第肆話:モモのスライム風呂
デモル京南の洞窟。
液状妖怪、異国の言葉でいうと"スライム"と呼ばれる魔獣が生息している洞窟だ。そこへ行ったきり、モモがまた数日帰ってこないのだという。
スライムは少々厄介な習性を持っている。繁殖期になると、人間だろうが魔獣だろうがオスメスなども構わず恒温動物を捕まえて来ては、体内にタネを仕込む。そして一時間でタネは熟成し、新たなスライムが生まれる。
つまり繁殖が自分たちだけではできず、他の生物の手を借りないといけないのだ。殺されることはめったにないが、精神的苦痛は大きい。
故にその時期には討伐依頼も多く出されるのだ。
「この魔獣、拙者は不得手なんでござるよな」
スライムには物理攻撃がほとんど効かない。気力を剣や拳に纏わせれば普通に倒せるのだが、しずくの気力は消費が激しい。
さらに繁殖期のスライムは、とにかく粘着質で、あらゆるものにまとわりついてくる。捕まると動けなくなるし、衣服などは溶かされるため厄介だ。
しずくにとってスライムは、相性が悪く、できるだけ戦闘は回避したい相手なのだ。
数時間かけてその奥地に到着した。
そして……。
「あの……、モモ殿? モモ殿!」
モモが生まれたままの姿で洞窟のど真ん中で大の字になって、まるで温泉に浸かるかのようにスライムに囲まれ、仰向けで寝ていた。
(何故裸なんでござろうか? いや、わかるでござるけども! でも、わかりたくないでござるよ!?)
そして案の定———。
「はぁ? なんで人に起こされるの……。って、またあんたぁ?! なーんでまた邪魔すんのさ!!」
と前回以上の勢いで文句を言われるハメになってしまったのだった。
「いや、そのお母上に依頼されたものでござるから……」
「じゃあ断ればいいでしょ! なんでまた受けるの!?」
正直、ここだけ切り取ると、モモの言ってることは正論だ。
「いや本当になんで受けたんでござろうか……。気の迷いって怖いでござるな。というか亜人猿じゃ物足りなかったのでござるか?」
「あんたのせいで! 私まで警戒されるようになっちゃったんでしょうが!!」
なぜそこまで怒られなくてはいけないのか、とやはり困惑するしずくだった。
「それで次に選ぶのがなんでスライムなんでござるか?」
「スライム風呂は肌がもちもちになるんだよ? それにね、なんか元気になる気がするし。たまに吸いつきが強くて、それがすっごく……。とにかく美容に良いんだって。しらない?」
知るか! と突っ込みたいのを抑えてモモに服を着せた。
とにかく依頼は達成し、デモル京に帰ることになった。




