあいとは思えないような重厚な打撃音がバシバシと聞こえてくる。


 初めはハラハラしながら見ていたが、どうやら今回に関してはタイプ相性がよく、お互い高耐久ということでダメージはあまりなさそうだったので今では放置している。


 ゴーレムのほうはどうでもいいが、少なくともスライムの方は安心だしな。


 ゴウン、と人型ゴーレムが地面を叩きつける。


 その威力はあの熊男の攻撃すら凌ぐように思えるが、”その程度”ならうちのスライムの問題にはならない。


 これは信頼でもあり、自信でもあった。


「デハナゼ! コノような模型を送って下さらナイのデス!」


「いや、じゃあ次からは鳥人間に持たせるよ……」


 こいつの話をまとめると、やはりこいつはゴーレム領の長らしく、それも魔族の中では(おそらく)珍しい、自信で配下を生み出すタイプの魔物だった。


 こいつと一緒にやって来た人型ゴーレムもこいつが生み出したものらしい。


 なんでも、どうやら人間という種に興味があり、このような人型のゴーレムを作ったり、人間が好むものを集めていたりするそうだ。


 そういえばこいつから交易品の見本が届いた時、宝石とか黒曜石の塊とか、妙な人間臭さというか、俗っぽさみたいなものを感じたのだが、そういうわけだったのか。


 それで、俺が送った人型の模型を見た時に、あまりの美しさ、洗練された造形に腰を抜かしたらしい。自分でも自信があった分野なだけに衝撃は大きかったんだろうな。


 まぁ、俺のはチートを使ってるだけなので、特別良い物を作ってるという実感はあまりない。


 というかそんな模型より、その後に送った躍動するスラちゃん模型セットの方が絶対にいいと思うのだが……作り手の想いというのはどの世界でも伝わりにくい物なのか。


 俺も人型の模型にはあまり作成意欲を掻き立てられなかったので、人以外の魔物とか植物を送り続けていた結果、人族マニアのゴーレムが『人間の模型を寄越せい!』と、わざわざ遠いスライム領まで直談判に来たというのが今回の件の全貌だ。


 鳥人間に伝言してくれればそれでよかったのに……とも思うが、創作をする人間というのはどこか妙なところがあるからな。


 その気持ちはわからんでもない。

 

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