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最終章:油断

 大神官の殺害を確認する;。


「やった……」


 そして呟いた。


「やったでござるよ! セキヤミ殿!」


 そしてセキヤミに抱きついた。


「はい! やりましたよ! しずく殿!」


 セキヤミはその間も回復魔法をかけてくれる。その優しさが嬉しかった。

 しかし———。


「危ない!」


 セキヤミが血相を変え、しずくを庇った。

 地面に衝撃波を放った大神官が、その勢いで飛び上がりこちらに近づいてきていたのだ。

 セキヤミの背を叩きつけた大神官の右手には、いつの間にかあの紫の水晶が握られていた。肉を抉る音とともに、セキヤミの背中へその妖しい光が吸い込まれていく……。

 

 ———お前は強い。単純な剣の腕なら既に俺を超えてる。が故に油断をするのが悪い癖だ。気を付けたほうがいい———


 かつて師匠に言われた言葉を思い出しながら、しずくは背中から血を流しながらゆっくりと倒れゆくセキヤミを見ていた。


「ち、狙いが変わったか。まあいいだろう」


 地面に倒れかけたセキヤミをギリギリで受け止めながら大神官が呟いたのを聞いた。


「き、貴様生きていたのでござるか!?」


 上半身だけで地面に転がっている大神官を問い詰めた。


「いいや。まだ死んでいないという表現の方が正しい」

「は?」


 しずくは混乱する。


「いや、見事だ。賞賛に値する。まさか私を倒すとはな。それは認めよう。だが、悪あがきはさせてもらう」


 息も絶え絶えといった様子で大神官が言った。すでに胸の内側はぐちゃぐちゃで、心臓は動いていない。それでもなお、魔の血の執念だけで舌と喉を震わせている、そんな様子だ。


「うがああああああああ!」


 セキヤミが大声をあげて地面を転がる。


「セキヤミ殿に一体何を!」

「なに! ただ埋め込んだだけだ。ジンマ様の魂をな!」

「!」


 心臓の裏が凍り付くような感覚に襲われる。


「ああああああああああ!」


 そうして悶えるセキヤミの背中で、肉を抉り体の中に押し込まれたジンマの魂の水晶。それが崩れ、どろりと体へ溶け込んでいった。


「セキヤミ殿! 負けちゃだめでござる! そんなものに負けては!」

「しずくさん!! わたしを! わたしを殺してください!!!」


 セキヤミが叫ぶ。


「え、え……」

「お願いします! あなたの! あなたの手で!」


 しずくはどうしていいかわからず混乱した。


「はやく!!!」


 そう言われ視界をにじませながら、セキヤミに刀を突き立てようとした。

 しかし……、その瞬間あの日のキスを思い出し、一瞬躊躇してしまった。そして……。


「ああああああああああああ!」


 ブオン!

 セキヤミを中心に強い突風が吹き、しずくの体が吹き飛ばされた。

 

「……」


 静かになり顔を上げる。


「っ?!」


 そして息をのんだ。

 そこには巨大な生物がいた。

 龍の様な鱗、獣の様な牙と爪を持った人間、そういった印象だった。


「セキヤミ、殿……?」


 目の色と長く伸びるたてがみの色が、セキヤミと同一存在であると主張しているようだった。 

 そうしずくが声を漏らした途端、そいつは咆哮を上げた。

 

「え?」


 そしてパッとその場から消えてしまった。


「ふふふふふ、ははははははははははは! 成功する保証はなかったが、最後くらい賭けには勝ったようだな!」


 掠れた声で大神官が高笑いする。


「セキヤミ殿はどこに! どこにいったのでござるか!」

「さあ、知るものか」


 まだ笑いを残しながらそう言った。


「だが、ジンマ様の復活には、まだ人間の魂が足りなかった。つまり、まだ本能で魂を求めるだろう。そしてここから一番近い、最も魂の集まる場所、それはどこだと思う?」

「…………デモル京……」

「そうさ。きっとあの祭り以上の地獄が! 今日! 引き起こされるだろうな! 私はあの世からそれを楽しみに見ているとしよう! ……ぐふっ」


 そう言ってついに大神官は息絶えた。

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