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スライム領の領主になって敵対種族をボコボコにする  作者: 新北部


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54 vs鳥


 トレビュシェットを用意する暇もない。このままでは1分も経たず俺らの拠点に到達するだろう。


 それに飛んでいる敵に対して投石器は有効ではない。


「いくぞ!」


 俺はスライムたちに呼びかけて、急いでその飛行する群れを撃墜しに拠点を出る。


 空中にいるというだけでかなり相手がしずらい。手こずっている間に拠点を荒らされでもしたらたまったものじゃないので、こちらから先行して叩きに行く必要がある。


 そいつらの元へ向かう途中で、資材置き場から丸太を3本拾う。鳥系の魔物の場合まともに地上で打ち合えないかもしれない。そうなれば仕方ない、この丸太を宙に浮かべてぶん回すしかないだろう。


 俺の魔法も日々の戦いや作業を経て成長している。無秩序に振り回すだけなら、今の俺なら丸太3本くらい同時に操作可能だ。


 荒野を駆ける俺の後ろを、ドドドと威圧的な音を立てて100を超えるスライムがついてくる。


 今まで何度思ったかわからないが、この感情は毎回過去のそれを越えてくる。


 ――頼もしいな。


 こいつらがいれば、俺はなんでもできる。


 芯からそう思ってしまうほどの万能感。


 この世界に転移した日にもらった肉体的なバフや、植物魔法という汎用性の塊であるチート能力。


 もちろんそれらもこの世界での生活において重要なものだったが、スライムたちが側にいるという精神的な心強さはそれらに勝るものかもしれない。


 そんなことを考えていると、すぐに敵の目の前まで来ていた。


 空を飛ぶピンク色の丸っぽい鳥の群れ。その中心に、翼の生えた人間のようなものがいる。


「緑と赤は隊列を組め! 今日は遠慮しなくていいぞ! 魔法ぶっぱなしてやれ!」


 そうスライムたちに大声で伝えながら、運んできた3本の丸太を弾丸のようにして敵の群れに飛ばす。俺の側にいる、赤、黄、緑の側近のようなスライムが3匹いるので、大声を出さなくても声はスライム全員に伝わるのだが、どうやら俺も掛かっているらしい。


 相手はかなりの速度で空を飛んでいる。そのまま抜けられないよう、まずは先手でかましてこちらに注意を惹きつける必要がある。


「うおおおおおお!」


 群れの中に突き刺さるように飛んでいった丸太を、ぐるぐるかき混ぜるようにして振り回す。


 しかし、効果はなし。


 やはり鳥なだけあって空中戦は得意なのか、このくらいの攻撃は簡単に回避できるようだ。


 と、その時――空間ごと動いているのではないかと錯覚するかのように大気が動いた。


 まるで空気の体当たり。烈風と呼ぶに相応しいそれが、飛行を生業にするそいつらを紙切れのように吹き飛ばす。


 少し遅れて、大地が赤く照らされる。


 緑スライムの風魔法に乗って、赤スライムが吐き出した炎の塊が濁流のように鳥に向かう。


 距離があるので最大限の火力は届かないが、その余波の熱風ですら、まともに食らえばただでは済まないだろう。


 突如襲ってきた風と熱に、鳥の魔物たちはコントロールを失い、焚き火で舞い上がる灰のようにひらひらと空を舞った。


「黄色と子スラは落ちてくる奴をやれ!」


 そうなってしまえば丸太の餌食。


 羽虫を叩き落とすかのように、振り回される丸太が次々と鳥を打つ。


 あまり体が頑丈ではないのか、そうなった鳥たちは力なく地面に真っ逆さまに墜落していった。


 ――まずは上々。


 勢い込んで攻めてきた魔物の鼻っ柱をへし折る、効果的な先手を打てた。


 しかし油断はできない。


 風を乗りこなし始めたのか、鳥の魔物たちはなんとか空中で体勢を取り戻そうとしている。


 そして何より――。


 中心にいた、翼の生えた人型と目が合う。


 そいつは獲物を狩る時のような鋭い目つきで、俺めがけて急降下するように突っ込んできた。


 ――避けろ!


 何をしてくるかわからない相手の攻撃を盾で受けるのにリスクを感じた俺は、手元の木盾に植物魔法を使い大きく距離を取った。


 一瞬遅れて、突風が駆け抜ける。


 その突っ込んできた鳥人間は、ジェットコースターのように弧を描いてまたぐんと上昇し、空から俺を見下ろす。


 俺の制御を離れた丸太が空から落ち、辺りに鈍い衝突音が響いた。


 ――魔族か。


 魔王と不死女を除けば、魔族を見るのは2度目だ。


 1度目はあの木の玉たちとでかい花。あいつらは俺らに敵意を持っていなかったが、どうやらこいつらは違うみたいだ。


 そうして相手の動きに注視していると、空にいるそいつが突然語りかけてきた。


「おいお前! テオシントを寄越せ!」


 ……テオシント?


