第伍話:ジンマ教団の集落へ
「しず、く? お、お前、どうした……?」
しずくの目と鼻の先で、彼女の師匠「青水 白」が、驚いた顔でそんな間の抜けた声を出す。
真っ白な、何もない空間。そこにポツンと置かれたベッドの上で、しずくは白を押し倒していた。
「ししょー」
「おい何を! んぐ」
そう呼んで彼女は白の唇に自らの唇を重ねる。さらに彼の舌に自らの舌を絡ませ、妖艶に動かしていく。
「はぁ、はぁ……」
少しして唇を離す。一瞬糸を引いた唾液が光に反射した。
「ししょー? 拙者、前のような生娘ではもうござらん。例えばこんなことも……」
そう言ってしずくは手を白の下腹部へと伸ばし———
その瞬間、目が覚めた。
そこはいつものしずくの部屋だった。薄暗い部屋には、淡い早朝の光が差し込んでいる。
「いやいやいやいや! 拙者は何を考えているのでござるか?!」
そう一人でツッコんで、布団にくるまった。
「どれもこれもモモ殿のせいでござる!」
そう悪態をつきながらも、しずくの心臓はバクバクと鳴り続けていた。
———しずくがセキヤミに真っ直ぐと向き合えないもう一つの理由。
それがしずくの初恋。もう叶うことはない彼女の師匠への恋心。
それを未だに忘れられずにいる。
そんなものを抱えたまま他の男性の好意に応えられるほどしずくは器用ではなかった。
その日、しずくはとある理由でセキヤミに呼び出されていた。
静かな茶屋の個室。開け放たれた障子から、夏の光が差し込んでいる。
そこでセキヤミに会ったとき、つい夢の事を思い出し訊いてしまった。
「男性は❌❌❌❌❌されると喜ぶと伺ったのでござるが、セキヤミ殿はお嫌いでござるか?」
「ゴホッ、ゴホッ!」
というしずくの言葉を聞き、セキヤミはお茶を吹き出しそうになりむせていた。
先日の”猥談事件”のせいで変に知識を大量に叩き込まれてしまったしずく。そのせいで、言っていいこととまずいことの境界が少し混線したらしい。「エミさんの前では絶対にそのような発言はしないでくださいましね?」とナミネにも怒られてしまった。
「しずく殿、人前であまりそういった言葉を使うのは淑女としてはいかがなものかと……」
そして今もセキヤミにそう諭されてしまった。
「それで、ですね。こちらなんですけれども」
無理矢理話をレールに戻された。
「こちら地図を見てください」
そういって広げられた地図には一点に印がつけられていた。
「デモル京から北西のこの場所につい数年前までジンマ教団の集落があったそうなんです。何かあるかもわかりませんが、ぜひともこちらに確認に行ってみてはどうかと」
セキヤミに言われその場所に行くことになった。




