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スライム領の領主になって敵対種族をボコボコにする  作者: 新北部


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28 ドロップ


 「おっ、またナイフだ! めっちゃいいじゃ~ん。なんだこれ、鉄の棒? 火打石か?」


 翌日、3つの死体を自然に還した俺は、嬉々としてそいつらの持ち物を物色していた。


 自分で言うのもなんだが、これじゃまるで追い剥ぎだな……。


 だが仕掛けてきたのは向こうからだし、あいつらを埋めるときも今も、不思議と罪悪感はなかった。


 むしろゲームでボスを倒した後に出てくる宝箱を開けるときのようなわくわく感のほうが大きい。


 あいつらが持っていた武器と身に着けていたもの、そして腰に下げていた布袋とその中身、それらを合わせるとこんな感じだった。


 折れた剣に、曲がった剣に、黒い短剣。


 これらはあいつらが使っていた武器だな。


 白いローブにブーツ、ズボンと上着、胸や手を守る皮製のプロテクター類などが3セット。


 あぁ、もちろん全部ひん剥いたぞ。こっちはそんな余裕のある生活をしていないんだからな。使える物は全部使うつもりだ。


 それに、前衛の2人が持っていたナイフが2本。ここまでがだいたい身に着けていたものだ。


 それから3人がそれぞれ腰につけていた布袋が3つ。


 その中身だが、鉄のような材質でできたボウル、革袋に入った水、麻布袋に入れられた乾燥トウモロコシっぽいもの、謎の小さい鉄の棒、あとは同じ方向を指し続ける方位磁針のような物と、汚れた布。


 そしてそして~。


「じゃじゃーん! 岩塩!」


 片手にころんと乗るくらいの大きさだが、やや黄色みがかった白い鉱石のようなそれは、少し削って口に入れてみると思った通りしょっぱかった。


 だいたいこれらが3セット分。あとは髭面の剣士の布袋に魔石が3個、後衛だった魔法使いの布袋に短剣とは別の小さなナイフが入っていたくらいで、おおむねこれで戦利品は全部だ。


