第拾話:姉が妹を守るのは当然でしょう?
次の階はまた何もない廊下になった。
「ナミネ殿」
「何です?」
「その……、なぜここまで着いてきてくださったのでござるか? ナミネ殿はジンマ教団との縁を誰より断ち切りたいと、そう思っているはずなのに……」
そして思ったことを率直に訊いた。
「この前、自分は拾い子だったとおっしゃっていましたよね」
「う、うむ……」
急に何の話だろうと思いながらそう返した。
「ところでしずくさん、DNA鑑定というのはご存じですか?」
その最中、急にそんな事を言った。
「でぃーえぬえー?」
「はい。遺伝子検査というものです。つまり、自身の遺伝子を調べて、他人のものと照合したりすることで、関係性を調べることのできる、これもまたリトラルトの技術です」
しずくはそんなものがあるのかと感心しつつ、さらに何の話だ、と困惑した。
「勝手なことをして申し訳ありません。あの、あなたのルーツの話をお聞きしたあと、あなたの髪の毛を拝借して、わたしとの関連を調べさせていただいたのです」
ナミネの声が少し震えて聞こえた。
「……え?」
「その結果によると……」
「なるほど、裏切り者までも攻めてきましたか」
ナミネの話を遮り急にそう声を掛けられ前を見た。法衣を着た男が立っていた。
「あなたは……、副大神官……」
ナミネが息をのんだ。見覚えがあるらしい。
「この先に行きたくば私を倒していきなさい」
一瞬、ナミネの指先が震えた。だがすぐに表情を消し、凛と顔を上げた。
「こんなところで足踏みしている場合ではないというのに……」
ここは一本道、そこを塞がれては……。
「しずくさん。あいつは私が引き受けましたわ。あなたは先をお急ぎなさい!」
「でも……!」
「姉が妹を守るのは当然でしょう?」
その言葉はいつかの時と似た……、しかし確実に違う力強さがあった。
「ほら、お行きなさい!」
「うむ!」
しずくが走り出す。
「させるわけないだろう!」
しずくがすれ違うとき、攻撃されそうになったのだが……。
「なんだ!?」
その2人の近くで、煙幕のような色のついた煙が爆散する。ナミネの魂源:描画だ。
それを知っていたしずくはひるむことなく先を走って急ぐ。
———絶対に間に合わなくては。
まだ生きているのなら、セキヤミ殿を救えるのは、拙者しかいないのだから、と。




