第陸話:森の中の秘密基地
(どうしよ……)
この依頼、思ったよりやっかいかもしれないと思った。
村の子どもたちを捕まえては、ライについて尋ねてみるのだが———。
「は? あいつ知らねぇよ。家から全然出てこないし」
だの、
「遊んだことなんて一度もないよ」
だのと全く手掛かりを得られない。
大人に聞いても、
「可哀想な子なんだよ。お父さんは若くして亡くなっちゃったし、お母さんに理想を押し付けられてずっと外に出してくれないでいるしね」
「もう少し、子どもらしく遊ばせてあげて欲しいものだよ」
「というか最近はさらにイライラしててね?」
「そうそう、すぐに怒り出すし……、何かにとりつかれているんじゃないかしらね?」
と、事情はなんとなく見えてくるのだが、肝心の『どこへ行っているか』については誰も知らない。
気づけば夕方になり、依頼主の家に行くと……。
「全く! 何してたのよ! もう帰ってきちゃったじゃない!」
とまた依頼主に怒られた。
そして宿を取って落ち込んで寝た。
そして朝になってから、どうしたらいいのか、とまた軽く落ち込みながら支度をすませているところだった。
戦闘ならどうにでもできるのに、こういうのとなると苦手だ。と自身の苦手分野を自覚する。
宿を出ると子ども数名が村の道を歩いていくのが見えた。
「ん? あれ?」
その中に子どもたちに囲まれてて気づかなかったけどライがいるのが見えた。
昨日話を聞き、「しらない」、と言っていた子どもたちと共に……。
「ラッキーという奴でござるな」
しずくはその後をついていくことにした。
村から森に入り、1分ほど後をつけていった。一本の大きな木の周りに広場ができていた。
その中に不格好な……、しかし頑張って作ったのであろう小屋があった。
(秘密基地という奴でござるかな? 拙者も村の年上の方々と作ったっけ)
と懐かしくなりながら近づく。
「あ! み、みんな! 大人の人が来たよ!」
と、見張りをしていた女の子に見つかってしまい、そこにいた子どもたちに報告されてしまった。
(ぶ、不用心だったでござるかな……)
と困惑していると、小屋から出てきた子どもたちに囲われてしまった。みんな石とか木の枝とかを持っている。
「あなた、昨日、ライについて調べていた人ですよね」
「何しに来たんだよ!」
「ここは俺たちの秘密基地だぞ!」
「そ、そうよ! 早く帰ってよ!」
「早く帰って!」
と、帰れコールが始まってしまった。
「え、えーっと」
しずくがどうしようと困惑していると小屋からまた一人出てきた。ライだ。
「み、みんなちょっとまって!」
そうライが皆を止める。
少し静かになって蝉の声が聞こえてきた。
「ママに雇われていた冒険者の人ですよね。家庭教師じゃなくてきっと、調べるように言われた人だ。僕が家を抜け出しているから何をしているのか突き止めろって」
「左様にござる」
聡い子だな、としずくは思った。
「でも、ごめんなさい。ママには言わないでください! ばれたらきっとここには来させてもらえなくなっちゃう」
「えーっと」
どうしようとしずくは悩んだ。
何か親子間の事情がありそうだ。でもあの依頼主はそれを話してくれる人には見えない。
とはいえ、このまま何もせずに帰ってしまったり、失敗としてしまったら、間違いなく悪評を流されてしまうタイプの人だ。
やってしまった。女性だからと油断せず、ナミネに相談しておくべきだった、としずくは後悔する。
「よくわかってるじゃない!」
しずくの後方から声を掛けられた。
驚いて後ろを振り向く。そこにはあの依頼主がいた。




