第拾話:VS大神官・前編
「汎用的な魔術や魔法なら多少心得があります。今も汎用的な強化魔術もかけました。身体能力も少し強化されているはずです。サポートは任せてください」
セキヤミに背中から言われる。
「いいですか、しずく殿。あいつは軽い怪我なら時間の問題で回復します。短期決戦です!」
「うむ!」
二本の刀を握りしめ、しずくは地を蹴って駆けだした。衝撃波を避けつつ走って大神官に近づいていく。
そして、かなり近くまで近づいた時、また衝撃波が飛んでくる。
今度は川流で避けず、セキヤミの”保護”を信じて、あえて正面から受けた。
(1度目! 本当に痛みはないでござる!)
そしてそのまま右の刀一本を縦に回転させながら投げた。それで牽制しつつ、敵に近づいていく。師匠の得意だった技だ。
刀一本を弾いたところにしずくが、刀を両手で持ち大振りで振るう。
そしてまた受け流し、胸に手を当てられ……。
「そう何度も同じ手に引っかかるわけないでござろうが!」
青い光が一閃。
空中で川流を使って刀を軸に回転し、大神官の背中に回り込んだ。
そして———。
「がああああっ!?」
左肩から右下にかけ、大きく斬り傷をつけた。熱い血潮が噴き出し、大神官の巨体がぐらりと揺れる。
(届く! 当たりさえすれば、拙者の攻撃も!)
「セキヤミ殿!」
そう言いながら右手を上に伸ばした。
「はい!」
するとその手に、先ほど大神官に弾かれた刀が帰ってきた。セキヤミが先ほど投げた刀を、汎用の念動術で手の中に呼び戻してくれた。
そして———。
「はッ!」
焦り、反撃しようとする大神官の右手首を斬り落とした。
「くぅっ、そ! はああ!」
すると怒った大神官が口から衝撃波を放ってくる。
(口から?!)
流石にそんな事は不意打ちで、当たってしまう。
(2度目……。あと3度しか保護は残っていない……。今のは少々もったいなかったでござるな……。しかし……)
今ここで離れてしまえばまた近づくだけで一苦労だ。今はここから離れるわけにはいかない。
大神官の残った片方の手の指先から、かぎ爪が生えてくる。その手で攻撃してきた。
それを両方の刀で受け止める。
「いよいよ化け物じみてきたでござるな」
流石に力では負けそうになる。
その時大神官の顔付近で爆発が起こる。セキヤミの魔術だ。怯んだところで自分が少し引いて片方の鉤爪を斬り折った。
「なに?!」
「この二振りは師匠から頂いた特別製でござる。そんな簡単には折れんのでござるよ!」
動揺し後ろに一歩引いた大神官を追いかけ、二本の刀を平行に構え、袈裟斬り。血飛沫が舞うのを確認した。
もう一度口からの衝撃波が飛んでくる。
(3度目! あと2回……)
それをその場で受け、斬った部分を蹴り込み、更にダメージを与える。
「なぜだ……、貴様の様な小娘がなぜここまで巧い!」
大神官は振り下ろされたしずくの刀を避けながら訊く。
「拙者はこの世界を救ったお方の弟子! セキヤミ殿の助けあらばなおさら、技で負けるつもりは一片もないでござる!」
腹部に片方の刀を突き刺した。
「ぐっ」
体に刃物が貫通したというのに、発狂しない胆力。まだ戦闘を続けようとする様子。
やはり化け物だ。
「この小娘が!」
そういってしずくのあたまを鷲掴みにして石像の方へ投げた。
物凄い勢いで飛んでいくのだが、途中で風を感じ、そこで動きが緩んだ。セキヤミが魔術で風を起こし速度を減衰させてくれたようだ。
宙で回転し石像に着地した。