 中でも岩塩が一番の当たり。大当たりだ。


 嬉しすぎて、畜舎で飼われている牛や豚のようにそのまま岩塩を舐め倒そうかと思ったほどだが、ここは鋼の自制心でぐっと我慢する。


 そんなことをしてしまったら、この小さな岩塩を水で洗わないといけなくなる。そうすれば表面は溶け出し、大事な大事な岩塩が無駄になってしまうだろう。


 そもそも岩塩って水に溶けるのか? という疑問もあるが、そんな知的好奇心のために貴重な岩塩で実験できるわけもなかった。


 3つある乾燥トウモロコシっぽいものを詰めて2袋にし、余った1袋に岩塩の塊3つを入れる。片手に乗るサイズのその袋はちょうどいい大きさだった。


 さて、岩塩以外のものもしっかりと確認していこう。


 折れたり曲がったりしている武器はまぁいいとして、まずはこの黒い短剣が気になる。


 丁寧に革を巻かれた柄を持ち、顔を近づける。薄くなっていく刃の面は太陽の光を浴びて、濡れているようにテラテラと輝いていた。


 そっと刃先に指を当てる。するとまるで最初から切れていたかのように、指先に赤い線が走った。


「すごい切れ味だな」


 その線からぽつぽつと小さな赤い玉が生まれ、ぷっくりとしてきたかと思うと、つーっと指先から垂れていった。


 あの世界での知識だと、黒曜石の工芸品とかに似た質感だが、これもそうなのだろうか。もちろんこの世界独自の素材や加工法という可能性も十分にある。


 これを持っていたのは、3人の中で唯一魔法を使っていた人間だった。魔法を使うのに短剣が必要だったのだろうか。


 いわゆる”杖”的な役割だが、俺が魔法を使う時にこういった媒体は必要ではないので、いまいちピンとこない。


 一度、短剣を掲げて近くに生えている果樹をさわさわと揺らしてみるが、特に普段と違う感じはしなかった。


「うーん。ま、いいか」


 わからないものはしかたない。ここの生活では、そういった割り切りも重要だ。


 切れ味は最高なので、魔法がどうのこうのよりもこれは魔物の解体で役に立ってくれそうだ。いや、鉄製のナイフがあるからそれを解体で使って、これは調理用にしよう。


 あっちの世界でも包丁なんて500円の安物で我慢していた俺が、まさかこんな高級そうな刃物を調理で使うとは。人生とは何が起こるかわからない。


 そんな黒光りして重厚感のある短剣を横に置き、血の付いた指を取水場で洗う。


 ちなみに、浅くとはいえ指先が切れたというのにこれだけ余裕をこいていられるのは、俺の怪我に対する意識が大きく下がったからだ。


 昨日、あの小柄な剣士に差し違えるようにして付けられた手首の傷は思った以上に深く、夜になっても血が止まることはなかった。


 さすがに『終わったかも……』と思いつつ、とりあえずその日はシャツを手首に巻いてツタできつく縛り、腕を上げた状態で固定して寝たのだが、次の日になってびっくり。


 起きてからまず傷の具合を確認すると、あれほど血を吐いていた傷がすっかり塞がっていたのだ。


 にわかには信じ難く、きちんと確認するために急いで腕にべっとりと付いた乾いた血を洗い流すと、そこにあったのは周りの肌より薄い色の10センチくらいの太い線。


 よく漫画やゲームで顔に傷がある人がでてきたりするが、俺の手首にあったのはまさにそんな感じの傷の跡だった。


 その傷跡を触ってみると、少しへこんではいるが傷はしっかり塞がっており痛みもない。


 自分の体に起きたことなので、驚きを越えてちょっと気持ち悪かったが、さすがにこの世界での生活がひと月も超えるとそんな異常も慣れたもの。


 まぁ、そんなこともあるか。むしろラッキー! と、今では好意的に受け入れている。


 なので、指先にできたこの程度の傷ならば心配するまでもないのだ。バイ菌が入ってくるとかだとまた話が変わってくるかもしれないが……。


 うん、やっぱ自分の体は大事にしよう。すぐ直るからって、簡単に傷をつけちゃあいけない。


 そうして取水場から戻ってきて、次の戦利品に手を伸ばす。


 あいつらが来ていた服や革鎧、身に着けていたナイフなどだ。


 ナイフはいいだろう。俺が使っていた木製のナイフよりは切れるだろうし、刀身もしっかりしている。次に魔物を解体するのがちょっと楽しみだ。


 服に関しても特にない。他人が着ていたものだし、洗っても血は完全には取れないし、今着ている日本製の俺の服を乾かしている間にサブとして着るくらいだな。


 今までは洗って絞った後の濡れたものをそのまま着ていたので、これでもいくらか気分はいいだろう。


 この革の鎧? プロテクター? みたいなやつらは……。


「うーん」


 一度着けてみたが、どれも微妙にサイズが合わない。


 やはりあいつら結構な身分だったのか、胸当ても小手も、留める部分に遊びがなくピッタリサイズで作られたものっぽい。


 ということは市販の品ではなく、オーダーメイドの装備なのだろう。


 使い込まれてはいるが、決してボロには見えないことからも、それが長く大事に扱われていたことが伝わってくる。


「まぁこれも倉庫だな」


 うちに併設されている倉庫は小さいので、これは増築も考えないといけないなと思いながら、それらの戦利品も横に寄せる。


 続いては白いローブだ。うん、これは普通に使えそうだな。……どれも赤い血がべったりついてるのに目をつぶればだが。


 しかもどれも頭付近なんだよな、血がついてるの。


 俺の木剣は切るのではなく殴るに特化した武器なので、どうしても殺傷力を求めると頭狙いになってしまう。


 ちょっと前は、魔物の頭を無言で狙うスライムたちにちょっと引いたりしたこともあったが、あいつらのことを言える立場じゃないな、俺も。


 むしろ学ばなければいけなかったんだ、あの姿勢を。


 スライムはいつも、この世界での生き方を俺に教えてくれる。


 そんなスライムたちだが、今はいつも通り苔をモニモニしたり、池にぷかぷか浮いていたり、木に登って遊んでいたりする。


 数が倍になって、それぞれが色んなところで過ごしているのを見れるようになった。


「スライム向けのビオトープでもやってる気分だな」


 おっ、この考え方はいいかもしれない。


 スライムたちが暮らしやすいように、自然環境を整えてあげる。


 その言葉は、どこかスッと頭に入った。


 俺がやるべきことはこれなのかもしれない。そうやってスライムがまた増えてくれれば、俺たちの戦力もぐんとあがるしな。


 しかし、魔石が見えるところに転がっているというのに、スライムたちはお構いなしで自由にやっている。初めてこの魔石を見た時は目の色を変えて飛びついていたというのに。


 ある程度今の魔力に満足しているのか、それとも今までみたいに俺が魔石を割るのを待っててくれているのか。どちらにせよ、はやく戦利品の整理を終わらせて魔石砕いて渡してあげるか。


 今はのんびりとしているけど、魔石を渡せばあいつらも喜ぶだろう。


 そうして、俺はまた次の戦利品へと手を伸ばす。


 ちなみに白いローブは、


「一旦倉庫!」


 例に漏れず、また倉庫を圧迫する在庫の一部になるのだった。


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