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第壱話:趣味趣向は多種多様

 しずくは周囲の安全を確保してから、亜人猿の住居の中を探していった。そしてその一つに……。


「だ、大丈夫でござるか!」


 服が意味をなさぬほどに裂かれ、手足を縄で縛られている女性がいた。どう扱われていたか想像に難くない。

 しかし、縄で縛られているはずの女の瞳は、どこか退屈そうに見えた。


「は? なんで人間の女が入ってくるのさ?」


 そして、返ってきたのはそんな言葉だった。表情にもまだ余裕がありそうというか、むしろがっくりしたような顔をしている。


「え? えっとモモ殿でござるよな?」


 肩にかかる程度の長さのピンクのおさげ髪。顔の特徴。ほぼなくなってしまっている服。それらが聞いていた情報と合致する。


「そうだけど、なに?」

「えと、しばらく帰ってこないから心配だと、お母上から捜索の依頼を……」

「あー、冒険者? はぁ。ママったら余計なことを……。まあちょっと長居しすぎたかな。今回はこの辺でやめとこう」


 そう言いモモが指を鳴らすと縄が燃え、一瞬で灰になった。


「え? 一体どういう?」


 困惑し、しずくが訊いた。


「あたしさ、ものみたいに扱われんのが好きなの」


 しずくの中で、パチンと何かが弾けた気がした。理解が追いつかず面食らうとは、きっとこういう感覚を言うのだろう。


「……はい?」

「でも人間相手だとデキちゃう可能性あるじゃん?」


 モモは近くにあった鞄から新しい服を取り出して、それに着替え始めた。


「それは面倒だし、時々亜人猿のとこに発散しにきてるってワケ。危なくなったらこうして魔術で逃げられるし」

「???????」


 ……もはや脳が拒絶反応を起こしていた。


「まいっか。とりあえず帰ろ」


 モモに言われ外に出る。そこにはしずくが屠った亜人猿の死骸が、たくさん転がっていた。


「あーあー、せっかく人が余所に迷惑かけないように、エグめの趣味を楽しんでたってのに……。次からこの子たちに使ってもらえなくなっちゃったらどうするの?」

「え? えっと……。め、面目ない……」

(……拙者には到底理解しかねるが、人の嗜好というのはかように多種多様なのでござるな……)


 そう思いつつ、なぜ自分が責められているんだろう、と複雑な思いを抱えながらデモル京に帰った。

 依頼主からは報酬をもらえたからよしとしようと、割り切ることにした。


「……でもやっぱり……、次はもう少し普通の依頼がいいでござるな……」


 結局、子どもの失踪事件に繋がりそうな手掛かりは見つけることができなかった。

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