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最終章:血の転移門

「しずくさん!」


 やっとしずくに追いついたナミネがしずくに呼びかけながら入ってくる。


「……しずくさん?」


 服はボロボロになり、刀を抱きしめるように抱え、返り血と何かわからない自身の体液で顔がぐしゃぐしゃになっていた。

 その様子と、絶望の表情で座り込んでいるのを見て、肩に手を置きながら問いかけた。


「大丈夫ですか……?」


 そう聞いた途端しずくは、ツーっと静かに涙を流す。そして表情を変えずにナミネを見た。


「で、デモル京に」

「デモル京?」

「デモル京に今すぐ行かないと!!! でも……、ここからじゃどれだけ頑張っても3日はかかるでござる……。セキヤミ殿に皆、殺されてしまう……、エミ殿も、モモ殿も……」


 ナミネにすがって泣きながらそう絞り出した。


「何があったのかは存じ上げませんが、”あなた”が”デモル京”に行ければいいのですね?」


 こくん、としずくが頷く。


「20秒くださいまし」

「え……?」


 ナミネは立ち上がりナイフを描いて作り出した。そして手のひらを斬り血を流す。

 その血を画材として、壁に大きな円を描いた。


惟神(かむながら)霊神の御前にて、畏み畏み(もう)し奉る。我が血を印となし、我が血を分かちし者、我が血の流るる(ところ)へと、(かど)を繋ぎ給へ!」


 呪文の最後の音が消えると同時に、空気がひやりと震えた。

 血の円の中の壁がぐるぐると変化していき、気が付くとその先にデモル京の風景があった。それは現在のデモル京というより、浮世絵のように描かれた風景画だった。


「さあ、お通りなさい」

「え?」

「転移門を描いたのです。通ればあなたはデモル京に行けます。急がないといけないのでしょう! さあ!」


 そう言ってナミネがしずくを鼓舞した。しずくは立ち上がって刀を手に取った。

 門の前に立つ。


「一つ言っておきます。私はここを通ることはできません。それを条件とした限定的な門なのです」

「え?」

「私はもう援護できませんわ。そのつもりで頑張ってきなさい」


 そういってナミネはしずくを抱きしめた。


「大丈夫です。あなたは私の妹なのですから。きっとやり遂げられます」


 そういってしずくを放した。

 しずくは涙をぬぐう。


「かたじけない……。行ってくるでござる!」

「ええ、行ってらっしゃい」


 そしてしずくがそこを通り、門が消える。


「うっ……」


 ナミネは視界が少し暗くなり、耳鳴りを感じながら壁に手をつこうとして───そのまま支えきれず、ふらりと崩れ落ちる。息は上がり、鼻から血を流していた。

 転移門は、一生のうちに何度も使えるような代物ではない禁じ手なのだ。しかも普通はここからデモル京の距離を移動することなど不可能。多くの制約と代償を払うことで、限界を超えてそれを可能にしたのだ。


「しずく……、頑張ってください……」


 残されたナミネは一人、静かに呟いた。

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