第参話:1000フル
村に帰った頃には夕方になってしまっていた。
「おお、しずくさま! ご無事やったかいな!」
サエモンの家に行くとそう出迎えてくれた。
「で、どげんでござんした?」
「とりあえずのところ、供物を捧げることには成功したでござるよ」
「ほいで、その獣んほうは、どげなったで?」
「逃げられてしまって殺すことはできなかったのでござるが、しばらくは神社には近づかないと思うでござるよ」
「おお、そいはようございました! ささ、晩めしが出来ちょりますけん、上がらっしゃい」
そう言われサエモンの家で夕飯をいただいていた。
囲炉裏の火が二人を照らし、壁から天井にかけ大きな影を作っていた。
「おやまあ、しずくさま……。なんぞ、呪いを貰うて来とらすごたぁですねぇ」
「……呪い?」
「あすこらの獣ぁ、たまに呪いじみた術ば使いますけんね」
「ふむ。いつの間に……」
自分で気づかないものであれば洗浄でも洗い流せない。
しかしそれに、この人はどうやって気づいたのだろうか。
「ちょうど良か頃合でしてな。明日ぁ、旅の霊術師さまが、この村ぁ寄らるっとですよ。そん時除霊さして貰えばええ」
「ちょっと待つでござる、除霊? 呪いなのであれば解呪ではないでござるか?」
「そ、そのお方が、“どっちも似たごたる”て言いよらしたけん……。わしが頼んで参りますけん……、すんませんが……、1000フル先にちぃと預からしてもろてよかですか」
フルは世界共通通貨だ。1000フルは、だいたい12500円。
「いや、それならば拙者が自分で頼みにいけば良いのではないでござるか?」
「あの霊術師さまは、信用しとる村の者ん言葉しか聞き入れてくださらんとですよ」
「……」
何か裏があるな、と流石のしずくでも直感する。しかし様子をみてみようかと思った。
「なるほど! ではこちら1000フルでござる」
「ほんなら、明日の朝一番で、行って参りましょう」
その日は村の宿に泊まることになった。




