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スライム領の領主になって敵対種族をボコボコにする  作者: 新北部


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43 魔力重視政策


 それからまたしばらく経った。


 スライム領の領地の整備としては一段落つき、今は戦闘訓練と兵器開発の2つに力を入れている。


 訓練は毎日朝から昼にかけて行うが、午後に関してはその日その日で変わる。兵器開発はだいたい数日置きに1回で、空いた日には森林の探索だったり魔物の解体、魔物肉の燻製に獣脂の精製、皮の(なめ)しや領で使う細々したものの作成など、生活面の充実も図っている。


 領地の整備についてだが、まずはあの魔王からもらった枝のことを紹介しなければならないだろう。


 植えた2日後には樹高10メートルほどの立派な木になっていたが、その後も成長を続け、今では高さこそ倍の20メートルほど……いや、それでも十分すごいのだが、何よりも幹の太さが大人10人でもようやく囲めるかといったくらいにまで成長していた。直径にすれば5メートルはあるだろうか。


 1本の枝から成長したのに、その幹はまるで複数の木が集まってできたかのようにゴツゴツしており、この荒れ地の地面に似た白みがかった茶色をしている。その太くたくましい幹には鳥の羽のような深い緑色をした葉がわしわしと芽吹き、柳のように垂れ下がっていた。


 その巨大さ、目立ちっぷり、存在感。どれをとってもこの領のシンボルと呼ぶにふさわしい巨木だ。


 これほど幹が太い上に、伸びる枝も外に外にと広がっているのでかなりの広範囲に木陰をつくっている。


 当然これを活用しない手はなかった。


 まず1日かけて、この木が作る影の動きを追って目印をつけ、その範囲すべてに苔を移植する。この苔に必要な日照時間は元々あった小川の環境からだいたいわかっていた。おおよそ日が出ている間の半分もあればいいので、太陽の傾きによって影が動くことでどの場所でも最低限の日光を浴びることができるように調整した。


 苔といえばずっと日陰にいるイメージがあるが、実は種類によって要求環境は結構変わり、日光を必要とする種も多い。


 もうひとつ必要なのが水分だ。これも種類によってまちまちだが、スライムたちが好むこの苔は今のところ1日に1回の散水で上手く育ってくれている。数日に1度訪れるスコールのおかげもあるだろう。

 

 その散水だが、前まではため池を囲むように苔が生えていたので簡単だったのだが、場所を巨木の周辺に移したせいで前のようにはいかなくなった。


 そのため、ここは緑スライムの力を借りて散水を行っている。


 スラ時計の容量を計る時に作った大きな升よりもさらに大きい升を用意し、底に無数の穴を空けシャワーのように水が出るようにする。スラ時計と違いこの升は多少水が漏れてもいいので、植物魔法で簡単に作ったものだ。


 水の入ったその升を新しくできた苔エリアに運び、シャワーのような細い水が無数に出ているところに緑スライムの風魔法で風を送ってもらう。緑スライムはかなりの風速まで出せるので、ミスト状になった水が苔エリアの端から端まで届いて潤うという方法だ。


 俺がこの升を植物魔法で操作して直接水やりをするという方法も考えたが、打ち水のようにばしゃりとするわけにもいかないし、かといってこのちょろちょろ流れる水を苔エリア全体に行き届かせるのは手間だった。


 それにこれは、緑スライムの魔法の訓練と研究も兼ねている。


 スラ時計に使う石の槽を作る過程で、スライムの魔法が上達していくことは判明済み。なのでこれからは、今まで最低限しか使ってこなかったスライムたちの魔法も色々と使う機会を増やしていきたいと思っている。


 それにこうやって使うことで、スライムの魔法に対する俺の理解度も上がるというメリットもある。


 事実、こうやって緑スライムに風魔法を使ってもらうと、他のスライムとはまた違う特徴が見えてきた。


 まず何よりも目を引くのは、その効果が及ぶ範囲だ。


 黄スライムの土の魔法は離れたところにある土を操作することはできない。赤スライムの火魔法にいたっては数メートルが射程距離だ。


 もちろんこの2つの魔法もそれぞれいいところはあるのだが、風魔法の効果が及ぶ範囲はこの広い苔エリア全体を軽く収め、さらに遠くまで風を送り届けることができる。射程なんて長ければ長いほどいいのだから、これは風魔法の明確な強みだ。


 そしてその風速もかなりのもので、垂れる水を吹き飛ばして霧状にすることもできる。人間相手なら動きを鈍くすることもできるだろうし、突風を送れば短時間とはいえ隙も生み出せるかもしれない。


 さらに、風魔法がただ風を起こす魔法でないということもわかった。


 もし風を起こすだけなら苔エリア全体にミストを送るのは困難だ。ここは屋外だし、この土地はそもそも風が吹いているので、魔法を使った地点から距離が開けば開くほど起こした空気の流れはカオス状態になる。もしくは霧散して消えてしまうだろう。


 しかしこの緑スライムは、風にのせて器用に苔エリア全体にミストを送り届ける。


 風魔法という名前は俺が勝手につけたのだが、これは正しくこの魔法の性質を表してはいなかった。

 

