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第陸話:大人の事情を子どもに押し付けてんじゃねぇよ!

「.................................。なによ! そこまで深入りしろなんて言ってないわよ!」


 そういってしずくの手を払った。


「ええ、わかっているでござる。他人様の家庭の事情に深入りすることも、そのことに口を出すのも失礼にあたると、そんなことはこのしずく、重々承知している。そのうえで、今からの言葉は紡がせてもらうでござるが……」


 一呼吸おいた。


「大人の! あんたの事情を! 子どもに押し付けてんじゃねぇよ!」


 しずくは自分でも驚くほど大きな声を出していた。


「な、何よ! あんたなんか結婚もしてない癖に! 偉そうにわかったような口きかないでちょうだい!」


 一瞬気圧されそうになったライの母親だが、負けじとしずくに張り合った。


「ええ、たしかに。拙者は夫も子もござらん身。だがそなたの子への接し方が、どこか間違っている、と。それくらいはわかるでござるよ」

「はぁっ?!」

「大人が子に教えるべきは、正しい道の歩き方ではないでござろう!」


 しずくは自分の母親のことや師匠、エミの母のことを思い出していた。


「間違った道に行ってしまったとき、何が失敗だったのかを共に考え、挽回すべき方法を説き、時には本人よりもそのために奔走する背を見せる。人としてあるべき姿を見せる! それが大人としての努めではござらんか!?」


 母や師匠が自分を叱ってくれた時の事を思い出しながら続ける。


「そなたのやるようにあっちへ行け、こっちへいけと指示するだけでは、例えライ殿が官僚になれたとしても、ただの無気力な操り人形になるだけでござるよ」


 もう一度息を吸う。


「今! この子は! 必死にそうならないように! 抗っているんでござろうが!!」


 しずくでもびっくりするほどの怒号が森を突き抜けていく。


「…………それが、この幸せを願う親のやることなのでござるか? そなたの夢が叶わなかったとて、それはそなたの勝手な事情でござろうが。それを勝手に他人に期待して強要しては、どちらの不幸も招くだけではござらんか?」


 草が風で揺れ音を立てる。


「出過ぎた真似を致した。申し訳ない。報酬はいらぬゆえ、どうぞお子さんとしっかり話し合って欲しい」


 そう最後に言って、しずくは一歩引いた。


「……」

「……」


 また森は静けさに包まれる。


(やってしまったぁあああ! 我慢してたのに他人様の事情に勝手に首を突っ込んでしまったでござる!! ナミネ殿になんて言われるか……!)


 としずくは心の中で叫び自己嫌悪していた。

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