第参話:人が飯食ってる途中でしょーがッッ!!
「うちの塩むすび、けっこう大きいんだけども。本当に嬢ちゃん一人で食べるんかい?」
「うん。問題ないでござるよ。これ以上食べてしまうと体が重くなってしまうでござるから」
「いやそうじゃなくって」
「?」
村に着いたのがちょうど朝だったこともあり、塩むすびを買って山に向かった。
神社のある山まではそこまで遠くなかった。ただ標高が高かったため山道が険しかった。
蝉の声と強い日差しを背に感じながら登っていく。
「ひゃー綺麗なとこでござるなぁ……」
神社のある頂上からの景色は壮観だった。
サエモンから預かっていた供え物と、買った塩むすびひとつも供えた。
そして崖際の岩に腰を下ろし、足を投げ出しながら、村で買った塩むすび6つを広げた。
「む! なんでござるかこれ! 塩が効きすぎでござる! これではご飯の風味が損なわれるじゃないでござるか! こんなの、ご飯への侮辱でござる!!」
しずくは一人で大きい声を出し文句を言った。
「あの村に帰ったらお米に謝らせなくてはいけないでござるな」
そう言いながら塩むすびそのものには罪はない、と次々と頬張っていった。
しかし———。
「む?」
どこから出てきたのか、小屋くらい大きい狼の獣がしずくに襲いかかってきた。
ギリギリのところで跳びよけて、崖から落とされるのを回避する。
しずくが降り立った方を獣が睨み、唸り声をあげる。
「人が———」
そして咆哮をあげ、しずくに襲いかかった。
「人が飯食ってる途中でしょーがッッ!!」
怒りのままにその下顎を蹴りあげ、一発ノックアウトしてしまった。
どうやら調べたところ、その狼は、村人が供えていた供物を狙うために神社に住み着いてしまっていたようだ。今回もしずくの持ってきた供物に反応し襲いかかってしまったらしい。
目を覚まししずくを見た時、脇目も振らず逃げていってしまった。しばらくはあの神社には近づかないだろう。




