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第伍話:姉と妹

 湯気から静かに立ちのぼる茶の匂いだけが、無言の二人の間を満たしていた。


「まさかこの歳になって初めて自分に妹がいたことを知るだなんて、不思議なこともあるものですわね」


 茶を飲み、冷静になったナミネが言った。


「あの教団の文化を考えるに異父姉妹と言ったところでしょうが、それでも元気で生きていて欲しいと願うばかりですわ」


 そう言いながら団子を口に運ぶ仕草は穏やかだったが、その指先はわずかに震えているように見えた。 しかし、それすらも絵になる方だなとしずくは思った。


「そういえば、しずくさんの目と髪、私とそっくりですわよね」


 顔つきは、正直あまり似ていない。特に目元。ナミネはシュッとしたつり目だが、しずくはタレ目気味で丸い。

 しかし似ているところは確かにあるようで、実際に一緒にいると姉妹に間違われることもある。


「もしかしたらしずくさんが私の妹だったりして」


 その言葉にほんの一瞬、胸が温かくなるのを感じた。

 この人は自分のことを、実の妹のようにみてくれていたのだろう。


「そうであったならとても嬉しいでござるが、遠く離れた村の出身でござるし、母も生きているでござるから、違うと思うでござるよ」

「そうでしたわね。失礼なことを言ってしまって申し訳ありませんわ」


 そして、ナミネはもう一度手紙と日記に目を戻した。


「なるほど木槌と湖……」

「何か知らないでござるか?」

「残念ですが、何も存じ上げませんわね。私が物心つく頃には、既にその場所を捨ててしまっているか、もしくはジンマ教団の中でも数少ない者にしか知らされていなかった機密事項なのか。何にせよ私の中には、それに類する記憶がございませんわ」

「そうでござるか……」


 また一から調べ直しか……。一つ謎を解決したと思ったらまた一つ謎が出てくるな、としずくは落胆した。


(師匠の背中は遠いでござるなぁ……)


 などと考えていた。


「申し訳ありませんわ。私も私にできる限りの調査はしてみますわね」

「かたじけない。お願いするでござる」


 その日はナミネに奢ってもらった。


「これは姉から妹へのささやかな感謝ですわ」


 と冗談を言っていた。


「妹……」


 その言葉の柔らかさに、胸の奥がくすぐったくなった。

 茹だるような暑い夏を感じながら、宿に帰った。

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