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第拾話:魂界花『ペイントフェスティバル』

「く、逃がしたか」


 煙幕が晴れ、後ろを振り向きながら副大神官が呟いた。


「まあ、いい。裏切り者を始末するいい機会だ。私も本気を出そう」

「あっはっはっはっは」


 急にナミネが高笑いし始める。


「何がおかしい」

「え? いえ。面白い冗談でしたよ。久しぶりに本気で笑わせていただきました。あなたごときが私に勝つつもりでいるだなんて」

「笑っていられるのも今の内だ」


 ナミネがさらに声を大きくして笑う。


「本気で言っていらっしゃるの? 冗談としては120点を差し上げたいところですわ」


 副大神官は銃を取り出し撃ち出した。

 鉛の塊ではなく光線が2度放たれる。


「リトラルトから違法に輸入した武器ですわね」 

「っ!?」


 そのうち一つは外れ、後方の壁を溶かした。

 しかしもう一つの光弾はナミネの掌の中で掻き消える。


「あなたが闘気力を使用するところは見たことがないと思っていましたが、なるほど、そもそもご使用になれない、というところでしょうか」

「な、どうやって……」


 ナミネは手の中に壁を描き出し、受け止めていた。それだけの単純な事なのだが、気づけないほどに動揺している。


「だからといって、あのような武器に頼るのは、本当にここの連中は雅さの欠片も感じられませんわね」

「ちぃ! 舐めるな!」


 副大神官が鉄棍を取り出す。両端が怪しく光っていた。


「それも、リトラルトの武器ですか?」

「そうだ」


 ブゥンッ、と鉄棍を振るう。ナミネが軽く退き避ける。

 その端が勢い余って、壁にぶつかった。

 じゅわ、っと、壁が溶けた。


「なるほど」

「そう。これがぶつかったものは、高熱によって溶かされるのだ。人間などひとたまりもない!」

「…………確かに危険ではありますが」


 その後もナミネは、彼女を襲う鉄棍を、最小限の動きで避けていく。

 斜め上から振り下ろされたものを、ナミネが閉じた扇子で受け止める。


「当たらなければどうってことありませんわね」


 そのままナミネが近づいていき、副大神官の腹部に手を当てた。

 そこから旋風を起こし、副大神官を吹き飛ばした。


「うぐぅ……」


 副大神官はダメージを受けながらも起き上がる。


「なるほど。さすがですわね。普通の人間なら今の風に体を切り刻まれていたはずですが。あなたも並の人間ではないということですか。ならばいいでしょう」


 パチン。ナミネが指を鳴らす。


「私も少し本気で遊んで差し上げましょうか」


 するとナミネの背後にいくつもの剣や弓、銃や大砲などいくつもの武器が現れた。

 彼女の魂源『描画』。それによって描き出された武器たちだ。


「な……、んだと……」

「さて、荷造りは済ませておりますか? 地獄旅行の」

「く、くそがぁ!」


 ナミネの背後の武器群が一斉に火を吹き、光の雨が降り注ぐ寸前、副大神官は背を向けて走っていく。


「少しはしゃんとなさいな、なさけない」


 ナミネは攻撃の手を休めず追いかけた。

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