最終章:嫌だ!
水晶が砕けてから5秒、セキヤミの化け物の体が溶けて霧散し、消えていった。
それが晴れた時元のセキヤミだけが残っていた。
「セキヤミ殿!!」
しずくはそこに座り込みセキヤミの上体を抱き上げた。
「セキヤミ殿! しっかり!」
そう語りかけるとセキヤミが薄く目を開けた。
「しずく殿、私を止めていただき、ありがとうございました」
「……え?」
「愛してるって、言ってくださってありがとうございました。嬉しかったです」
力なくそう言った。
「何を……、なんでそんな……」
(お別れみたいな言い方するのでござるか!!)
そう口にしようとしたのだが詰まってしまい、上手く出なかった。
「生命力を使い果たしてしまったのでしょう。きっと私に残された時間はもう少ない」
その言葉を聞いた時、視界が滲み始めた。
「あなたの夢が叶うところを見られないのは悲しいけど、きっとあなたならそれに届く、そう私は信じておりますから」
「嫌だ……、嫌だ嫌だ嫌だ」
しずくは子どものようにその現実を否定するので精一杯だった。
「こうして愛する人の腕の中で逝けるのです。私は幸せ者でしょう」
「やだ! セキヤミ殿! 逝かないで!」
「大丈夫です。しずくさん。あなたは素敵な人だから」
セキヤミの手が頬に触れる。
「きっと素敵な人が現れます。……本当は、私であればよかったのですが……。それにほら、ナミネさんもエミさんもいるでしょう?」
「やだやだやだ! セキヤミ殿がいい! セキヤミ殿でないとダメなのでござる!! だから拙者を一人にしないで!!」
そのセキヤミの手握って言った。
「逝かないで逝かないで逝かないで逝かないで……。お願いお願いお願いお願い……」
絞り出すように……、そう希う。
「このネックレス……、付けていてくださったのですね」
しずくの破れた服から垂れ下がるいつかのネックレスを指しながら言った。
「ありがとう。私は今、きっと世界一の幸せ者です。しずく殿……、愛しております」
そう言い残し、セキヤミの目が閉じる。
「セキヤミ殿……?」
呼びかけるが、反応がない。
「セキヤミ殿ぉ……! セキヤミ殿!」
しずくがそれが嘘であってほしいとそう願いながら身体を揺り動かした。
「セキヤミ殿ーーーーーーーーーーーっ!」
本当は泣きたかった。子どものようにただこの世の理不尽に対して文句を叫びたかった。
しかしまだだ。今はまだその時じゃない。泣くのは全部終わってからだ、と自分に言い聞かせた。