 なんだそれ。ていうか言葉が通じるのか?


「知らないぞそんなもの」


 と、こちらも返してみる。


「嘘つけ! 嘘つけ!」


 おお、やはり言葉が通じてる。


 鳥人間は俺の頭上で、そんなことを言ってわめいていた。


 人間との会話ができず、魔族との会話が可能なのは腑に落ちないが、会話ができるなら話は早い。


「お前ら死にたくないなら今すぐ帰れ」


 戦わないで済むならそれに越したことはない。


「だれが帰るか! テオシントを渡す気がないなら、力づくで奪ってやる!」


 しかし、そんな気はないらしい。


 まぁそりゃそうか。そんな簡単に引くくらいなら、わざわざ他の魔族の領に攻めてきたりなんかしないだろう。


 せっかく話が通じるのにもったいないと思う気持ちもあるが、後はやり合うしかない。


 ちらりと視線を下ろすと、地面に落ちた鳥の魔物には、黄スライムと子スライムの混合軍が群がっていた。


 ――あっちは大丈夫そうだな。


 俺は地面に落ちた丸太に再度植物魔法を使い、3本とも宙に浮かべて鳥人間に突っ込ませる。


 当然そいつは何でもないかのようにするすると丸太の攻撃を避けるが、さすがに俺もこれが当たるとは思っていない。


 あくまで牽制。


 ――ずっと避けっぱなしってわけにもいかないだろ。早く降りてこい!


 俺らがこいつをやれるとしたら、さっきみたいに俺を狙って急降下してくる時だけだ。


「緑スラ――」


 俺は側にいるスライムに小声で耳打ちをする。言葉が通じる相手なので、こちらの作戦を大声で口にするわけにもいかないが、俺らにはスライムネットワークがある。


「ハハハ! そんな遅い攻撃、俺には当たらないぞ!」


 しばらくそうして丸太を振り回していると、気をよくしたのか、鳥人間が威勢よくそう煽ってきた。


「お前の攻撃だって1発も当たってねーだろ!」


「なにっ!?」


 あまり露骨に挑発すると怪しまれるか? とも思ったが、どうやら効果てきめんだったみたいだ。


 そいつは一度すっと高度を上げると、一呼吸置いた後、彗星のような強烈なスピードでこちらに向かってきた。


 ――速っ!


 日頃からスライムの体当たりをいなす訓練をしていなければ反応できなかったかもしれない。それほどの速さ。


 俺はすぐに手に持った木剣と木盾に魔法をかけ、”固定”する。


 急降下してくる鳥人間は、あっという間に俺との距離を詰め、ギラリと光る爪を振りかぶる――。


 その時、俺の背後から”風”が吹いた。


 スライム領で蓄えてきた膨大な魔力。数を増やし、訓練も積んだ、数十のスライムの制限無しの風魔法。


 植物魔法による支えがなければ俺も吹っ飛んでいたであろうその突風を、高速で降下するそいつは真正面から受ける。


 ヒュオウと風が鳴り、言葉を発する余裕もなく、そいつは意識を失ったかのように体勢を崩しきりもみする。


 ――ナイス!


 心の中でそう叫び、固定していた装備の植物魔法を解いて、力なく落ちてくるそいつを叩き伏せる。


 落ちていくスピードが早かったのと、一度植物魔法を解くという工程を挟んだせいで、当てるのが精一杯で打撃にまで植物魔法を使う余裕がなかった。


 俺の木剣を脇腹に受けたそいつは地面に転がったまま動かないが、手応えはない。


「黄スラ! 頼む!」


 そういうと、地面からぼこぼこと岩が盛り上がってきて、倒れている鳥人間の腹をガッチリと拘束し地面に固定。


 俺の側にいるスライムたちがそれに追い打ちをかけようとするが――。


「あ、ちょい待って!」


 と、俺はそれを止める。


 せっかくいつ殺してもいい、会話のできる魔族を手に入れたのだ。殺すのは色々聞いてからでも遅くはないだろう。


 ……死んでなかったらの話だけどな。


 植物魔法の助けのない俺の打撃では手応えはなかったが、その前、緑スライムたちの風を当てられた時にどうだったかはわからない。


 あいつは俺が今まで見たことないような、超高速で飛行していた。


 その正面から、緑スライムの渾身の風魔法。


 もちろんそんなに速くはないだろうが、例えばあいつが秒速50mで移動していたとして、スライムの起こした風も風速50m毎秒あったとする。


 この時の相対風速は100m毎秒。とんでもない空気抵抗が瞬時にかかることになる。


 空気抵抗というのは速度の二乗……この例だと、滑空時の約4倍の圧をその身に受けたというわけだ。


 重ねて、『そこまで速くはなかっただろう』という注意書きはつくが、風速100mといえば家が軽く吹き飛ぶレベル。


 俺が植物魔法なしで殴るより、よっぽど致死性の高い攻撃だった。


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