 緑スライムのつかう魔法は風を起こすだけの魔法ではない、その本質は大気を動かすことにある。大気操作といってもいいかもしれない。


 風を起こすことと大気を操作することでは、できることが大きく変わる。


 こういった発見が起きることも、スライムに積極的に魔法を使ってもらう利点だった。


 しかし問題点もある。


 これがまた難しいところなのだが、魔法を使うということは魔力を消費するということだ。


 魔力とはつまりスライムのHPでありMPでありパワーなので、むやみやたらと使いまくることはできない。


 その魔力の回収効率を上げるために俺は獣道を作ったり苔エリアを増やしたりと領地改革を進めているのに、訓練や利便性のためにそれを消費してしまっては意味がない。


 幸いなことに、今くらいの魔力消費は問題ないレベルなのだが、だからといって使い放題ではないということだ。


 ここらへんのバランス感覚はまた日々の生活で学んでいかないといけないな。


 魔力を増やしつつ、敵対種族と戦う分も確保しつつ、訓練や生活のレベルも上げていきたい。


「やはり大事なのは、いかに魔力を集めるかだな」


 そういう意味で、この新たに増設された新苔エリアは以前からあるため池周辺の旧苔エリアの軽く10倍以上の広さはあり、期待が持てる。


 現状この領で大きく変わったのはそれくらいだが、一度今の領を北から順に説明すると、


 新苔エリア

 巨木

 新苔エリア

 

 増築した俺の家&倉庫

 

 旧苔エリア&果樹

 ため池

 旧苔エリア&果樹

 

 水路


 となっており、苔エリアは新旧どちらも巨木やため池を囲むように植えている。


 家の東側には魔物肉の燻製や魔物の皮の燻煙鞣し(くんえんなめし)をする大きな東屋があり、その隣には大量の資材――主に丸太が置いてある。


 反対になる家の西側には、炊事場や物干し竿などの生活スペース、さらにその先にトウモロコシと緑トマトの小さな畑がある。


 緑トマトと言い切ってしまっているのは、残念ながらこの植物が赤く熟れることはなかったからだ。最初はがっかりしたのだが、風味は結構トマトに近く、それこそトマトのような旨味成分を感じる野菜だったのでこれはこれで重宝している。


 また、高床式の家に併設されている倉庫はスロープで外からでも出入りできるようになり、さらに家の下には地下貯蔵庫も用意した。当然スコール時に水が入ってこないよう対策も万全だ。


 肉を含む魔物素材はこちらに保管してある。それほど深い地下貯蔵庫ではないのだが、常時高床式の家の陰になっているおかげか、外気に比べればそれなりに気温は低く保たれている。


 最後に、水路のさらに南に魔物の解体場がある。解体場も作業がしやすいように東屋を建て、広めにスペースを取っている。なにせうちの領にやってくる魔物の数も増えたからな。


 獣道を増やした成果はちゃんと出ているようだ。


 魔王や不死女みたいな例外を除けば、魔物は今のところ2~4日に1回程度のペースでやって来ている。まだ検証期間が短いのでなんともいえないが、これくらい来てくれるなら上々だ。しばらく様子を見てからにはなるが、さらに追加で獣道を増やすことも考えていいかもしれない。


 それに、拠点にやってくる魔物の数を増やすという魔力の回収方法を語る上では到底無視できない、大きな発見もひとつあった。


 魔石の再利用である。


 スラ時計に水を流すために取水場に空けた穴だが、その蓋にスライムが吸収した後の魔石を使っていた。当然スラ時計を使わない時は蓋として取水場の水底にあるのだが、後日その魔石を見るとわずかに色を取り戻していたのだ。


 魔石は魔物から出てきたときは淡い綺麗な水色をしているのだが、スライムがその魔力を吸収すると黒ずんだ石になってしまう。それが僅かにでも色づくということは、魔石に魔力が溜まっていると考えていいのではないだろうか。


 そう思った俺は、すぐに倉庫に保管していた魔石と布袋を持ち出し、魔石を袋に入れてため池に数日間沈めてみた。


 スライムが一番だが、俺はこの湧き水にもかなりの信頼を寄せている。なにせそのスライムが見つけてくれた地下水だし、この水がスライムに良い影響を与えているのは一緒に生活していればわかる。


 結果は予想通り、5日ほどため池に沈めると、空になった3つの魔石は魔物から出てきたばかりかのように淡い水色を取り戻していた。


 その時の俺はスライムの目も憚らず、拳を高く上げて雄叫びをあげた。


 魔石の再利用が無限にできるのか、回数制限みたいなものがあるのかはわからないが、これは魔石からの魔力回収効率を大きく向上させる発見だった。


 魔石は魔物を倒せば手に入る。そうすれば魔石の総数はどんどん増え、再利用できる魔石の数も一方的に増えていく。


 富国強兵などといって始まった領地改革。


 その一手目として行った獣道作りと苔エリアの拡張だが、その計画は満点越えの120点――最高のスタートを切ったのであった。

 

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