第参話:違和感の答え
その晩、しずくは宿に行くふりをし、サエモンの家を張り込んでいた。
そして深夜、周りの家ももう寝静まった頃、家から出てきた。後を気づかれないように追っていく。
一里ほど歩いた時、とある建物の中に入っていった。
(あれは……)
この村にきた時一際目を引いた、あのお屋敷だ。
(こんな夜中に、あんなところに、なんの用が……?)
と不思議に思いつつ、見張りに見つからないよう柵を飛び越えて敷地に入っていく。
(こういうの初めてでござったな。確か……)
2階以上の窓には鍵がかかっていないことが時々ある。そう師匠から教わっていた。それが無理なら通気口などから入るという手もあると聞いていた。それは、できればやめておきたいところだ。
(やった。おじゃまするでござるよ)
一つ鍵の開いている窓を見つけ、そこから中に入り込む。
(さてとサエモン殿はどこに……)
あまりに大きなお屋敷だったゆえ、探すのに苦労するかと思ったのだが———。正面入り口からすぐの大きい扉の向こうから、声が聞こえてきた。
扉越しに聞き耳を立てる。
「ふん、1000フル、確かに受け取ったぞ」
自分の1000フルが何者かのところに流れていったらしい。
「じ、地主さま……。もう、ちぃとでよかですけん、取り立ての量ば減らしてもろうことは、できんじゃろか……? 税とは別に、十日ごとに1000フルっちゅうのは……もう、わしの稼ぎじゃ立ちゆかんとです……。ほ、ほんな上に、今回はちぃと……詐欺まがいの真似までしてしもうて……」
サエモンの声だ。震えているように聞こえる。
「ほう? では人質に取っている娘がどうなってもいいということだな?」
「そ、そいは……」
「この刺し傷をつけたのはあの娘だ。本来ならば警察隊に捕まっていたところを、寛大なわしが税を上乗せするだけで許してやると言っているのだ。わかったらまた10日後1000フルを持ってこい」
「し、しごたぁ言われても……」
(なるほど。どうやら面倒臭い事情があるようでござるな……。まずはサエモン殿の娘さんを探してみるとするでござるか)
そう思ってしずくはその場を離れた。




