第参話:新たな紫の玉
「お父さん!」
「ナツキ!」
部屋に入った時、サエモンが驚きながらナツキを抱きしめた。
「な?! 貴様! どうやって」
地主がしずくとナツキを見て叫んだ。
「この鍵なら簡単に見つかったでござるよ。日記も」
しずくは二人を背に地主の下へ歩いていった。
「この盗人があああ!」
地主は急に激昂し、しかし冷や汗をかき後ずさりしながら、しずくにそう叫んだ。
「どの口が言っているのでござるか? この日記を公にすれば、職を失うどころではすまんと思うのでござるが?」
「なんだと!? お前たち! こいつをひっ捕らえろ!」
そう言うと地主の左右にいた兵士がしずくに槍を向けてくる。
片方が槍で突いてきたところを躱して、その柄をつかみ、石突で鳩尾を殴打した。そしてもう片方が後から薙ぎ払ってきたのを受け止め、二人をぶつけて同時にノックアウトした。
「小娘相手に一体何をしているのだ! ひっ!」
しずくが刀を抜き、地主の首元に先を向けた。地主の顔色が変わる。本能的な恐怖からくる表情だった。
刀身の冷たい光が喉元に触れた瞬間、地主の膝がかすかに揺れた。
声は震えて、もはや威厳の影もなかった。
「貴様を今ここで斬ることがどれだけ容易いか、よくわかったであろう?」
冷たい目で睨んだ。
「望むならいつでもそうしてやるでござるが、その前に。この日記に書いてあった「あいつら」とは誰のことか教えてもらうでござるよ」
そこでは何者かがこの男に、紫の玉を渡す代わりに、子どもをよこせと要求していた。
しずくの推理と勘が正しければ、しずくの追っている「子どもの失踪事件」の犯人と、人攫いの事件から気になっていた「紫の玉」の出どころが同じ可能性がある。
「貴様のような奴の言いなりになってたまるか!」
「なっ!?」
そう言うとあの時と同じように地主は、目の前で玉を取り出し割って見せた。またも紫の煙が出てくる。紫の煙は、まるで生き物のように脈動しながら広がり、見ているだけで皮膚がざわつくような嫌悪感を伴っていた。
———前回よりも明らかにヤバい———
紫の煙が触れようと迫った瞬間、しずくは即座に飛び退いた。




