第捌話:地下の濡れ透け事件
二人は緋焔の龍源の泉から、地下水脈に流れ込んでいた。
(流れが速い! このままではまずい! 溺れる!)
セキヤミの身体を水の中で捕まえ、水面に顔を出す。
(地下水脈のようでござるな。流れが速い。どうにか安定したところを見つけ……、っ!)
急に開けた場所に出たと思うと、急に強い浮遊感を感じた。
地下の滝になっていて放り出されたのだ。
(! あそこなら!)
”川流”を使用し、セキヤミを連れ、安定した地面に着地した。
「だ、大丈夫でござるか!」
セキヤミの状態を確認する。
「ゲホッ、ゲホッ。ええ、なんとか……」
セキヤミはそう言いながら、光源魔術を使用し灯りを作り出した。
「ありがとうございます。おかげさまで無事でいられました」
「とんでもない。拙者は護衛の任をまっとうしただけで……。それどころかこんな地下に放り出されてしまって……、ん?」
近くの地下水脈の水面の上、そこに人影が見えた。はっきりと姿が見て取れない。
「幻影ですね……」
セキヤミもそれに気がついたようだ。
「悪いな女。我々ジンマ教団にとって、貴様は目障りだったのだ。あの人攫いの一件以来ずっとな。あの玉一つを作るのにどれだけのコストがかかると思っている」
その幻影が、しずくに話しかけてきた。
「知らんでござるよ。無駄遣いをする者に渡す方がよくないんじゃないでござるか? というか最初から作らなければ……」
「もういい。ここに閉じ込めたのだからな。この地下深くで永遠に暮らしていくがいい……。ん?」
幻影の頭がセキヤミの方を向いた気がした。
「貴様セキヤミか?」
と、わけのわからないことを言い始めた。
「確かにそうですが、あなたは誰です?」
「ちっ」
それだけ話し、幻影が消えてしまった。
「何だったのでござる? 知り合いでござるか?」
「いえ、……心当たりもありませんね」
(……気のせいでござろうか)
一瞬、セキヤミ殿の目が険しくなった気がした。しずくはそれを見逃さなかった。
しかし今は、とにかくここから地上に出る方法を探さなくては———と、しずくは思った。
「し、しずく殿……?」
「はい?」
なぜか顔を赤らめながらセキヤミはしずくに話しかけた。
「そ、その先ほどの羽織は、ど、どうしましたか?」
「あっ……」
しずくはここまで流れ落ちてくる間に、セキヤミの羽織をいつの間にか失くしてしまっていた。
「どこかで落としてしまったようでござる! も、申し訳ない!」
焦ってしずくは頭を下げる。
「い、いえ、その羽織なんてしずく殿が無事であればどうだっていいのですが、そ、その、おっ……、いや、えっと、その……、胸元が……」
「へ?」
そうしずくが自分の胸を見た。
「あ……」
水で濡れて胸元がうっすらと透けていた。さらに……。
「~~~~~~っ!」
(きょ、今日に限って、サラシ巻くの忘れていたでござる!)
と、焦って腕で胸元を隠した。
「み、見たでござるか……?」
「い、いえ、その! 薄暗かったですし! うっすらとしか」
「……うっすらとは見たのでござるね?」
「あっ……」
「……」
「……」
洞窟に水の流れる音だけが響き渡る。
「と、とにかく! 一旦ゆっくり休みましょう! このままだと風邪を引いてしまいますし!」
セキヤミが提案する。
「う、うむ……」
2人は休める場所を探した。




