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第拾話:力を合わせれば

「しずくさん、立てますか?」

「う、うむ」


 先ほどまで蓄積されていたダメージの大半が消えかかっていた。超強力な回復魔法だ。

 言われた通り立ち上がる。


「セキヤミよ……? いったい何をしている?」

「なにって、回復魔法をかけているのですが?」


 ケロッとセキヤミがそういった。


「そんな命令はしていない! 殺せといったのだ!」

「なぜ愛している人を殺さなくてはいけないのですか?」

「なっ!」


 大神官が絶句している。

 どうやらセキヤミを本気で信じ切っていたらしい。


(え? なに? どういうことでござる?!)


 と困惑するがしずくは、セキヤミからの回復魔法をうけながら、今はそれを見守っていることしかできなかった。


「貴様! スパイをしていたから裏切ってここへ来たといっていたじゃないか!」

「嘘に決まっているでしょう。……え、まさか本当に信じていたのですか?」


 はっきり言われまた絶句している。そこへセキヤミはさらに続けた。


「あなた方に私の生存がバレたから、いつか襲いに来るものと思っていました。でも、3日経っても来ないんですもん。なら死にたくはないし、自分から帰ればいいか、と思ったのですよ。まさか成功するとは思っていませんでしたが」


 大神官は混乱して固まっている。


「あなた、前から思っていましたが、自信過剰すぎて、そういう細かい所を見ていないんですよ。寿命も長いから、私がいなくなってからの約10年も5分くらいにしか感じていないんでしょう?」


「しずく殿、ごめんなさい。騙すようなことをしてしまって……。最悪の場合、ここから帰れなくなることは本気で覚悟していました。だから計画の一部ではありましたが、“遺書”としても、しずく殿にあれを残したつもりだったんです」


 大神官の顔から余裕が消え、初めて声に焦りが滲んだ。

 おそらくあの手紙のことを言っているのだろう、としずくは思った。


「え、いや、それはいいのでござるが……」

「ですが、手紙でも書いた通り、あなたを愛していることだけは本当です。これだけは信じてください」


 そういって手を取られた。


「……。こちらも愛しているでござるよ。生きていてよかった」


 何が何だかわからないが、今はまっすぐそう返そう。そう思いしずくも、もう片方の手を添え握り返した。


「あの洞窟で足止めされていた時から、どうやったらあいつを倒せるか、ずっと考えていたんです。父は半分は人間ではない存在ですし、4000年も生きていますからね。でも、一緒に洞窟を力を合わせて脱出したことをデモル京で振り返っている時に、私は思ったんです。」


 セキヤミが微笑みながら続ける。


「私としずく殿が力を合わせればあいつに勝てると」


 その言葉はとても力強かった。


「だから、私に力を貸してください」

「! うむ! もちろんでござるよ」


 しずくは力強くそう返した。


「!」


 衝撃波が飛んできたのをみて、セキヤミの前に躍り出てそれを洗浄と体で受けた。


「ちっ」


 防がれたのをみて大神官が舌打ちをした。


「いったぁ……。あれ?」


 ダメージは受けたがすぐに痛みが引いていく。


「私の四分の一に流れる悪魔の血ゆえ……、私は回復魔法が人よりも得意なんです」

「なるほど……」


 先ほどかなりのスピードで体が回復していったのもそれ故か、としずくは腑に落ちた。


「しかし、魔力は人並みなもので限界があります。もう先ほどと同じだけの回復はできないものと思ってください」

「承知した」

「あと、もう一つ」


 セキヤミの深緑の闘気力がしずくに流れていく。


「私の魂源:保護です。5度までであればあの衝撃波も防げるでしょう。ただし、これも人に付与するのは気力の量の関係で一日に一回が限度です」


 いや、十分では、としずくは思う。


「あとは後ろから魔術で援護します。前、お任せしてもいいですか?」

「もちろん任せて欲しい」


 大神官はまだ恐ろしかったが、それでも、背中がとても暖かかった。

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